6周年を迎えた『NieR』に大きな動き
2016年4月16日、東京・六本木にあるEX THEATER ROPPONGIにて開催された『NieR』のコンサート“NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノ シロ 再生ノ クロ”。同コンサートでは、音楽の演奏以外にも、前作『NieR Replicant/Gestalt』の開発秘話あり、最新作『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の新キャラ・声優発表、実機のデモプレイのお披露目ありと、盛りだくさんの内容が公開。
それに合わせて、2016年4月21日発売の週刊ファミ通2016年5月5日号では、最新画面写真などを掲載。皆さんご覧いただけたでしょうか。
ここでは、そんな画面写真に加え、プロデューサーの齊藤陽介氏、ディレクターのヨコオタロウ氏、コンポーザーの岡部啓一氏、キャラクターデザイナーの吉田明彦氏、ゲームデザイナーの田浦貴久氏にお集まりいただき、新情報に関して、いろいろとお話をうかがう機会を得たので、その再のインタビューを大放出(※インタビューはコンサート前の4月上旬に実施)。
記事の最後には、コンサート会場で販売されていた『NieR』グッズのプレゼントもありますので、ぜひチェックしてください!
PlayStation Nowで配信された『NieR Replicant』を振り返る
齊藤 いきなりですみません、ヨコオさんがちょっと遅れてるみたいで。
――あら。
齊藤 でも、先に始めちゃいましょうか?(笑) あとで、適当にヨコオさんの発言を差し込んでくれれば(笑)。もしくはヨコオタロウ遅刻と太字で。
――はい(笑)。では……まず、PlayStation Nowで配信が始まる前作『NieR Replicant』の話からうかがいたいのですが、いま振り返っていかがですか。
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齊藤 『NieR』のサントラは聴いたことはあっても、プレイしたことはない、という方がいらっしゃるということはちょくちょく聞いていたので、せっかくなら『NieR:Automata』が出る前に遊ぶ機会を設けられれば、ということで実現しました。『NieR:Automata』は前作をプレイしていなくても十分楽しめる作りになっているのですが、『NieR』をやったことがないという人にぜひ触ってもらいたいという思いもありましたし。期間限定ではあるんですが、プライスダウンでお得に遊んでいただけるので、ぜひプレイする人が増えてくれればいいなと思っています。また、プレイした人の中には、Aエンドで止めちゃった人もけっこういると思うんです。Bエンドからが『NieR』というか、2周目以降がよりディープな内容になってくるので、そこもぜひ楽しんでもらいたいですね。
――「『NieR』のサントラは聴いたことはあっても、プレイしたことはない」という人がいるというのは、それだけ前作は音楽もよく、評価も高かったですよね。
岡部 おかげさまで。ですが今回、コンサート(NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノ シロ 再生ノ クロ)を開催するに当たって、『NieR Replicant』の楽曲制作について聞かれることがあったんですけど、ぶっちゃけすごく忘れていました(笑)。発売されたのは6年前ですが、制作時期はもっと前で、試作の段階からやらせてもらっていたので、7年以上前なんですね。ですので、最初のころに作った曲などは、どんな気持ちで作っていたか、ほとんど記憶になくて(笑)。『NieR:Automata』の楽曲を作る際にも、前作の音楽を聴いてみたんですが、自分の記憶のものと、実際に聴いたものとでは、印象が乖離していたり、いまならこうするのに、ということも思ってしまって。その思いを『NieR:Automata』の楽曲作りにぶつけている最中です。
――『NieR Replicant』の楽曲では架空言語の歌モノが多いのも特徴だと思うのですが。
岡部 歌詞は、いまある言語をベースに、ゲーム自体はかなり未来の話なので、未来では言葉はこう変化しているんじゃないか、という想定で、響きなども含めて、歌い手のエミ・エヴァンスさんと考えていきました。ここは無国籍感を出したいからラテン語をベースに、ここは儚い雰囲気を出したいからフランス語をベースに、といったような感じです。意味合いより耳に入ってくる印象を大切にしました。
齊藤 実際の言語の歌もありませんでした?
岡部 唯一、エンディングだけ英語ですね。
――エンディングだけ英語にしたのは何か理由があったのですか?
岡部 僕もヨコオさんも、ゲーム中はユーザーに「こんなことを歌っているんじゃないかな?」と想像してもらいたいと思って架空言語にしたんですが、急に現実の言葉になる、というところで「ハッ」としてもらおうと。
――ああ、なるほど、そういった狙いがあったんですね。吉田さんは前作『NieR』は、外から見られていたわけですが、『NieR』に関してどういった印象をお持ちでした?
