高い難度が燃える硬派アクション!
2016年5月19日にソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(SIEJA)よりリリースされる、プレイステーション4用オンライン配信専用タイトル『Shadow of the Beast(シャドー・オブ・ザ・ビースト)』。
タイトル名に懐かしさを感じる人もいると思うが、本作は1989年にリリースされた『Shadow of the Beast』のリメイク作品。当時先進的な作品を生み出してきたPsygnosisが開発し、海外で着目されていたAmigaというパソコンやメガドライブなどでリリースされた。ちなみに日本では『シャドー・オブ・ザ・ビースト 魔性の掟』というタイトルでリリースされており、こちらを遊んだ人もけっこう多いのではないだろうか。筆者ははるか昔、富士通が発売したFM TOWNSというパソコンで本作を遊んだ記憶がおぼろげながらにある……が、正直細部どころかストーリーの大筋すらも覚えていない。なんか強烈に難しくて、すぐクリアーを諦めちゃったような。当時は攻略サイトもなかったしなあ。
時は流れて27年、ついに復活を果たしたのが、このリメイク版『Shadow of the Beast』だ。いったいどのような作品に仕上がっているのか、インプレッションをお届けしよう。
本作は、3D描写の2Dアクション風ゲーム。プレイヤーは、ビーストに変えられてしまった獣戦士アーブロンとなり、復讐のために異世界カラムーンで暴れまわる。真横からの視点でゲームが進むため、原作のプレイ感覚を引き継いでいる。ステージ制になっており、クリアーすると新しいステージが出現する。
とりあえず触ってみないことには、と最初のステージをプレイ。画面中央にはモンスターのようなキャラクターがおり、きっとコレが主人公なのだろう。問題は、その後ろにいる魔術師みたいなヤツだ。あなた誰ですか?
この魔術師的なヤツは、どうやら主人公に鎖をつけて操っているらしく、先に進ませようとする。なんか嫌な気分だなあ、とか思いつつ先へ進むと、人間の兵士が襲ってきた!
ボタン連打の攻撃で苦もなく敵を蹴散らし、先を急いでみると、今度は空から雨のように矢が降り注ぐ。当たると当然ダメージを受けるため、木陰に隠れてやりすごす。本作はこのように、バトル以外にステージレイアウトを活用した探索・謎解き要素も用意されている。ちなみに後ろの魔術師は、バリアーで自分だけ守っているらしい。ずるいヤツだ。
さらに先へ進むと、神殿のような場所にたどり着いた。ここでは敵の攻撃がさらに激しくなった……のではなく、無抵抗で祈っている人が行く手をふさぐだけ。彼らを倒しつつ進み、ついに最後のひとりを倒したとき、彼は血濡れた手で主人公に触れてきたのだ。
その瞬間、過去と思わしき映像がフラッシュバックし、絶叫する主人公。自分を操っていた鎖をふりほどき、後ろにいた魔術師に反旗を翻す。きっと、自分が操られていたことを理解したのだろう。
魔術師を追いかけるため、いま来た道を引き返すと、人間の兵士だけではなく、異形のモンスターまでもが主人公に襲いかかってきた! かくして、アーブロンの長い復讐劇が始まったというワケである。
本作はこのように、導入で主人公の立場や正体が語られず、何もわからないままゲームに放り込まれる。イベントシーンでは字幕が架空の言語になっており、登場人物が何を語っているのかよくわからず、映像や内容を見て、何となく察していくしかない。ゲーム的にはちょっと不親切かもしれないが、自分が何者なのかも理解できず、ただ使役されてわけのわからないままに戦うという、主人公の気持ちをバッチリ体感できる。
ただ、説明不足なゲームというわけではない。ステージに隠された“予言者のオーブ”を破壊すると、フィールドマップに“ストーリー”という項目がアンロックされていく。こちらを選ぶと、たとえばなぜアーブロンがビーストになってしまったのか、ステージ1の神殿でなぜ人間が血塗られた手で触れてきたのかが、文字で詳細に語られていく。「あのシーンはそういうことだったのか!」と、けっこうスッキリできるため、先のストーリーが気になるし、 “予言者のオーブ”を探すモチベーションにもなる。
続いて、バトルについて詳しく述べていこう。一部例外もあるが、基本的にはステージを進んでいくと、敵とのエンカウントが発生。前後にバリアーが登場して、指定数の敵を倒すまで先へ進めなくなる。
アーブロンは、ヘビーアタック(通常攻撃)に加え、スタン攻撃、掴み攻撃、ブロック、カウンターなど、じつに多彩な技をくり出せる。だが、バトルの難度は非常に高い。敵はこちらに走ってきて素早く攻撃してくるため、ちょっとでも気を抜けばダメージを受けてしまう。そこでカウンターやスタン攻撃を活用していきたいのだが、じつはこれらの特殊攻撃を行っているときも無敵にはならず、背後から攻撃を受けることが多々ある。左右から同時に攻撃されるという状況を、的確なアクションで切り抜ける技術が必要とされる。
