クローズドベータテストの結果を検証する
ユービーアイソフトより、2016年3月10日に発売予定のプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『ディビジョン』。2016年1月26日から実施されていたプレイステーション4版のクローズドベータテストのインプレッションをお届けします。
■ディビジョンの一員となり、荒廃したニューヨークに希望の火を取り戻せ
『ディビジョン』の舞台は、正体不明のウイルスが流布され、崩壊したニューヨーク。プレイヤーは組織“ディビジョン”の一員として混沌の街に降り立ち、崩れ去った文明社会に秩序を取り戻すべく、街に巣食う脅威との戦いに身を投じます。
本作の魅力は、美麗なグラフィックで再現されたニューヨークの町並み。とはいえ、そこは我々の知るニューヨークではありません。冷たい雪の降る通りに活気はなく、生気を失ったり争っている人々と時折すれ違うのみ。乗り捨てられた車の列が道路をふさぎ、雑踏のあちこちに廃棄物がうち捨てられています。
“荒廃したニューヨーク”という言葉に惹かれ……
かつて人々がそこで暮らしていた痕跡を残しつつも、閑散としていて、どこか退廃的な雰囲気が漂う場所。俗に“廃墟”と呼ばれる場所が大好きな筆者は、本作の舞台設定を聞いて、いてもたってもいられずに記事の仕事を引き受けさせていただきました。
ニューヨークの街はかなりリアルに再現されているものの、通りを行き交う人々はほとんどおらず、街を歩けばあちこちで暴徒が武器を手に悪事を働いています。打ち捨てられた生活用品。道路に停めらたまま雪をかぶった自動車の数々。線路を塞ぐように止まった地下鉄。街を歩けばどこからか響いてくる乾いた発砲音。我々の知る、きらびやかなニューヨークの姿はそこにはありません。
現実の街の姿を再現しながらも、荒廃している、という設定はなかなか見たことがないので、非常にわくわくしながら戦いへの一歩を踏み出しました。
混沌のるつぼと化した街に足を踏み入れると、まず迷います。ニューヨークなんか行ったことないですから、当然土地勘もありません。
でも大丈夫。タッチパッドを押せば街を見下ろした形でマップを見ることができますし、目的地を設定すればゲーム画面上に目的地までの行きかたを示すナビが表示されるので、安心して脇道に逸れることができます(笑)。
ジャンルはTPS風のRPG
今回のクローズドベータテストでは、シングルプレイの冒頭部分を体験することができました。大きなミッションとしては、野戦病院に捕らわれた医者を救い出すもの。巨大な建物を占拠した暴徒と銃撃戦をくり広げます。
本作のプレイフィールは、主人公の背後から動きを追うTPS(=サードパーソンシューティング)そのもの。戦闘は、遮蔽物に身を隠しながら敵と撃ち合う“カバーアクション”となっています。戦闘では物陰から物陰へと、自分の立ち位置に気をつけながら移動して銃撃戦をくり広げます。
これだけだとよくあるシューティングゲームに思えるかもしれませんが、本作では攻撃のダメージが数値として表示されるのがおもいしろいところ。強い武器を装備すればより高いダメージを出せますし、防具を装備すれば受けるダメージの数値を減らすことができます。
多彩なスキルの中からいくつかを選んで使い分けることもできますし、スキル使用時に“効果範囲の拡大”や“クリティカルダメージの上昇”といった特殊効果を設定することもでき、自分好みのキャラクターのカスタマイズが可能になっています。
キャラクターにはレベルがあり、上昇することによって、より強力な装備を身につけることができるようになっていきます。レベルの概念、装備やスキルのカスタマイズ、与ダメージの表示など、いわゆるロールプレイングゲームの要素が多く含まれていることもまた、本作の大きな特徴であり、魅力と言えるでしょう。
クローズドベータ版でカスタマイズできたのはごく一部のスキルでしたが、ほかにもタレントやPEAKなど、さまざまな恩恵を受けられそうなアビリティが充実していました。新しいスキルが見えるのに、設定できないもどかしさ! 製品版が待ち遠しいです。
もちろん武器や防具の付け換えも可能で、プレイヤーは街を探索しながら新しい武器や防具を取得できるのですが、どうやらこの中身が固定ではない様子。同じ名前の装備でも、品質によって付随する特殊効果が異なることがあり、敵を倒して性能の良い装備を探していく、“ハックアンドスラッシュ”要素がかなり色濃く出ていると感じました。
とは言っても、そこだけがRPGらしさというわけではなく、街の中ではさまざまなサブクエストを受けることができ、舞台を歩き回る楽しさが本作の楽しみかたの大きな要素になってきそうでした。
