『ドラゴンズドグマ オンライン』オリジナルサウンドトラック発売記念インタビュー!
PS3、PS4、Windows用の基本無料オンラインオープンワールドアクション『ドラゴンズドグマ オンライン』(以下、『DDON』)。2015年12月9日、『DDON』の魅力あふれる楽曲がたっぷり詰まったオリジナルサウンドトラックが発売された。
※サウンドトラックの詳細は >>こちら<< の記事を参照ください。
このサウンドトラックの発売を記念し、『ドラゴンズドグマ』シリーズの楽曲を手掛ける作曲家・牧野忠義氏にメールインタビューを敢行! うれしい読者プレゼントもあるので、合わせてチェック!
【Q】 牧野さんがゲーム音楽コンポーザーを目指した理由、そしてカプコンに入社され、『ドラゴンズドグマ』の楽曲を担当されることになった経緯などをお教えください。
大学在学中はインディーズレーベル所属のアーティストに対する楽曲提供を行っていたので、初めからゲーム音楽コンポーザーを目指していたわけではなかったんです。
たまたま、エンターブレイン(当時、株式会社アスキー) さんの“第四回 アスキーエンタテインメント ソフトウェアコンテスト”で音楽特別賞をいただいたことがきっかけで、ゲーム音楽に対する興味が湧いてきました。20歳くらいのことです。
そして前職ではサウンドデザイナーという形で楽曲制作、効果音制作、ボイス編集や各種ディレクションの経験を積み、2007年にカプコンに入社したのですが、そのきっかけは2006年に初演されたオーケストラコンサート“PRESS START”でした。そこで『モンスターハンター』の『英雄の証』を聴き、純粋に感動したんですね。それですぐにカプコンに曲を送ったところ、「すぐ来い」と(笑)。
『モンスターハンター』の楽曲の作曲者である甲田雅人さん、柴田徹也さん、ディレクターの藤岡要さんや、コンポーザー仲間の小見山優子さん、『モンスターハンター』や『ドラゴンズドグマ』でもメインサウンドデザイナーを務める北村武さんなど……。カプコンに入社後、長きにわたりいっしょに仕事をさせていただくことになる方々が、その会場には勢揃いしていました。あの“PRESS START”は、僕の人生を大きく変えてくれたきっかけですね。
【Q】 『ドラゴンズドグマ』シリーズの音楽を手掛けるにあたって、作曲される際にとくに意識した点や、シリーズ全体に共通したコンセプト、そして『ドラゴンズドグマ オンライン』にも踏襲されている部分などをお教えください。
シリーズはすでに4作目になりますが、一貫したポリシーは「風や波に混ざる音楽」と「重厚壮大な戦闘曲」のギャップによる感情の導線をしっかり演出することです。
言い換えれば、「寝落ちするレベルの心地よさ」と、「手に汗握る緊張感」になりますが(笑)。最たる例として、普段、環境音に混ざって「鳴っているかわからない」くらいの存在感しかない音楽が、戦闘に入るとザコ戦、ボス戦と徐々にテンションが上がっていき、優勢状態になると『死闘の果てに』という壮大な楽曲に変化する──。
このコントラストが鮮明であるほど、盛り上がりのピークを演出しやすくなりますし、『死闘の果てに』は“処刑BGM”などとも呼ばれ、絶対に失くしてはいけないアイデンティティーとして、『ドラゴンズドグマ』シリーズのファンに浸透しました。
『死闘の果てに』は、もともとブルガリアでオーケストラ収録されたものですが、『DDON』バージョンとしてアーティキュレーション(※音のつながりに表情を付けること)をすべて見直し、最高に盛り上がる部分では今作のメインテーマ『ARISEN“S”』がしっかりと聴こえる構成にして、よりヒロイックにアレンジしています。
シリーズを重ねるごとに、過去作との共存や差別化といった問題が出てきますが、今作の楽曲を作るにあたり、改めて過去曲を見直してみました。
初代『ドラゴンズドグマ』は生楽器主体というコンセプトのもと、『Eternal Return』という抒情的なメインテーマが軸になっています。
『ダークアリズン』では、“黒呪島”のイメージを出すためにシンセサイザーを色味として加えつつ、ストーリーを深く語るボーカル曲『Coils of Light』がダイモーン戦に強い印象を与えました。
『ドラゴンズドグマ クエスト』は、ゲームアプリとしてJRPG的な曲調を足したことで、『パズル&ドラゴンズ』とのコラボにもつながり、ポップな映像と壮大な音楽のギャップが評判にもなりました。
今作で変える部分、残す部分のポリシーはじつは明確で、シリーズコンポーザーとして、やはり過去曲の雰囲気に軸足を置いています。
その軸足があくまで中心となって、シリーズごとの色味を足していく。多くの『ドラゴンズドグマ』シリーズファンの皆さんは、それを音楽に望んでいると思いましたし、ある意味、僕にしかできない最良の選択だと思っています。
【Q】 オンラインゲームである『ドラゴンズドグマ オンライン』の楽曲を作成されるにあたって、コンシューマ版とは意識して変えた部分や、あえて変えなかった部分をお教えください。
今作では“ミュージックディレクター”という肩書もいただいており、楽曲制作だけではなく、全体の演出やシステムの部分も、長期運営に耐えうるものを考える必要がありました。
