メーカーの垣根を越えたクロストークインタビュー最終回

 『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』(以下:『PXZ2』)のディレクター:森住惣一郎氏、プロデューサー:塚中健介氏の両名と、各メーカーのクリエイターを交えたクロストークを実施。メーカーの垣根を越えたクロスオーバータイトルの監修時のエピソードや苦労話、見どころをうかがってきた。最終回は『龍が如く』シリーズのプロデューサーを務める横山昌義氏を交えてのクロストークをお届けする。
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『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【最終回】_01
[写真左]バンダイナムコエンターテインメント CS事業部 プロダクションディビジョン 第1プロダクション2課チーフ 塚中健介氏
[写真中]モノリスソフト ディレクター 森住惣一郎氏
[写真右]セガゲームス コンシューマ・オンラインカンパニー 第一CS研究開発部 副部長/プロデューサー 横山昌義氏

ユーザーも驚きのコラボレーションが実現した経緯とは

――まず最初に、横山さんが監修された作品を教えていただけますでしょうか。

横山 僕が監修させてもらったのは、『龍が如く OF THE END』(以下:『OF THE END』)になります。ただ、じつを言うと『OF THE END』はシリーズ中で唯一、脚本を書いていないタイトルなんですよね(笑)。

一同 (笑)。

塚中 いちばん最初に『PXZ2』の打合せをさせていただいたときにも、同じことを言われてましたよね(笑)。

森住 『PXZ2』に桐生一馬と真島吾朗を参戦させようと思ったとき、まず最初にお話をさせていただいたのが横山さんでしたよね。そのときは『龍が如く』シリーズの客演は考えていないとのことでしたが、『OF THE END』ならば問題ないと言っていただけました。我々から提案させてもらったのも、『OF THE END』だったので、ちょうどよかったと思ったことを覚えています。

塚中 『PXZ2』の作品との親和性の高さを考慮した結果、『OF THE END』で声をかけさせていただきました。

森住 ユーザーの皆さんからも「『龍が如く』シリーズは参戦しないんですか」という声を多くいただいていたんです。『OF THE END』も『龍が如く4 伝説を継ぐもの』(以下:『龍が如く4』)までのストーリーをしっかりと追って作られたスピンオフ作品になっているんですよね。

――横山さん的には、『PXZ2』に桐生と真島を参戦させたいと依頼を受けたときは、どんなお気持ちでしたか。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【最終回】_04

横山 僕たちのところはこだわりが強くてうるさいところじゃないかとよく言われるんですが、じつは『龍が如く』シリーズっていろいろなところに出させてもらっているんですよ。自社のなかだと、『三国志大戦』や『戦国大戦』でカードになっていたり、『ファンタシースターオンライン2』や『セガNET麻雀 MJ』などにも顔を出させてもらっていたりと、けっこうお邪魔させてもらっているんです。ですので、「作品をおもしろく作ってもらえるのならどうぞ」というスタンスでお受けしました。

―― 今回はセガさんの社内ではなく、違うメーカーからの客演依頼になりますが、そのあたりについて違いなどはあったのでしょうか。

横山 社内と言っても、違うプロジェクトになると把握できないことも多いです。ですので、社内も社外もあまり変わりはありませんよ。

一同 (笑)。

横山 それから客演に関してですが、コラボレーションに関しては、『龍が如く 見参!』や『龍が如く 維新!』といったスピンオフ作品中心で行っています。連続したストーリー性のあるナンバリング作品に関しては客演的なコラボレーションは行ってません。コラボ扱いであっても公式のお話として捉えられてしまい、結果的に後々の作品で影響が出てしまうかもしれないからなんです。ですので、本編に絡むお話が来た場合は、基本的にお断りさせていただいています。その点、『OF THE END』はスピンオフ系の作品なので、お話をいただいた時点での問題はありませんでした。『OF THE END』は設定が現代で、武器もたくさん出てくるので、じつは汎用性が高い作品なんですよね。ただ、『PXZ2』ではけっこうストーリー面も切り込んでもらっていますよね。コラボ系では、おそらく初めてのことかもしれないです。

森住 桐生と真島を扱わせていただくにあたり、異世界で、さらに人間ではないキャラクターたちとも関わるという、本当ならありえない展開に巻き込まれるので、できるだけキャラクター性を外さないようにしました。いちばん簡単に客演してもらうには、シナリオには参加せず、登場して戦うだけにすればいいんです。ただ、これだとユーザーの方の期待を裏切ることになりかねませんし、普段見られない組み合わせを楽しめるのが『PXZ2』の魅力でもあるので、きちんと設定を踏襲しつつシナリオに参加させ、なおかつ多少踏み込んだ書き方もしています。そのため、「どんな返答が戻ってくるんだろう」と思いながら、シナリオを提出していました。

