春季シーズン最高の日本選手が誕生

 2016年6月5日、神奈川県横浜市にあるDMM VR THEATER YOKOHAMAにて、世界的に人気の高いオンライン対戦カードゲーム『ハースストーン(HearthStone)』公式大会“ハースストーン日本春季選手権”の決勝トーナメントが開催された。本大会は前日の 6月4日にオフラインにて予選を実施。見事勝ち抜いた4名の選手が、6月18~19日に予定されている“アジア太平洋春季選手権”への出場権を懸けて名勝負の数々をくり広げた。

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▲当日は生憎に雨にもかかわらず、来場者は400人超に。
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▲会場では、 シルヴァナス・ウィンドランナーちゃんがお出迎え。
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▲大会開催時間前には、オブラインイベント“炉辺の集い”が開催。初対面のプレイヤーとも気軽に交流できる“コイン対戦会”のほかにも、コメントを書き込めるプレートが配られたり……。ユーザーが思い思いに楽しんでいた。
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▲コインの保有数が上位だったプレイヤーには、ブリザード特製グッズが配られる。
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▲会場となったDMM VR THEATERは、世界初のホログラフィック劇場。写真では分かりにくいが、3DCGで制作された映像に物理的な奥行きが加えられ、普段とはまったく違った観戦が楽しめた。

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 “炉辺の集い”で会場が温まってきたところで、メインイベントとなる“日本春季選手権”へ。本大会では、5ヒーロー1禁止のコンクエスト(7戦4本先取)で、1対1で試合を行い、敗北した者はトーナメントから除外される“シングルイリミネーション”方式が採用される。相手選手が選ぶ5ヒーローから1キャラクターをBAN(使用禁止)にするため、対戦相手のデッキと自分のデッキの相性から慎重にBANキャラクターを選ばなければならない。
 また先月配信された拡張版第3弾“旧神のささやき”の新カード追加に伴い、新しい対戦ルール“スタンダード”を採用した対戦となる。いままでの大会では見られなかった新カードを使用した対戦となるので、上位プレイヤーのデッキ構成や選択ヒーローにも関心が高まった。

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▲実況解説を務めたkuroebi、せんとす、茶々茶。

準決勝1回戦 ARST選手 VS Jako1910選手

 第1試合、ハンターを選択したARST選手に対して、メイジを選択したJako1910(以下、Jako)選手。獣カードを主軸にカードのアップグレードで押しきるミッドレンジハンターは中盤以降に強いキャラクターだが、同じく凍結で敵の動きを止め、呪文カードで勝負を決めてしまうフリーズメイジも、中盤以降手札が揃うにつれ力を発揮する。なかなかよいカードを引けないARST選手だったが序盤から果敢な攻めを見せJako選手を追い詰める。しかしここでJako選手の秘策“アイスブロック”が発動。そこから、パイロブラストで一気に勝利を決めJako選手が先制を決めた。

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 続く第2試合、同じくハンターを使うARST選手に対してJako選手はシャーマン。ハンターのカード“猟犬を放て”と“荒野の呼び声”で押し切られるのは怖いところだが、“炎の舌のトーテム”と挑発カードで有利に立ち回るJako選手。見事な盤面の支配を見せ、第2試合もJako選手が勝利を収めた。
 第3試合でもハンターを使うARST選手に対し、Jako選手はウォリアーを選択。じりじりと7ターンまで試合は続くがARST選手はなかなかカードに恵まれずベストアクションを逃す。対してJako選手は“マルコロク”の雄叫び効果でヒーローパワー“ドゥームハンマー”を引き当てるという驚きの引きの良さを見せつけ、会場からは歓声が上がった。しかしJako選手あやつるシャーマンの体力をじりじりと削るARST選手は、最後に“荒野の呼び声”を引き当て、3試合目にして見事勝利を掴んだ。
 4試合目。ハンターを3連続で使用したARST選手だったが、ここではローグを選択。Jako選手はウォーリーアを選択した。序盤、Jako選手はミニオンを複数配置。さらにコストが高いカードを出すJako選手に対し、なかなか盤面支配が出来ないARST選手は、敗北宣言を実行。Jako選手が再び勝利を収めた。

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 第5試合はJako選手のドルイドに対して、ARST選手は引き続きローグで挑むことに。ドルイドは最近再注目されてきたカードとのことで、Jako選手は大会直前に使用することを決定そうだ。選択"能力を持つカードを複数デッキに入れており、ARST選手にとってはかなりの脅威に。コンボで強化された複数のミニオンをなかなか除去できなかったARST選手は、勝ち筋を失い敗北宣言で敗退へ。Jako選手が見事決勝へ駒を進めた。
 Jako選手の気持ちの強さがカードの引きの良さを押したような試合が続き、第1試合ながらも会場は大いに盛り上がった試合だった。

準決勝第2試合 Tredsred選手 VS Zarathustra選手

 第1試合、シャーマンを選択したTredsred選手に対して、Zarathustra選手はウォーリア。Tredsred選手は低コストミニオンを盤面に複数並べ、攻めを姿勢を見せる“アグロシャーマン”だったが、対するウォーリアもパイレーツ系カードで序盤の盤面の支配争いに対抗。粘り強く対抗するZarathustra選手を相手に、Tredsred選手はミニオン除去で後半手札を失い、失速。第1試合はZarathustra選手が勝利を勝ち取った。