それまで、僕はオンラインゲームを遊んだことがなかったので、サウンドメンバーみんなで夜な夜な集まり、代表的なオンラインゲームを実際にプレイしてみて、オンラインならではのおもしろさや目標意識、クエストの設計など、半年ほど研究しました。
当初、「コンシューマと大して変わらないだろう」と高をくくっていたのですが、そもそもの基本思想的な部分がまるで違うんですね。
音楽面で気付いたのは、従来の汎用曲・専用曲という棲み分け以外に、レベルデザインによる「頻度」と「心地よさ」がより重要、ということでした。
一度しか聴かない曲、一度しか見ないシーンにコストをかけるより、サイクルとしての基本の遊びを理解したうえで、聴く頻度が高い楽曲に対してより手間をかけてあげたほうが、結果的に全体のクオリティーを高く保てます。
また、戦闘エリアにおいても、あえて静かで印象的な楽曲を仕込んでおくことで、ユーザーがそこに向かうモチベーションを維持しようという考えもあります。
例えば、“異界の狭間”というエリアは、「メインポーンを救いにいく」という目的があるので、黄泉の世界をイメージした神聖な雰囲気の楽曲を書き、戦闘が起きても戦闘曲に切り替わりません。“禊の神殿”は、重要な戦闘がいくつも起こる場所ですが、ダンジョン攻略に時間がかかるので、物悲しい雰囲気の曲にしています。
絵やストーリーだけに引っ張られて、音楽も押し付けるのではなく、プレイする側になって演出を考えていくことが、ミュージックディレクターとしての仕事でもありました。
とはいえ、作曲家として、特別なシーンに対しては一度しか聴かないとしても、専用曲を作ったりもしてしまいました(笑)。効率とこだわりと、いいバランスで制作を進めることができたと思います。
【Q】 『ドラゴンズドグマ オンライン』の楽曲には、過去シリーズでは使用していなかった楽器が使用されているかと思いますが、具体的に「どの楽曲」で「何の楽器を新たに導入したか」をお教えください。また、導入の理由も教えていただけますと幸いです。
今作のコンセプト映像を見たとき、従来のシリーズ作品よりも色彩が鮮やかになって垢抜けた印象を受けたので、この世界観を象徴する、澄んだイメージの音色が出せる楽器を探したところ、“ギリシャブズーキ”という楽器に出会いました。
これは復弦楽器というもので、1コースに2本の弦が張ってあるので、その音程を微妙にずらすことで、透き通っているのに広がりのある音が出ます。日本でメジャーなのは“アイリッシュブズーキ”ですが、それとはまた趣が異なりますね。
ギターと同じ感覚で弾ける楽器ですので、『ARISEN“S”』、『風光~白竜神殿レーゼ~』、『星降る大地~ハイデル平原~』などでは、僕が実際にセルフレコーディングしています。
小ネタですが、この楽器は見た目も世界観に合うという事でモデリングされ、実際にゲーム中にも出てくるんですよ。いろいろな酒場にいる演奏NPCが持っているのがこのギリシャブズーキなので、彼らの奏でる音楽もたまには聴きに行ってあげてくださいね。
【Q】 『ドラゴンズドグマ オンライン』のメインテーマ『ARISEN“S”』についてお伺いします。ゲーム全体を象徴する楽曲とも言える『ARISEN“S”』を作曲するにあたっての構想や、完成までの経緯などをお教えください。
今作には、過去作と似て非なるオリジナルの世界観がありましたし、過去曲の色味だけでは表現できないということも理解していました。
僕にとってもっとも難しい決断だったのは、『ドラゴンズドグマ』のメインテーマ『Eternal Return』という代名詞的に馴染んだ曲を活かすか、断ち切るかの二択でした。
結果として、まったく新しいメインテーマを書くことにしたのですが、そこに価値を見いだせなければ、僕は『DDON』の音楽を作れなかったかなと思っています。
オンラインタイトルとしての形がまだ見えてないころにテーマ曲を書く必要があったのですが、それが本当に相応しいものか、瞬発的に誰も判断できない状況でした。
たくさんの短い「断片」を作っていくなかで、『Main Title』、『白竜神殿』、『黄金郷』などの原型が生まれてきたので、それをさらに昇華して各曲を仕上げながら、最終的にメインテーマとして取り込んでいく……という普段とまったく逆の、いわば長期戦的なやりかたにシフトしたことで、『ARISEN“S”』の構想を固めることができました。
満場一致で「これでいこう!」と決まってからは早かったですし、『ARISEN“S”』をさらにほかの曲に落とし込んでいったときも、しっかりとその存在感を放つ曲になりました。
過去作のテーマ曲とも違う、それでいてノスタルジックでもある、そんなメインテーマに仕上がったのではないかと感じています。
その残骸として、僕のHDDには「シリアス系歌ものARISEN”S”」や「スピード感のあるオーケストラロック系歌ものARISEN”S”」など、いろいろなバージョンのデータが残ってはいます。『Coils of Light』同様、仮ボーカルは僕ですが公開の予定はありません(笑)。
【Q】 牧野さんご自身は、『ドラゴンズドグマ オンライン』を遊ばれていますか。
イン率は高くないですが、もちろんプレイしていますよ!
