本作ならではの見どころや撮影秘話とは!?

 絶賛公開中の劇場映画『珍遊記』。本作でメガホンを取り、“漫☆画太郎”ワールドをみごとに映像化した山口雄大監督に、特別インタビューを行った。

映画『珍遊記』絶賛公開中! 山口雄大監督スペシャルインタビュー_07

映画『珍遊記』の見どころは、マンガにないオリジナル展開

――本作のストーリーと、映画の見どころについて教えてください。マンガとはけっこう中身も変わっているのでしょうか?

山口雄大監督(以下、山口) 大筋では原作のマンガを踏襲しています。暴れん坊の猿というか、主人公の山田太郎がいて、暴れん坊時の山田太郎はピエール瀧さんに演じて頂いています。そこに、倉科カナさん演じる玄奘が現れて、法力で太郎の力を閉じ込めるんです。力を閉じ込めた以降の太郎は、松山ケンイチ君に変身するんです(笑)。最初の展開は同じなんですけど、マンガだとそのあと、ある町の酒場で山田太郎の闘いになるんですね。マンガは6巻あって、2巻から5巻までがずっとその酒場で戦ってるだけなんですよ! 

――ほとんど、山田太郎がひたすらケンカしているだけという(笑)。

山口 ずっと戦っていて、最後に、中村泰造っていう、映画では温水洋一さんがやっている酔っ払いの酔拳の使い手が登場するんです。“中村泰造”というキャラクターは、漫☆画太郎作品のファンのなかでは有名なキャラで、もともと漫☆画太郎先生の初代編集者の名前なんですね。集英社の、その人が中村泰造って言うんですけど。そのまま名前で出ていて、その酔拳の使い手と戦って、原作は終わるんですけど。それも、どうしてそんな終わりかたをしたかっていうと、打ち切りになったからなんですね(笑)。

――マンガは、毎週ライブ感を大事にして作られていたという話ですからね。

山口 原作のマンガは、いま言ったように、ストーリーらしいストーリーがないんですね。尻切れトンボだし、話が進んでないんですよ。連載マンガだと、ずっと酒場で戦ってるのはギャグになるんですね。毎週毎週、何年間も続けることで、「また酒場かよ!」っていうのがギャグになるんですけど、それを映画でやったところでギャグにも何にもならないですよね(笑)。だから、まず映画用にストーリーを作らきゃいけないというところから始まりました。

――そのあたりの、マンガにはないストーリーが見どころということになりそうですね。

山口 ただ、主人公の山田太郎というキャラクターが、本当に即物的にというか、その場その場の感情だけで動いてしまうので、玄奘のほうにストーリーをつけようと思いました。そのために、映画のオリジナルキャラクターとして、溝端淳平さんが演じている、龍翔というキャラクターを作ったんです。彼は、太郎たちが立ち寄った町を牛耳っている新興宗教のボスなんですけど、彼と玄奘がいろいろと関わってくるという展開になっています。だから、龍翔というキャラクターは誰も見たことがない新キャラクターですので、それはかなり見どころです。

――龍翔を演じる溝端淳平さんの役作りについてもポイントですし、監督のストーリーの作り方も、そこに現れている、と。

山口 そうですね。龍翔に関しては、脚本家の松原秀と、おおかわら君がメインで作ったので、彼らの味がよく出ていますね。松原くんは、テレビアニメ『おそ松さん』のシリーズ構成を担当していて、おおかわら君は鬼ヶ島という芸人なんですね。

――ギャグマンガだから、脚本にも、ギャグや笑いが自分でわかる人を起用されたんですね。

山口 そうですそうです。笑いを第一線でやっている人たちに作ってもらいたかったんです。彼らのセンスがそこには出ていると思いますし、溝端さんがあんだけ吹っ切れた芝居をしているのってなかなか見たことないと思うので。そういう見どころはすごくあると思いますね。

――主人公の山田太郎を演じる松山ケンイチさんが、この映画ではまず観客の目を引きますよね。そしてさらに、溝端さんもインパクトがあると。

山口 松山君の印象ももちろん強いんですけど、溝端さんはキャラクターを描きこんでいるので、かれも松山君に負けず劣らずいい演技をしてくれていますね。例えば『007』シリーズなど、悪役がすごく立っている作品があるじゃないですか。そういう風に溝端さんも見えればいいなと思ったんです。やっぱり悪役がおもしろい映画って、絶対におもしろいんですよね。

――観客が、映画を観ていて「こいつを倒してほしい」と思うような悪役ですよね。

山口 その印象は溝端さんにあると思うんですよ。映画を観ると、たぶんわかっていただけると思います。

(C)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

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