完全新作ハードボイルドアドベンチャーの魅力に迫る

 アークシステムワークスから2016年5月11日より配信中のニンテンドー3DS用ソフト『-CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~』。本作は、『アナザーコード 2つの記憶』など数々の名作アドベンチャーゲームを手掛けてきた金崎泰輔氏(イルカアップス)を始めとする元CINGのメンバーと、アークシステムワークスがタッグを組んで贈る、完全新作のハードボイルドアドベンチャーゲーム。本稿では、開発のキーパーソンである、金崎氏と庄司氏(アークシステムワークス)、シナリオライターの咲良まゆ氏のインタビューをお届けする。

『-CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~』開発スタッフインタビュー! 大人向けのダウンロード専用タイトルとして始動した本作の企画意図とは?_03
アークシステムワークス
庄司哲朗氏(左)
ディレクターとして進行管理から品質チェック、プロモーション全般を手掛ける。文中は庄司。

G.Collection
金崎泰輔氏(中央)
ゲームデザインとキャラクターデザインを担当。文中は金崎。

シナリオライター
咲良まゆ(右)
本作の設定やシナリオを担当。文中は咲良。

――かつて金崎さんが手掛けられた『ウィッシュルーム 天使の記憶』(※1 以下、『ウィッシュルーム』)をプレイしたことがあり、本作のイラストを見て、同じ方が手掛られているのでは?とピンときました(笑)。

(※1)2007年に任天堂より発売されたニンテンドーDS対応のミステリーテイストのアドベンチャーゲーム。開発会社のシングは上質のアドベンチャーゲームを制作する開発会社として知られていた。本作の開発では金崎氏はじめ同社の元スタッフが多く携わる。

金崎 ありがとうございます。当時と似たようなテイストになっているかもしれませんが(笑)。

――では、本題に入らせていただきます。本作のプロジェクトが始まった経緯を教えていただけますか?

金崎 アークシステムワークスの木戸岡社長から「何かいい企画はありませんか?」とお声がけいただいたのがきっかけです(笑)。

――木戸岡さんとは以前からお知り合いだったんですね。

金崎 木戸岡社長とは、古くからお付き合いさせていただいております。お声かけいただいてから企画を提出したのですが、なかなかOKを出してもらえずにいたときに、「パッケージにこだわらずにダウンロード専売のタイトルとして出してみては?」と木戸岡さんにご提案いただいたんです。

――アークシステムワークスさんも、もともと『神宮寺三郎』(※2)シリーズを通じてアドベンチャーゲームに力を入れている印象もありますから、その流れから始動した企画とばかり思っていました。

(※2)探偵、神宮寺三郎が主人公のアドベンチャーゲームシリーズ。ハードボイルド風の世界を描いたアドベンチャーゲームの先駆け的タイトルとして知られる。1987年に第1作はファミコン ディスクシステム対応作として発売された。現在はアークシステムワークスからシリーズ作が発売中。

庄司 『神宮寺三郎』シリーズとはまったく独立したものとして立ち上がりました。たまたま大人向けのハードボイルドなアドベンチャーゲームというのが似ていただけです(笑)。

――アドベンチャーゲームと言うと、シナリオが重要な要素になると思います。咲良さんにシナリオをお願いした理由をお聞かせいただけますか?

金崎 以前、別のタイトルでいっしょにお仕事させていただいていたということと、咲良さんはとても幅広いジャンルのシナリオを書けるからです。企画を固めている段階から咲良さんに依頼していました。

――咲良さんの技術を信頼して、お願いしたということですね。実際にゲームをプレイしてみて、登場人物それぞれのビジュアル、キャラクター性の魅力がとても伝わり感銘を受けました。アドベンチャーゲームの登場人物を作り上げていくのは、どのように進めていくものなのでしょうか?

金崎 まず初めに、キャラクター以前に世界全体の設定から始まります。「どのようなゲームや世界がいいのか?」という問いから、「取調室で話が進むようなアドベンチャーゲームがおもしろいんじゃないか?」と、全体の枠組みを決めていきます。それならば当然、主要人物は刑事になりますし、刑事ものであればベタですけど“バディもの”(※3)の構造がいい。男性と女性がいて、その女性が上司の場合もあるし、男性が上司の場合もある……といったところからキャラクター作りが始まるんです。それで男性が主人公、女性がアシスタントのように少しずつ設定を肉づけしていきます。

(※3)性格や容姿の異なるふたり組が主役格で活躍するドラマの総称。

――キャラクターの名前もこのあたりで決まるのでしょうか?

金崎 はい。咲良さんといっしょに名前を考え、最終的には庄司さんに確認していただきます。名前が決まると顔のイメージも沸いてくるんです。

――キャラクタービジュアルを決めるうえで、名前はすごく重要な要素なんですね。

金崎 名前は、初期設定から何度か変わっているんですよ。

咲良 候補をいくつか挙げましたが、主人公の“七瀬祥之介”は初めからしっくりきた名前でした。

金崎 そうですね。祥之介は古風な名前ですけど、男っぽくていい名前だと思いました。

――名前の候補を考えるときは、キャラクター設定などの資料を見て直感的に閃くものなのでしょうか?

金崎 じつは祥之介はラフ画を先に描いていました。その当時、僕がテレビドラマの『MOZU』を観ていて、主役を演じた俳優の西島秀俊さんがすごくカッコイイと感じたので、彼をイメージしたビジュアルにしたいと思っていました。

――できあがった祥之介のデザインを見た印象はいかがでしたか?

庄司 渋くてすごくかっこいいと思いました。ちなみに、初期の雨倉のデザインは髪が長かったのですが、制作の関係上いまのデザインに落ち着きました。

『-CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~』開発スタッフインタビュー! 大人向けのダウンロード専用タイトルとして始動した本作の企画意図とは?_02