実際に時間をかけて遊ぶことで、初めて気付けることもたくさんありますし、まったく知らない人とプレイするのもオンラインタイトルの醍醐味ですので、ちょっと緊張しながらチャットしたり(笑)。
また、サウンドのバランスをあえて初期設定のままにして、TVのスピーカーでプレイしているので、ユーザーの皆さんと同じ環境でどう聴こえるのか、今後の参考にしています。
【Q】 先ごろ行われた大型アップデート“シーズン1.2”で新たに追加された楽曲についてお伺いします。“白竜の物語”がいよいよクライマックスを迎えるシーズン1.2の楽曲を作られるにあたり、とくに意識したことや、「シーズン1.2ならでは」というコンセプトはありますか。また、「ここが聴きどころ!」というポイントも教えてください。
オリジナルサウンドトラックのリリース時には、ネタバレ防止の意味で『Extra Track01~09』として曲名を伏せていましたが、ここで初めて、すべての曲名を公開できることになりました!
■初公開! オリジナルサウンドトラックに収録されたExtra Trackの曲名
Extra Track-01 ⇒ 混沌と破滅の使者~ズール~
Extra Track-02 ⇒ ザンドラ禁域戦闘
Extra Track-03 ⇒ メルゴダ護政区
Extra Track-04 ⇒ 託された未来
Extra Track-05 ⇒ 忘失の天都~亡都メルゴダ~
Extra Track-06 ⇒ 黄金郷の住人
Extra Track-07 ⇒ 栄華の残影~亡都メルゴダ 王宮層~
Extra Track-08 ⇒ この上なく単純で美しい世界
Extra Track-09 ⇒ 竜を護る者
これらはすべてシーズン1.2の物語において重要な楽曲です。
冒頭からずっと絡み続けてきた『混沌と破壊の使者~ズール~』、ある人物の行動をきっかけに発生する『託された未来』、そしてたどり着いた人だけが体感出来る『竜を護る者』など、僕も相当な熱量で曲を仕上げていったので、実際にどんなシーンでどの曲が流れるのか、サントラを聴いてくれた皆さんもぜひ実際にプレイして、手に汗握ってほしいと思います。これらの曲名は公式サイトでも掲出されますので、覗きに来てくださいね。
【Q】 最後に、ユーザーの皆さんにひと言お願いいたします。
コンシューマからオンラインに形態が変わったことで、いろいろな捉えかたをされると思いますが、微力ながら、僕が今作も音楽を任せてもらえたことで、シリーズファンの皆さんの安心感になれたかなと、いま少しだけ感じています。
シリーズ最新作として、ファンの皆さんの期待に応えるのはもちろん、オンラインタイトルに一石を投じる楽曲クオリティーだと自負しています。
ぜひ、聴いてみてくださいね!
牧野氏のサイン入りオリジナルサウンドトラックをプレゼント!
牧野氏のサインが入った『ドラゴンズドグマ オンライン』オリジナルサウンドトラックを、抽選で1名の方にプレゼント! 欲しい方は、以下のプレゼントフォームから応募してください。
<注意事項>
◎応募期間は2015年12月31日(木)23時59分までとなります。
◎ご応募はおひとりにつき1回までとさせていただきます。複数応募された場合、重複分は無効となりますのでご注意ください。
◎当選者の発表は、2016年1月中を目途に、賞品の発送をもって代えさせていただきます。
◎賞品の発送先は日本国内に限ります。
◎賞品は、サインを入れるため、開封済みの状態での発送となります。ご了承ください。
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