『Her Story』も大きな存在感を見せる
2016年3月14日~18日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコ モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターの技術交流を目的とした世界最大規模のセッション、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2016が開催。会期3日目の3月16日の夜には、恒例の第16回 Game Developers Choice Awards(ゲーム・デベロッパーズ・チョイス・アワード、以下GDCアワード)と、第18回Independent Games Festival Awards(インディペンデント・ゲーム・フェスティバル・アワード、以下、IGFアワード)が行われた。
2016年に発表されたすぐれた作品に贈られる両賞。第16回GDCアワードにて、2015年を代表する作品に贈られる“Game of the Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)”を受賞したのは、『ウィッチャー3 ワイルドハント』。『フォールアウト4』ら、名だたるタイトルを押さえての受賞となった。登壇したCD PROJECT REDの共同創業者マルツィン・トゥインスキ氏からは、「ゲームを作るのはとてもたいへんだが、この賞を取るのはもっと難しい。私たちは3作目にしてようやく受賞できました。チーム250人(その家族や子供を入れたら750~800人ほど)みんなが、約4年間犠牲を払って作ってきた成果です。私は、高校を出てするに会社をスタートして、ゲームのディストリビューションやローカリゼーションを手掛けました。自己資金と借金で、1作目の『ウイッチャー』を作りました。1作目の『ウィッチャー』は開発スタッフがほぼ5人という、インディーゲームスタジオのような環境で始まりました。最初のプランでは、『ウィッチャー』を作るには15人必要だったのですが、最終的には80人になりました。この間、ゲームファンの皆さんが私たちを支えてくれました。この賞はファンの皆さんに捧げたいです! あと、まだ本作をプレイしていない方、“ゲーム・オブ・ザ・イヤー”を取ったのですから、遊ぶのならいまですよ!」とのコメントが聞かれた。なお、同作はBest Technologyも受賞している。
開発者が選ぶ賞ということで、まさにGDCらしい……と思わせたのが『Her Story』の躍進。インディーゲームとして2015年にリリースされた本作は、GDCアワードにおいて、“Innovation Award(革新賞)”、“Best Handheld/Mobile Game”、“Best Narrative”の3部門を受賞し、クリエイターのサム・バーロウ氏も「信じられない」との思いを口にしていた。ちなみに、『Her Story』はIGFアワードでも、大賞にあたる“Seumas McNally Grand Prize”のほかに、“Excellence in Narrative”を受賞し、都合5冠を達成。今年のGDCの“顔”となった。
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そのほかでは、『Ori and the Blind Forest (オリとくらやみの森)』が、“Best Visual Art”を受賞、さらに同作の開発を手掛けるMoon Studiosが“Best Debut”に輝いている。
また、イベントには、ライフタイムアチーブメント(生涯功労賞)を受賞した、ベセスダ・ゲーム・スタジオのトッド・ハワード氏が登壇。『エルダースクロールズ』シリーズや、『フォールアウト』シリーズを作ったクリエイターの登壇に、会場は大いに湧いた。トッド・ハワード氏は、「この賞を受賞できて、とても光栄に思っています。ここにいる皆さん、そしてGDCに感謝します。これは、私だけの賞ではなくて、ベセスダのスタッフ全員に与えられた賞だと思っています。そして、もちろんいちばん大事なのはファンの皆さんです。ファンの皆さんは、何度もゲームが特別なものであることを教えてくれました。いっしょに費やす時間は大切であり、ゲームとは何か、ということを感じさせてくれます」とのことだ。
今回のGDCアワードでは、ひときわ感動的な瞬間があった。2015年にお亡くなりになったゲーム業界の故人を回顧するコーナーで、最後に任天堂の岩田聡さんを偲ぶ映像が流され、会場からは大きくそして温かい拍手が湧き上がったのだ。会場からは、すすり泣きをする音がそこかしこから聞かれた。岩田さんは度々GDCに登壇していることもあり、来場者の皆さんにとっても、けっして忘れることができない存在のようだ。
以下、第16回DCアワードの結果をお伝えする。
※タイトル名は、日本語版がリリースされているものは日本語表記。開発スタジオと発売元は海外での表記に準拠しました。
■Game of the Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)
〈受賞作〉
『ウィッチャー3 ワイルドハント』(CD Projekt RED/CD Projekt)
〈ノミネート作〉
『フォールアウト4』 (Bethesda Game Studios/Bethesda Softworks)
『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』(Kojima Productions/Konami)
『Bloodborne(ブラッドボーン)』(FromSoftware/Sony Computer Entertainment)
『ロケットリーグ』(Psyonix)
■Innovation Award(革新賞)
〈受賞作〉
『Her Story』 (Sam Barlow)
〈ノミネート作〉
『スーパーマリオメーカー』(Nintendo EAD Group No.4/Nintendo)
『Undertale』(Toby Fox)
『Splatoon(スプラトゥーン)』(Nintendo EAD Group No.2/Nintendo)
『The Beginner's Guide』 (Everything Unlimited Ltd.)
