深まったシナリオを楽しんでほしい――『魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス』今井秋芳監督×シナリオ鈴木一也氏インタビュー

『魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス』の監督を務める今井秋芳氏と、シナリオを担当した鈴木一也氏のインタビューをお届け。

●鈴木氏の手によって生まれ変わったシナリオの魅力、そして今後の展開について訊く!

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 アークシステムワークスから2015年11月26日に発売されたプレイステーション Vita/プレイステーション4/プレイステーション3用ソフト『魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス』。本作は、2014年に発売された『魔都紅色幽撃隊』にさまざまな要素を追加した、“學園ジュヴナイル伝奇”最新作だ。

 本作では、既存のシナリオが大幅に加筆・修正されているほか、新規のエピソード“デイブレイクシナリオ”が追加されている。これらのシナリオは、本作から制作に参加したクリエイターの鈴木一也氏が手掛けている。

 新たに鈴木氏を起用したのはなぜか、鈴木氏の手によって、『魔都紅色幽撃隊』のシナリオはどのように生まれ変わったのか……今井秋芳監督と鈴木一也氏にお話をうかがった。


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鈴木一也氏

ゲームクリエイター。デジタルデヴィル株式会社代表。かつてアトラスに所属しており、数々の『女神転生』シリーズ作品の制作に携わった。現在はゲーム制作のかたわら、東京デザインテクノロジーセンター専門学校でゲームの授業を行っている。

●今井監督と鈴木氏の出会い

――始めに、今井監督と鈴木さんの出会いについてうかがいたいのですが……いつごろからお知り合いなのですか?

今井 鈴木さんは、私がアトラスに入社したときの大先輩です。PCエンジンチームのグラフィックとして入ったんですが、そのとき、鈴木さんはもう(アトラスに)いらっしゃって。

――PCエンジンというと、相当前ですね。20年くらい前でしょうか?

鈴木 いえ、もっと前ですね。

今井 まあ、そのころからの大先輩で。それで、先に鈴木さんがアトラスを辞められたんですよね。

鈴木 そうでしたっけね。でも、(今井さんが)先に「辞める」と言ってたんだよね。で、俺が引き止めて。「君はすごい力を持っているんだから!」って。

今井 そんなこと言ってましたっけ!?(笑) 引き止めてはいただきましたけど。それからしばらくして、鈴木さんが辞められた後に、私も退社しました。

鈴木 それから、しばらくお互い会わなかったよね。

今井 会わなかったですね。

――では、再会のきっかけは……?

今井 しばらくしてから私がシャウトデザインワークスという会社を作ったんですよ、学芸大学駅に。その当時、鈴木さんも学芸大学に住んでたんですよね?

鈴木 ええ、引っ越しをしたんです。

――つまり、鈴木さんのお家と、今井さんの会社の最寄り駅が、偶然同じになったと。

今井 商店街で、ばったり出会って(笑)。

鈴木 なんでこんなところに!? って(笑)。

今井 そのころは、ちょうど『東京魔人學園剣風帖』を作ろうと思っていた時期で、鈴木さんに「今度こういうのゲームを作ろうと思うんです」ってお話ししたら、「伝奇モノは売れないよ」と言われました。それから、「“東京”がタイトルに付いている作品は売れない」って。

鈴木 ずいぶん、きびしいことを言いましたね。

今井 でも、確かにゲーム業界を見ていると、伝奇モノは売れていませんでしたし。“東京”って付いているものは、うさんくさいタイトルしかないという。まあ『魔人學園』もうさんくさいですけど(笑)。鈴木さんに「生半可な知識や覚悟じゃ伝奇ものは作れない」とも言われましたね。

鈴木 そうそう、そういう風に言いましたね。めちゃくちゃ上から目線でしたね(笑)。

今井 いやいや、大先輩ですから(笑)。そう言われて、「それを覆すぐらい、いいモノにします」と言って、そこからすごい勉強したんですよ。

鈴木 ああ、そうなんだ。

――鈴木さんのアドバイスで、今井さんの『東京魔人學園剣風帖』を作る覚悟が決まったのですね。

今井 作るからには知識を得ないといけないと思って、参考文献をかなり読みましたね。陰陽道の本とか、密教の本とか。

――ちなみに、『東京魔人學園剣風帖』の開発には、鈴木さんは何かの形で関わったのですか?

鈴木 いえ、まったく関わっていないです。

今井 『東京魔人學園剣風帖』が終わった後に、「なにかいっしょに仕事ができればいいですね」とは言っていたんですけどね。実際に、何かにいっしょに取り組むことはありませんでした。


●オリジナルの『幽撃隊』に足りなかったのは、ウンチク?

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――『東京魔人學園剣風帖』発売から17年ほど経って、『魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス』でおふたりの共演が叶うわけですが、今回、鈴木さんがシナリオを書くことになったきっかけは?

