最多ノミネートはMGSVTPPとウィッチャー3が4部門で並ぶ

 毎年アメリカのサンフランシスコで行われるゲーム開発者の国際会議、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)。その会期中に行われるのが、同イベントのゲーム賞“GDCアワード”(Game Developers Choice Awards)だ。

 ファンやメディア選出の賞とはまた違う、同業者ならではの視点や選出が興味深い本賞の今年のノミネート作が発表された。例年よりも日本からの選出が多く、『メタルギア ソリッド V: ファントムペイン』が最多タイの4部門にノミネート(『ウィッチャー3 ワイルドハント』と同数)。そして『ブラッドボーン』と『スプラトゥーン』が3部門ノミネートで続き、任天堂からは『スーパーマリオメーカー』も革新賞でノミネート。また日本のインディーゲーム開発者もっぴんによる『Downwell』がモバイルゲーム部門でノミネートされており、もっぴん氏本人も(開発チームおよび開発者の)デビュー賞で名前が挙がっている。

 なお発表と授賞式は日本時間の3月17日午前10時半から午後0時半にかけて行われる。セレモニーの様子はストリーミングサイトTwitchのGDCアワード公式チャンネルで配信予定だ。それでは毎年恒例のノミネート作紹介をどうぞ。

Game of the Year(最優秀ゲーム賞)

 大賞となるGame of the Yearには、オープンワールド系の豪華な世界を誇る納得の大作がノミネートされる中、小規模スタジオながら爆発的ヒットを飛ばしたPsyonixのレーシングサッカーゲーム『ロケットリーグ』が堂々の候補に。また日本のスタジオが開発したゲームから2作も候補になっているのは、近年なかなかなかったこと。健闘を期待したい。

フォールアウト4』 (Bethesda Game Studios / Bethesda Softworks)

『ウィッチャー3 ワイルドハント』 (CD Projekt RED / CD Projekt)

『メタルギア ソリッド V: ファントムペイン』 (小島プロダクション / Konami)

『ブラッドボーン』 (フロム・ソフトウェア/ ソニー・コンピュータエンタテインメント)

『ロケットリーグ』 (Psyonix)

Innovation Award(革新賞)

 革新性が評価されるこの部門では、とある事件にまつわる事情聴取映像を古いデータベースで検索していくと真相が見えてくる推理アドベンチャーゲーム『Her Story』、古典的なRPGスタイルにさまざまな要素を盛り込み独自のスタイルを創りだした『Undertale』、そしてメタフィクション的手法でゲーム作りやローカルコミュニティにまつわる闇を暴きだした『The Beginner's Guide』といったインディータイトル3作品と並んで、任天堂の『スーパーマリオメーカー』と『スプラトゥーン』がノミネート。それぞれプラットフォームアクションゲームとTPSというおなじみのジャンルを解体・再構成して幅広い層に新たな楽しみを届けたことが評価されている形だ。

『Her Story』 (Sam Barlow)

『スーパーマリオメーカー』 (任天堂情報開発本部 制作部第4グループ / 任天堂)

『Undertale』 (Toby Fox)

『スプラトゥーン』 (任天堂情報開発本部 制作部第2グループ / 任天堂)

『The Beginner's Guide』 (Everything Unlimited Ltd.)

Best Debut(デビュー賞)

 デビュー賞は、優秀な処女作を送り出して見事なデビューを飾ったスタジオや開発者本人に贈られる賞。だから本賞以外のノミネートが“『ゲームタイトル』(スタジオ・開発者名 / パブリッシャー名)”という順番で表記されているのに対し、この賞では“スタジオ名・開発者名(ゲームタイトル)”という順番になっているのだ。
 今年のノミネートは、恐竜×SF世界でのオープンワールドサバイバルアドベンチャー『ARK: Survival Evolved』を開発したStudio Wildcardや、2部門にノミネートされているプラットフォームアクションゲーム『オリとくらやみの森』のMoon Studios、そしてVRヘッドマウントディスプレイを被ったプレイヤーと紙のマニュアルを持ったプレイヤーが協力して爆弾解体する『Keep Talking and Nobody Explodes』のSteel Crate Gamesに、『Undertale』のToby "Radiation" Fox氏、そして『Downwell』のもっぴん氏が候補に。個人開発者が1作目で世界的賞を受賞というミラクルは起きるか?

Studio Wildcard (『ARK: Survival Evolved』)

Moon Studios (『オリとくらやみの森』)

もっぴん (『Downwell』)

Steel Crate Games (Keep Talking and Nobody Explodes)

Toby Fox (『Undertale』)

Best Design(ゲームデザイン賞)

 優れたゲームデザインを評価する本賞は、Game of the Yearに挙がっている4作品と革新賞ノミネートの『スプラトゥーン』が候補。シリーズ作のメタルギアとフォールアウトのノミネートは、それまでの作品のゲームプレイを意味的にも拡張する“オープンワールドでの潜入”や“拠点の構築と復興”といった要素が入っているのがポイントだろう。
 ちなみに『ロケットリーグ』のゲームデザインは2008年にプレイステーション3でリリースされた『Supersonic Acrobatic Rocket-Powered Battle-Cars』ですでに基本が完成しており、セールス・批評ともに7年近く経て評価された形となる。関係者や応援してきたファンも感慨深いのではないだろうか。