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 第2試合ではTredsred選手はハンターを選択。対するZarathustra選手はメイジを選択した。Tredsred選手はカードを出すようなそぶりを見せかけて揺さぶりをかける余裕を見せる場面も。中盤こそヒーローの体力を徐々に減らしていくものの、フリーズメイジのコンボでリーサル。第2試合もZarathustra選手が勝利を勝ち取り2連勝となった。
 第3試合、Tredsred選手はハンターを選択し、Zarathustra選手はウォリアー。6ターン目でハンターのレア・ミニオンカード“サバンナ・ハイメイン”を引き当てたTredsred選手。“フフラン女王”の雄叫び(味方ミニオン1体の断末魔を発動させる)で“サバンナ・ハイメイン”の断末魔を発動させ一気に有利な状況へ持ち込こみ、3戦目にしてTredsred選手は初勝利を掴んだ。
 続く第4試合では、Tredsred選手がウォリア―に対し、Zarathustra選手はローグを選択。序盤、低コストミニオンと武器アップグレードカードを引き、3戦目の勝利からよい流れをつかんだ様に見せるTredsred選手。武器アップグレードカードを使用して、果敢にフェイスアタックでプレッシャーを与えていき、Tredsred選手の勝利となった。

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  第5試合。シャーマンを選ぶTredsred選手に対し、Zarathustra選手は引き続きローグを選択。Tredsred選手はマリガンチェック(カードの引き直し)でコスト2とコスト3のカードを引き当てるものの、全カードのドローのやり直しを選択! ここでなんと序盤でかなり有利な戦況へと持ち込めるカード、“トーテム・ゴーレム”、“ドゥームハンマー”、“トンネル・トログ”を見事引き当て、会場を大いに沸かせた。全国大会と言う大舞台で、非常にリスクの高い選択をする精神力の強さは、「さすが」の一言に尽きる。さらにTredsred選手は、4ターン目以降Zarathustra選手が出す強力な高火力カードを、“ドゥームハンマー”を使い体力を計16消費して除去するというハイリスクなプレイングを見せる場面も。結果、このリーサル回避のためのミニオン除去で流れを掴み、見事勝利へ。30あったヒーローの体力を14まで減らしてでも自分の有利な状況へ持っていき、勝ちへのプランをしっかりと作っていくという、淀みのないプレイングを見せてくれた。
 準決第2回戦の最終戦となる第6試合。ここでなんと両者ローグを選ぶ、通称ミラー戦が展開。なかなか大舞台で見ることのできないマッチアップに、観客からは「おー」と歓声があがった。なかなか欲しいカードに恵まれなかったZarathustra選手は勝ち筋を失い降参で終了。Tredsred選手が決勝戦進出を勝ち取った。

決勝戦 Tredsred選手 VS Jako1910選手

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▲決勝進出を決めた両選手。「負けると言うことを知らないので、今回も勝ちます」とTredsred選手(写真左)の自信満々のコメントに、「あと5勝して、Blizzconに行きます!」と、煽りで返すJako選手(写真右)。

 決勝戦第1試合、Tredsred選手はローグを選択し、Jako選手はウォーロックを選択。序盤はJako選手がテンポよく進み、“泡を吹く狂戦士”、“コルクロンの精鋭”でプレッシャーをかける。対するTredsred選手は“エドウィン・ヴァンクリーフ”のコンボを利用して対抗するが、リーサルが確定したため敗北宣言。Jako選手が勝利した。
 第2試合、ドルイドを選択したTredsred選手に対して、Jako選手はシャーマンを選択。ミニオン除去に専念するJako選手は後半手札がかなり少ない状況。10ターン目には強力な高コストカードを手札に持つTredsred選手に対抗できず、Jako選手が敗北を宣言する結果にとなった。

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 第3試合も引き続きシャーマンを使うJako選手。Tredsred選手はウォーリアを選択。早くも6ターン目でJako選手のリーサルが見えてきたが、“地底よりのもの”の挑発でリーサルを回避。“血の渇き”でミニオンの火力を上げ、見事Jako選手はTredsred選手を撃破した。 第4試合では、Tredsres選手はウォーリアを選び、対するJako選手はドルイドに。“旧神のささやかな灯”で7体のミニオンを出し、強力な盤面形成を展開。さらにそ“ヴァイオレット・アイの講師”と“ヴァイオレットの見習い”を出し、一気に優位となる。一方のTredsred選手は守りを固められるカードを手札に持っておらず、あえなく敗北となった。
 3-1でJako選手が優勝へ王手。最終戦では、Jako選手はメイジは選択し、対するTredsred選手はローグを選択。Dredsred選手は以前、「フリーズメイジには万全の対策を練っている」とアピールしており、ラストマッチにふさわしい熱い闘いが展開された。中盤はTredsred選手が有利な流れだったが、秘策“アイスブロック”で踏ん張るJako選手。最後はアイスランスがリーサルとなり、優勝を果たした。

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 今回の試合、ユーザーのアンケートでは60%の人がDredsred選手の優勝を予想し、本大会の“ラスボス”とも呼ばれていたが、見事勝利をもぎ取ったJako選手。Jako選手は現在18歳で、日本語版サービスから『ハースストーン』をプレイした若手プレイヤーがここまで急成長を見せるとは驚きだった。また大会ではカードの引きの良さも魅せつけ、強運に恵まれていたと感じた。Jako選手の“アジア太平洋春季選手権”での活躍と今後の成長にもぜひ期待したい。