今井 これまで、シナリオは自分で書いていたんですけど、いまは何本もプロジェクトを抱えている手前、なかなかじっくりとシナリオを書く時間がとれないんです。『魔人』や『九龍』のころは、そのゲームだけを作っていたので腰を据えて書けましたし、なんだったら、ほかの人が書いたものを書き直したりもしていましたが。かといって、伝奇モノのシナリオを任せられる人もいなくて。『デイブレイク スペシャル ギグス』のシナリオをどうしよう……と思っていたときに、「ああ、そうだ、鈴木さんがいた」と思いついたんです。鈴木さんは、オカルトや霊についての知識が豊富ですから。

鈴木 そういう(霊に関する)話が好きで、霊の本ばっかり読んでた時期がありますからね。それから、昔、池田貴族さん(ミュージシャン、心霊研究家。1999年に亡くなった)といっしょに『霊刻 -池田貴族心霊研究所-』というゲームを作ったときに、霊に関する知識を整理したので、かなり蓄積はあると思います。

――鈴木さんは、既存のシナリオも、デイブレイクシナリオも、どちらも書かれたのですか?

鈴木 そうですね。もともとの『魔都紅色幽撃隊』のシナリオについては、「ここは変えなくちゃいけない」とか、「本当はこうしたかった」という部分に関するリクエストが今井さんから来て、それに合わせて書いていったという感じでしょうか。

今井 シナリオを書き直すのはやりづらかったと思います。ほかの人が書いたものですから。私はそういう場合は、下手に部分だけ直さずに、全部ゼロから書き直しちゃうほうなんで。

鈴木 なかなかたいへんでしたね。残留思念が残ってるんですよ、やっぱり。それをどれだけ引き継ぐのか、あるいは変えるのか。かなりエネルギーを使いましたね。

――具体的に、どんなところを書き直したのですか?

鈴木 設定が投げっ放しになっているところや、伏線が回収されていないところについては、ちゃんと裏の設定まで考えて書きました。あとは、ウンチクの部分ですね。先ほど言った通り、霊に関しては知識をかなり溜め込んでいるので、そういう無駄な知識をいっぱい突っ込ませていただきました(笑)。

今井 『幽撃隊』では、本当は、支我正宗が具体例を出して、霊のことを語らなければいけなかったんですよ。現代劇ならではの裏づけが足りなかった。

――と、言いますと?

今井 わかりやすく言うと、『ガリレオ』の湯川学のような感じで。ある超常現象について語るとき、1800年代に、アメリカのニュージャージー州でこういう事件があって……みたいな。そういうウンチクを支我が言うべきだったのですが、私が霊について勉強する時間がとれなかったので、十分に入れ込むことができなかったんですね。そこが『幽撃隊』の弱い部分でした。伝奇はファンタジーではなくて、虚構と現実の物語ですので、虚構100%じゃダメなんです。現実と虚構が半々じゃないと。

鈴木 私も、つねにそういうところを目指してますからね。現実とニアヒアのところで、「もしかしたらあるかもしれない」と思うようなものを。だからおもしろいんですよね。

今井 『女神転生』も、そのテイストで作られたものでしたしね。鈴木さんのように、虚構と現実をシナリオで書くことができる人が、ゲーム業界にはなかなかいないんですよ。“伝奇”と言いながら、伝奇ではないシナリオがたくさんあるんです。

鈴木 そういうシナリオは軽いですよね、ものすごく。

今井 深さがないんですよね。だから今回は、無理をお願いして、鈴木さんにシナリオを書いていただいたんです。本当にやりづらかったと思いますが。

鈴木 いやいや、楽しい経験でしたよ。たとえば、ヒロインの深舟さゆり。彼女は、もともとのシナリオでは、「ちょっとキツい性格」だなと思ったんですよね。彼女を「ツンデレにしてくれ」というリクエストがありましたので、もとのキツい性格を引きずりつつ書いたら、今井さんから「違うんだ! もっといい女にしてくれ!!」と言われました(笑)。

今井 “性格が悪い”と“ツンデレ”は、違うと思うんですよ。そこもちょっと難しかったですね。

――『デイブレイク スペシャル ギグス』の深舟は、五感入力次第で、けっこうかわいい反応を見せてくれますよね。

鈴木 そのあたりはすごく強化しました。かわいいところを出すように意識しましたね。それから、支我のキャラクターもガッツリ深めましたね。存在感が増したと思います。裏設定とかもかなり作りました。


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――そのほかに、『デイブレイク スペシャル ギグス』のシナリオの中で、手ごたえを感じているのは、どんなところでしょうか。

鈴木 それはプレイしてくださった皆さんに感じてほしいかな、というところはありますね。とくに前作をプレイした人は、「ああ、あれは、こういうことだったんだ!」と感じられるところがあると思います。それから、“白いコートの男”については、ちゃんと設定を入れて、謎が解けるようにしてあります。そこをいかに見てもらうかですね。

――“白いコートの男”は、物語の重要人物ですよね。

鈴木 前作では、彼については“ユーザーに想像してもらおう”というスタンスだったんですけど、もうちょっとわかりやすくしています。

今井 ほかにも、この後、鈴木さんが『幽撃隊』のシナリオを書くならこうなる……という伏線も、いろいろと入っているんですよ。

鈴木 そうですね、ちょっと忍ばせてはいます。1作では終わらないような世界観ですから、だったら伏線をいくつか置いておこう、と。

今井 『デイブレイク スペシャル ギグス』は、鈴木さんと組ませていただく序章だと思うんですよね。今後、『幽撃隊』を新しい形で展開していくなら、シナリオは鈴木さんに書いてもらいたいと思っています。