吉田 自分の好きなことをトコトンやり切ってるゲームだな、という印象です。そういった企画はなかなかやらせてもらえないんですよ。『ベイグラントストーリー』は比較的やりたいことがやれた作品でしたけど、最近はとくに難しいですよね? そういう意味では、作家性を前面に出してやれている数少ないゲームなんじゃないかと思います。うらやましい。
――田浦さんはいかがですか?
田浦 弊社の『BAYONETTA(ベヨネッタ)』と発売時期が近かったと思うんですが、大きな腕がドーンと出るシーンがどちらの作品にもあって、少しライバル視していました(笑)。音楽、シナリオはいま振り返ってもいいなと思います。システムに関しては、いろいろなジャンルがハチャメチャに入っていて、「よく1本にまとめられたな」というのが印象に残っています。いま、ヨコオさんといっしょに開発させてもらって、ヨコオさんからよく言われるのは、「とにかくヘンなもの」なんです。当時、作っていたプランナーの方は苦労したんじゃないかなと思います(笑)。
齊藤 『NieR:Automata』も冒頭からクレイジーで、変な感じになっていますよ。
田浦 そうですね、本当にこれでいいのかと思いつつ(笑)。作る側としては、いつもとは違うことが求められるので、飽きることなく作り続けられています。
齊藤 でも、ヨコオさんのムチャ振りをちゃんと形にするプラチナゲームズさんはスゴイと思います。開発の過程で「これ大丈夫なの!?」と思うものでも、次に見たらスゴくいいものに落とし込まれていることが多くて。これならヨコオさんも調子に乗って要求し続けちゃうなと(笑)。今回はヨコオさんがいつも以上に作りたいものを作っている感がスゴい。ヨコオワールド全開です。
ヨコオ すみません、遅れました。
――あ、お世話になってます! 先に進めさせてもらってます。
齊藤 ちょうどヨコオさんがいかにすばらしいクリエイターかを語っていたところだよ。
ヨコオ それ、いちばんあり得なそうなことじゃないですか(笑)。あ、インタビュー中も撮影します?
――最初だけインタビュー中のカットを撮影させてください。
ヨコオ じゃあ、ちょっと待ってください、準備しますので(ゴソゴソゴソ……例のマスクを取り出す)。はい、大丈夫です。
――わざわざ持参していただきありがとうございます(笑)。では、改めてヨコオさんにもおうかがいしますが、PlayStation Nowで配信される『NieR Replicant』について、いま振り返っていかがですか?
ヨコオ ……。いま質問されました?
齊藤 マスクしてるから聞こえてないじゃん(笑)。
――『NieR Replicant』を・い・ま・振・り・返・っ・て、い・か・が・で・す・か?
ヨコオ イヤなことがいっぱいあったな、という記憶がいちばんです。
――振り返って真っ先に出てくることがそれ(笑)。
齊藤 そんなになかったでしょ(笑)。
ヨコオ 開発の現場はけっこうツラかったですよ。
齊藤 ああ、開発の過程はね。
ヨコオ ライブラリがぜんぜんできなかったりとか。すごく長い期間作っていたんですけど、中盤くらいまでゲームができなくて、終盤でようやく全編通してゲームがつながって。なので、最後までゲームの全貌を誰もわかっていなかったです。
――不安を抱えたまま、終盤まで開発が進んでいたと。
ヨコオ そうなんですけど、僕はディレクターという立場上、スクウェア・エニックスさんには「大丈夫です!」と報告しなければいけなかったので、毎回、何もできてないのをいかに誤魔化すかということをがんばっていました。
一同 (笑)。
齊藤 たしか、部分ごとに見せられつつ、ようやく要素がすべて揃ったというところで、ヨコオさんがシナリオの順番などをグッチャグチャに直したよね。
ヨコオ そうですね、かなり直しました。おもしろくなかったので。ただ、その時点で、英語版のローカライズはけっこう進んでいて、僕が直したせいで、すごい量の修正が発生したので、美人のローカライズ担当の方からはすごく文句を言われました。最終的に、打ち上げで土下座しましたからね(笑)、その方に。土下座したのが『NieR』のいちばんの思い出です。
――そんな苦労があって、できあがった前作『NieR Replicant/Gestalt』の出来映えについてはいかがですか?
ヨコオ えっ!?
――で・き・ば・え・に・つ・い・て・は・?
ヨコオ 完成した瞬間は、もう二度と見たくないと思いました。完成した瞬間からは手を入れられないので、見ると直したくなるんです。ですので、絶対見たくないと思って、半年以上、見れなかったですね。ただ、半年以上経つと、当時のことを忘れ始めて、他人事として見れるので、最近は動画など見ることもあります。岡部さんの曲も、発売して1年くらいはぜんぜん聴きませんでした。
――それは苦労が思い出されるから?
ヨコオ 単純に飽きたからです(笑)。開発中は、聴き飽きるも程があるほど聴いていましたので。
岡部 開発の終盤でも「もう聴き飽きた」という話しをされました(笑)。