もうひとつ、本作の重要な楽しみかたのひとつになってきそうなのが、基地の復興。医療棟、技術棟、防衛棟の3つの棟があり、プレイヤーが訪れた段階ではその機能が失われた状態になっています。クローズドベータ版では医者を助けると医療棟のアップグレードが可能で、復興を行うことによって新しいスキルを獲得できるなど、プレイヤーが恩恵を受けられるようになっています。この棟のアップグレードも項目が多く、製品版でのゲーム性の広がりを感じさせてくれました。こういうの要素は、100%まで達成しないとやめられない性格の筆者としては大歓迎です(笑)。
オンラインでフレンドや見知らぬプレイヤーどうしでグループを組んでプレイすることもできます。今回、筆者は途中から友人といっしょにプレイしたのですが、ボイスチャットでお互いの状況を報告し合いながら、どの遮蔽物に身を隠すか、敵との位置取りを考えてそれぞれをカバーし合うプレイ感は、お互いにひとつの組織に所属して志を同じくするもの同士という一体感を与えてくれました。ソロプレイで遊ぶ場合は自分が街を救うヒーローになっているという爽快感。マルチプレイであれば互いに背中を預けている信頼感と興奮の共有を、それぞれ楽しめることでしょう。
クローズドベータ版の目玉、混沌の街を象徴するダークゾーン
マップの中で特に汚染がひどく、封鎖されているエリアは、“ダークゾーン”と呼ばれています。ダークゾーン内では、施設の復興や秩序を取り戻すといったそれまでの目的は薄れ、プレイヤー自身が街を象徴する混沌の一部になっていくのです。
ダークゾーン内は外と違って、グループを組んでいないほかのプレイヤーと同じ空間で活動することになります。道ですれ違う相手は皆、実際にコントローラーを握っているプレイヤーなのです。そして、ダークゾーン内では、ほかのプレイヤーへの攻撃が可能です。
何故ほかのプレイヤーへ攻撃をするのか? それは、相手プレイヤーを倒すと、相手が持っていたダークゾーン内で入手できる強力な装備を奪うことができるからなのです。ここではほかのプレイヤーすべてが協力して暴徒を倒す仲間であり、同時に貴重なアイテムを持った獲物であり、命を狙っているかもしれない敵なのです。
汚染がひどいダークゾーン内で手に入れた物資は、通常の入り口を通って外へ持ち出すことはできません。専用の回収地点でヘリコプターを呼び、垂らされた紐にアイテムをくくりつけて回収してもらうことにより、初めてプレイヤーの手に渡ります。
ヘリを呼ぶための信号弾が撃たれると、ダークゾーン内のプレイヤー全員にその通知が行き渡ります。回収地点が決まっているということは、当然、その場所には貴重なアイテムを持ったプレイヤーが待っているということ。強力な武器や防具を手に入れるためには、別にわざわざ危険な街を駆け回って暴徒を倒し、物資を回収する必要はないのです。そう、ほかのプレイヤーから奪ってしまえばいいと言うことですね!
信号弾を撃ってからヘリが到着し、アイテムを回収が完了するまでの数分間。この間の緊張感こそが、今回の体験版でもっとも楽しめた部分でした。回収地点で待っていると銃撃に襲われたり、突然グレネードが飛んできたり。こちらは物資を奪われないように。相手はこちらを倒すために。それぞれ死力を尽くします。
さて、襲撃側にリスクがないかというと、そういうわけでもありません。ほかのプレイヤーを攻撃すると、キャラクターの頭に表示される名前が赤くなり、“ローグ”と呼ばれる懸賞金がかけられた状態になってしまいます。ローグを攻撃しても自分がローグになることはなく、ローグを倒せば報酬としてダークゾーン内で使える通貨を受け取ることができるのです。同時にローグ側にはタイムカウントが表示され、それがゼロになるまで逃げ切れば、報酬としてダークゾーン通貨が入手できます。
個人的には、逃げるローグを追いかけている時が一番楽しめていました。相手も自分と同じスピードで走り続けていて、自分は銃を撃つために立ち止まらなければならない。うっかりすると横から来たほかのプレイヤーに獲物を横取りされるかもしれない。どのタイミングで銃を撃つか、相手はどこに逃げ込むのか、そういった駆け引きがダークゾーンにはありました。
真価は未知数。製品版に期待!
今回のクローズドベータテストの主役はダークゾーンでのピリピリした緊迫感という感じでしたが、それが本作の最大のおもしろさではないはずです。
もちろん、製品版で新しく解放されるスキルがゲーム性を大きく覆す可能性だってあります。
ただ、筆者が最初に期待していた作中の雰囲気に関してはとてもよく、本来なら作業感が伴う街中の徒歩移動も、景色を楽しんでいたらいつの間にか目的地に到着していたようなことが多く、ほとんど気になりませんでした。ここからさらに行ける場所がどんどん増えていくのだと思うと、いまから楽しみで仕方ありません。
今回のクローズドベータテストでは、シングルプレイのレベルとダークゾーンのランク、それぞれ最大まで遊ばせていただきました。
最後に、ダークゾーン内の隠し部屋で買える最上級の武器“カドゥケウス”を装備したものを記念にパシャリ。あと1ヵ月ほど、首を長くして発売を待ちたいと思います!