さらに、本作には多彩な必殺技が存在する。敵を攻撃すると溜まる“Blood”ゲージを使い、発動する仕組みだ。たとえば“寄生”という技は、ゲージを1本消費して敵に飛びかかり、相手を倒しつつHPを1回復できる。
なかでも強力な技が、ゲージをすべて消費して発動するレイジチェインだ。発動すると敵がいる方向にボタンのアイコンが表示され、その方向にスティックを倒してボタンを押せば、自動で敵を倒してくれる。ボタンの入力に失敗するまでこの技を連続で発動できるため、強敵が多数出現するポイントで積極的に活用したい技だ。
もうひとつ注目したいのがスコアシステムだ。本作は敵を倒すとスコアを入手でき、敵を連続で倒すと倍率がどんどん上昇していく。ただし、ダメージを受けると倍率は0に戻ってしまう。前述のようにノーダメージで戦闘を進めることが困難なゲームバランスのため、ハイスコアを狙いだすと、難度はさらに上昇する。
だが、このスコアアタックがかなり熱く楽しい! 左右から連続で襲い来る敵を、流れるようなカウンターの連続で的確に倒すときなどは、スコアはもとより、プレイヤーのテンションの上がりかたも尋常ではないのではないか? ゲームの上達を求められ、それに応えられたときの快感こそ、本作の醍醐味といえるだろう。
ちなみに、スコアシステムは全プレイヤーにチャレンジしてほしい、という想いがひしひしと伝わる作りになっている。そのひとつが、ステージ選択画面でスコアランキングが表示されること。今回は機材の都合でオフラインでのプレイであるため、体験はできなかったが、フレンドと競い合うのはきっと熱中できるだろう。
なお、バトルの難度は確かに高いが、じつは主人公が倒されても無限に復活可能なため、敵が強くて進めない、という状況はそこまで発生しないはず。ただし、復活した回数はカウントされるため、スコアやゲーム進行に影響を及ぼすかもしれないことは留意しておこう。
オリジナル版もプレイ可能!
スコアは強化やボーナス要素の解放にも関係してくるので、こちらについても解説しよう。本作では、獲得したスコアを、マナというポイントとして入手できる。“ウィズダム・オブ・シャドー”というメニューで、このマナを使って強化やボーナス要素のアンロックが行えるのだ。
強化は、主人公のHPの上限を伸ばしたり、必殺技を強化するものなど、さまざまだ。またゲーム中に発見した、装備のような“タリスマン”を購入することも可能。タリスマンを身につけると、たとえばバトル以外のときにBloodゲージが徐々に増えていくなど、強力な効果を発動できる。ステージ開始時に3つまで選択できるため、自分のスタイルに合った組み合わせを見つけ出すのもまた楽しいだろう。
ボーナス要素のひとつが“禁書”。こちらはゲーム中の言語を翻訳して字幕表示する機能で、イベントシーンでの会話がわかるようになる、というものだ。また1989年版『Shadow of the Beast』のBGMでプレイできるという、ファンにはうれしいアンロック要素もある。
“ビジョン”では、登場人物や敵キャラクターの詳細を確認できる。チラッと登場した兵士にくわしい背景が語られていたりして、世界観をより深く楽しむことができる。
注目したいのは、“ヒストリー”のカテゴリ。なんと、1989年版『Shadow of the Beast』のエミュレーションバージョンが収録されているのだ。さっそくアンロックしてプレイしてみたが、まあとにかく難しい! 攻撃を当てにくかったり、いきなり地面から槍やツノが現れたり、振り向きにやたら時間がかかったりと、5分ぐらいでゲームオーバーになってしまった。レトロゲームだからというわけではなく、『Shadow of the Beast』、というか当時のPsygnosis制のゲームはどれもバツグンに難しくて、筆者の腕前ではまともに進めなかったことを思い出してきた。
ただうれしいことに、HPを無限にするアンロックも存在しているので、当時クリアーを挫折した方は、本作のバージョンで再チャレンジしてみるのもいいのではなかろうか。
というわけで、27年ぶりに復活した『Shadow of the Beast』をプレイしてみたが、大まかなストーリーや高い難度といった、ゲームの根幹となる部分はオリジナル版をしっかりと引き継いでいるように感じた。一方で、バトルや探索の楽しさ、操作性、やり込み要素などは、オリジナル版に比べて遥かに改良されており、楽しい作品に仕上がっている。
文中でも述べたが、スコアアタックはかなり熱いので、当時のファンはもちろん、アクションゲーム好きもぜひチャレンジしていただきたい。