『ロケットリーグ』 (Psyonix)
『メタルギア ソリッド V: ファントムペイン』 (小島プロダクション / Konami)
『ブラッドボーン』 (フロム・ソフトウェア/ ソニー・コンピュータエンタテインメント)
『フォールアウト4』(Bethesda Game Studios/ Bethesda Softworks)
『スプラトゥーン』 (任天堂情報開発本部 制作部第2グループ / 任天堂)

Best Handheld/Mobile Game(携帯ゲーム機/モバイルゲーム賞)

 今年のノミネートはすべてモバイル向けのタイトル(『Her Story』はPC/Mac版もある)で、いずれもシンプルなゲームデザインやプレイしやすさの中に奥深さを秘めている。『Lara Croft: GO』 や『Fallout Shelter』の、大作IPをうまく使ってコアなファンも納得のゲームを作り出し、かつ新たなファンの獲得に成功している部分はぜひ広まって欲しいところ。

『Lara Croft: GO』 (Square Enix Montréal / スクウェア・エニックス)

『Fallout Shelter』 (Bethesda Game Studios / Bethesda Softworks)

AlphaBear』 (Spry Fox)

『Downwell』 (もっぴん / Devolver Digital)
『Her Story』 (Sam Barlow)

Best Visual Art(美術賞)

 美術賞では、映画「スター・ウォーズ」初期3部作の世界を見事に再現した『Star Wars バトルフロント』がノミネート。その他の候補作もそれぞれ独特なアートスタイルを持っていて、スクリーンショットを見れば一発でどのゲームか思い出すものばかり。新しい風を評価する傾向があるGDCアワードだけに、ポップな色使いが印象的だった『スプラトゥーン』が一歩リードの気もするが、どの作品が選ばれても「そう来たか!」と納得できそうだ。

『Star Wars バトルフロント』 (DICE / Electronic Arts)

『オリとくらやみの森』 (Moon Studios / Microsoft Studios)
『ウィッチャー3 ワイルドハント』 (CD Projekt RED / CD Projekt)
『ブラッドボーン』 (フロム・ソフトウェア/ ソニー・コンピュータエンタテインメント)
『スプラトゥーン』 (任天堂情報開発本部 制作部第2グループ / 任天堂)

Best Narrative(物語賞)

 暫定的に物語賞と訳したが、この賞は単に設定やシナリオの出来の良さにとどまらず、プレイヤーへの提示方法なども含めた、ビデオゲームのインタラクティブなストーリー要素を評価するもの。
 ゲーム上はプレイヤーの検索に応じて断片的な映像を見せていくだけで“正解”を提示せずプレイヤーに判断させる『Her Story』や、作者本人が語りかけてくるという構成によりノンフィクションと誤解されることすらあった『The Beginner's Guide』などは、まさにこの物語手法が評価されたもの。
 日本語版の発売が待ち遠しい『Life is Strange』も、主人公の時間を巻き戻せる能力と、起こってしまった出来事が後の展開にも影響してくるエピソード形式の構成を絶妙に組み合わせた、切なくて苦い物語が高い評価を受けている作品だ。

『Life is Strange』 (Dontnod Entertainment / スクウェア・エニックス)

『Her Story』 (Sam Barlow)
『ウィッチャー3 ワイルドハント』 (CD Projekt RED / CD Projekt)
『Undertale』 (Toby Fox)
『The Beginner's Guide』 (Everything Unlimited Ltd.)

Best Audio(音響賞)

 音響賞では、ゲームの雰囲気を構成する一部分として欠かせない優れたBGMを収録した作品を中心にノミネート。異色なのが日本でもファンの多いインディーゲーム『Crypt of the NecroDancer』 で、「BGMに合わせて移動することでプレイするローグライクなダンジョン探索ゲーム」という、サウンドとゲームデザインの融合が評価された形。『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』も、人々がどこかに消えてしまった世界を探索して残された思念を“聞く”という、サウンドデザインが重要なゲームだ。

『Everybody's Gone to the Rapture -幸福な消失-』(The Chinese Room / ソニー・コンピュータエンタテインメント)

『Crypt of the NecroDancer』 (Brace Yourself Games)

『Star Wars バトルフロント』 (DICE / Electronic Arts)
『オリとくらやみの森』 (Moon Studios / Microsoft Studios)
『メタルギア ソリッド V: ファントムペイン』 (小島プロダクション / Konami)

Best Technology(技術賞)

 技術賞では、複数部門にノミネートされている大作たちに加えて、オープンワールドで爆発&飛びまくりの無茶な破壊行為をする『ジャストコーズ3』がノミネート。オープンワールドアクションは数あれど、物理エンジンを酷使してバカ騒ぎすることにかけては確かに本作にかなうまい!

『ジャストコーズ3』 (Avalanche Studios / スクウェア・エニックス)

『メタルギア ソリッド V: ファントムペイン』 (小島プロダクション / Konami)
『ウィッチャー3 ワイルドハント』 (CD Projekt RED / CD Projekt)
『Star Wars バトルフロント』 (DICE / Electronic Arts)
『フォールアウト4』(Bethesda Game Studios / Bethesda Softworks)