■Best Debut
〈受賞作〉
Moon Studios (『Ori and the Blind Forest (オリとくらやみの森)』)
〈ノミネート作〉
Studio Wildcard (『ARK: Survival Evolved』)
Toby Fox (『Undertale』)
もっぴん(『Downwell』)
Steel Crate Games(『Keep Talking and Nobody Explodes』)
■Best Design
〈受賞作〉
『ロケットリーグ』(Psyonix)
〈ノミネート作〉
『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』(Kojima Productions / Konami)
『Bloodborne(ブラッドボーン)』(FromSoftware / Sony Computer Entertainment)
『フォールアウト4 』(Bethesda Game Studios/ Bethesda Softworks)
『Splatoon(スプラトゥーン)』(Nintendo EAD Group No.2 / Nintendo)
■Best Handheld/Mobile Game
〈受賞作〉
『Her Story』(Sam Barlow)
〈ノミネート作〉
『Lara Croft: GO』(Square Enix Montreal / Square Enix)
『Fallout Shelter』(Bethesda Game Studios / Bethesda Softworks)
『Downwell』(Moppin / Devolver Digital)
『AlphaBear』(Spry Fox)
■Best Visual Art
〈受賞作〉
『Ori and the Blind Forest (オリとくらやみの森)』(Moon Studios / Microsoft Studios)
〈ノミネート作〉
『ウィッチャー 3 ワイルドハント』(CD Projekt RED / CD Projekt)
『スター・ウォーズ バトルフロント』(DICE / Electronic Arts)
『Bloodborne(ブラッドボーン)』(FromSoftware / Sony Computer Entertainment)
『Splatoon(スプラトゥーン)』(Nintendo EAD Group No. 2 / Nintendo)
■Best Narrative
〈受賞作〉
『Her Story』 (Sam Barlow)
〈ノミネート作〉
『ウィッチャー 3 ワイルドハント』(CD Projekt RED / CD Projekt)
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』(Dontnod Entertainment / Square Enix)
『Undertale』 (Toby Fox)
『The Beginner's Guide』 (Everything Unlimited Ltd.)
■Best Audio
〈受賞作〉
『クリプト・オブ・ザ・ネクロダンサー』(Brace Yourself Games)
〈ノミネート作〉
『スター・ウォーズ バトルフロント』(DICE / Electronic Arts)
『Ori and the Blind Forest (オリとくらやみの森)』(Moon Studios / Microsoft Studios)
『Everybody's Gone to the Rapture』 (The Chinese Room / Sony Computer Entertainment)
『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』(Kojima Productions / Konami)
■Best Technology
〈受賞作〉
『ウィッチャー 3 ワイルドハント』(CD Projekt RED / CD Projekt)
〈ノミネート作〉
『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』(Kojima Productions / Konami)
『スター・ウォーズ バトルフロント』(DICE / Electronic Arts)
『フォールアウト4』(Bethesda Game Studios / Bethesda Softworks)
『ジャストコーズ3』(Avalanche Studios / Square Enix)
IGFアワードは斬新なタイトルが続々
IGFアワードは、前述の通り、『Her Story』が大賞の “Seumas McNally Grand Prize”と “Excellence in Narrative”を受賞。クリエイターのサム・バーロウ氏は、「このような賞をいただけてとても嬉しいです。15年間ビデオゲーム開発を行ってきましたが、徐々に改善し続けてきた結果です。私は、ゲームをある方向に極端に追い込んで、言外の意味を追求したことでうまくいきました。どんなバカバカしい、極端なアイディアであっても、自分だけが楽しいと思うものでもゲームにしてほしいです。同じように感じる人が、きっとゲームをプレイしてくれます!」とのコメントを寄せている。
第18回IGFアワードの受賞作は以下の通り(受賞作のみ)。
■Seumas McNally Grand Prize
『Her Story』(Sam Barlow)
■Excellence in Visual Art
『Oxenfree』(Night School Studio)
■Excellence in Design
『Keep Talking and Nobody Explodes』 (Steel Crate Games)
■Excellence in Audio
『Mini Metro』(Dinosaur Polo Club)
■Excellence in Narrative
『Her Story』(Sam Barlow)
■Nuovo Award
『Cibele』 (Star Maid Games)
■Best Student Game
『Beglitched』(Jennifer Jiao Hsia and Alec Thomson)
■ID@Xbox Rising Star Award
(Girls Make Games - The Hole Story)
■Audience Award
『Undertale』 (Toby Fox)