聖地は、梅田のシンボル、スカイビルにあり

 2016年3月27日、プラチナゲームズが設立10周年の催しのひとつとして、ファンを社屋に招き、開発現場の見学やクリエイターとのフリートークを楽しみ、そして新作を垣間見られるというイベントを開催した。当日の模様をリポートしよう。

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 当日は午前の部と午後の部の2回にわたってイベントが催された。記者が同行したのは午前の部。朝10時に大阪・梅田界隈のシンボルでもある梅田スカイビルにあるプラチナゲームズを訪れた。

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▲白とプラチナカラーでまとめられたエントランス。
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▲よく見るとフロアには過去に同社が開発したタイトルの名前が敷き詰められている。
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▲壁面には開発したタイトルのパッケージや関連フィギュア、そして数々のアワードトロフィーが居並ぶ。お宝の山だ。

 最初に通されたのは、Purpleと名付けられた会議室。扉の色がそのまま各部屋の名前であり、中でもRedは特別な部屋。スタッフによると、「怒られるときなどはRedに呼ばれます」とのこと。

 Purpleに集まった15名ほどの参加者を前に、取締役の佐藤賢一氏が当日の概要を説明。参加者は大きく4グループに分かれ、社内を巡回しつつ、以下のことが楽しめると語られた。

・開発フロア見学コーナー……プラチナゲームズのゲームができるまでを見学
・閲覧コーナー……門外不出の企画書やコンセプトアートを自由に閲覧
・フリートークコーナー……稲葉敦志氏、神谷英樹氏、橋本祐介氏、齋藤健治氏とのフリートークが楽しめ、記念撮影やサインをもらったりが可能
・ゲーム試遊コーナー……日本未発売のタイトルを含めたプラチナゲームズのタイトルが遊べる

 各コーナーは30分程度。「ふだんのプラチナゲームズを見ていただくために、今日は全員出勤させています。初めての試みなので、至らないところはあるかもしれませんが、大目に見ていただければ」(佐藤氏)。考えてみれば当日は日曜日。社員総出でのおもてなし体勢だったのだ。

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▲憧れの場所で固唾を呑むファンたちの緊張を笑顔でほぐす佐藤氏。

 記者はAグループに同行。Aグループは、神谷氏がディレクションをする2017年発売予定のXbox Oneタイトル『SCALEBOUND』のチームに密着することとなった。以下はAグループとして体験した内容になる。

いよいよ開発フロアに潜入

 プラチナゲームズは現在200名弱の規模。スカイビル内でもふたつのフロアに分かれており、フロアを移していよいよ見学開始となった。

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▲緊張の面持ちでフロアの隅から見学開始。だが少し歩くと……。
▲等身大のドールが着席しており、皆一様にギョッとしていた。いたずらなのか、日常なのか。

 開発の順を追うように、まずはコンセプトアート班を見学。

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 ここでは『SCALEBOUND』に登場するドラゴンを例に制作工程が語られた。最初のアイデアからいろいろなバリエーションのアートを作成し、ディレクター(この場合は神谷氏)がチェック。「これだ」と決まったものを詰めていく作業をかいつまんで見学できた。印象深かったのは、大きなものに関してはパーツごとに分けて描くことが重要で、とくにメカニックなどは細かいパーツまでをここで詰めておかないと、モデリングをするチームの解釈が入り、最初に狙っていたデザインと異なってしまうという話。大人数でクオリティーが高く、軸のブレない作品を組み上げるには、ひとつひとつの工程での丁寧さが不可欠とわかるエピソードだ。

 「アート班なのでこの周囲は明かりを落としています。色など、ディレクターのチェックを受けるときにすごく大切なので。とはいえ、神谷ディレクターのサングラスはオレンジ色なんですが(笑)」。

 ついでキャラクターのモデルを作るセクションへ移動。アート班の仕上げたキャラクターをゲームの中で動くものに変換する部署だ。アート中にも指示はあるが、実際の生き物に例えたら何に近いのか、質感はどんな感じか、それらをアート班や神谷氏と詰めながら、資料集めが行われる。

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 だいたいの目標が決まったら、モニター内で立体の彫刻のようなものを作る作業に移行。2~3週かけてディティールまでを作り込んでいく。

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▲左の写真が最終的には右の写真のようになる。……ホント?

 だがこれはモデルがアップになったときなどのための、もっとも細かいデータ。実際にはゲーム中で自在に動かすために、ここからデータの軽いモデルが作られたり、動かすための骨組み(リグ)がモデルの中に仕込まれたりしていく。

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▲さらにテクスチャーが貼り込まれ、凹凸を表現するマッピングがなされ、モデルは完成する。

 続いてはアニメーションのセクション。モデルを動いているように見せるには、秒間30~60コマの動きが必要で、これらすべてに対応したリグの動きを設定していてはキリがない。そこでコントロールリグと呼ばれる、1ヵ所を動かせば連動して全身が動く部分を設定していくことになる。ドラゴンの場合、しっぽなら根元を動かすだけで、先端の動きまで制御されたり、身体を上下させると羽の膜が揺れたりなどするのだ。

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 これらをゲームエンジンに出力したのち、モデルは特殊効果をつけるVFX班に渡されたり、プログラマーに渡されたりするという案配だ。

 VFX班は、モデルやアニメーションとは違い、光や炎など自然現象的な効果を扱うセクション。『SCALEBOUND』の場合、おもにUnreal Engine付属のCascade Editorを使用して制作されていく。

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 パーティクルと呼ばれる小さな粒子の動きを選んで、効果を乗せ、上の写真では蒸気が湧いているようなエフェクトを数秒で加工していた。これがいくつかの工程を経て、横向きで炎に変われば、ドラゴンが吐く炎のエフェクトにもなり得る。

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 キャラクターが生み出され、動きを得るまでを駆け足で確認した後に待ち受けていたのは、プログラマの唐津麻勝俊氏。週刊ファミ通にも一時期連載を持っていた方だ。軽快な関西弁で来場者をいじりつつ、これまで見てきたキャラクターが、仮に組まれたゲームの中で実際に動くところを案内していた。

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▲来場者にはここで思わぬプレゼントが配られた。「ほなら、すみません。短い時間でしたけどありがとうございました。これね、サイン入りのを作ってもらったんで神谷先生に」(唐津麻氏)。