――いま森住さんが話したように、『PXZ2』ではシナリオ面でも踏み込んでいるそうですが、それでもOKを出された理由はどこにあったのでしょうか。

横山 いちばんの理由は『OF THE END』だということですね。『OF THE END』は『龍が如く4』のあとに登場しているので、話的にも繋がっているようにも見えますが、厳密に言ってしまうと前後のエピソードはない作品なんですよ。ですので、『OF THE END』の桐生一馬と真島吾朗がやっていることの範囲内であれば問題ないということです。

森住 そういった意味でも、『OF THE END』があって本当によかったです(笑)。

横山 監修していて思ったんですが、『龍が如く』シリーズのことをよく理解されていますよね。すごくビックリしました。他社の作品をここまで掘り下げてもらえるというのは、すごいなと思いましたよ。僕はほかのゲームのシナリオをここまで書くなんて絶対にできないですからね(笑)。世界観を押さえつつ、キャラクターのことをしっかりと料理していただきました。

森住 そういっていただけると、長年この仕事を続けてきてよかったなと思います(笑)。

横山 これなら、『龍が如く』シリーズのファンにもすんなりと受け入れてもらえそうですよね。

――森住さん的にも、『OF THE END』を参戦させるなら、こんな絡みをしたらおもしろいなという考えはあったんですか。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【最終回】_03

森住 すでに配信している体験版で遊べますが、『逆転裁判』シリーズとの絡み、いわゆる弁護士とヤクザという、よくありそうな組み合わせを最初に思いつきました。これは僕の頭のなかで思い描いた設定になりますが、真島が『龍が如く4』で東城会の罠にはまったとき、弁護をしたのがナルホドくんというイメージで、シナリオを書かせていただきました。とうぜん、公式に描かれていることではありませんが、こういった設定を思い浮かべると、キャラクターが勝手に話をしてくれるようになるんですね。

――『逆転裁判』シリーズのキャラクターとはうまく絡めることができたということですね。

森住 『PXZ2』のなかでは、けっこう仲がいいんです(笑)。それから、『ストリートファイター』シリーズの春麗や、『ベア・ナックル』シリーズのアクセルといった警察官も登場するので、彼らの活躍を見てお馴染みの伊達刑事のことを思い出してみたりと、こういった元のストーリーの掘り起こしも書かせてもらいました。

塚中 今回、『OF THE END』が登場することはプロモーションの初期の頃に公表させていただきましたが、かなり大きな反響をいただいたと思います。

横山 それ本当ですか。

森住 ユーザーの方たちも、『PXZ2』に桐生と真島が登場するとは想像してなかったんだと思います。以前から「許可がおりないだろう」といった声もよく耳に入っていましたからね。

横山 そんなに厳しくしてるつもりはないんですけどね。グミになっていたこともありますし。

一同 (笑)。

横山 今回のようなお話をいただくときに、いつも引っかかっているんですが、こいつらってそんなに有名なんですか。

森住 何を言ってるんですか(笑)。

横山 これまでずっと『龍が如く』シリーズを作ってきていますが、僕はキャラクタービジネスとしては捉えていないんですよ。桐生や真島って、普通の人ですからね。もちろん、『龍が如く』シリーズのイベントにこられるようなファンの方たちにすごく好かれていることはわかっているんですが、それ以外の人たちには名前すら知られていないんじゃないかって思ってるんです。だからこういったお話をいただくと、「え、こいつらで構わないですか?」って聞くんですよ(笑)。

森住 こちらとしては、全然構いません(笑)。

横山 『龍が如く』って名前には知名度があるかもしれないけど、今回のようなお話があると、「このキャラクターたちで大丈夫かな」っていつもドキドキしますからね。だから、反響があったと聞いて、少しは安心できました。

――このふたりが揃って違う作品に登場するって聞いたら、誰もが驚くと思いますよ。

横山 桐生は主人公なので露出も多いですし、もしかしたらそれなりに知られているかもしれませんが、真島に関して言えば「誰も知らないだろ」って考えますからね。そもそも、こいつらってどこかゲーム業界になじんでいないような気がしていたんですよ。でも、これで仲間に入れましたよね(笑)。

――たしかに、ふたりとも硬派すぎるイメージがありますからね。ほかの作品やキャラクターと絡むイメージはこれまであまり思い浮かべられませんでした。

横山 実際、ゲーム系のイベントにもあまり呼ばれないですからね。

森住 反対に、そこが人気の秘訣でもありますよね。『龍が如く』シリーズの登場人物って、ゲームのキャラクターというより、現実寄りの存在じゃないですか。作品のテーマもそうですが、現実世界のなかで奮闘する劇画タッチの世界観が受けているんでしょうね。『PXZ2』のなかでも、ゲームキャラクターとして染まりきっていない存在だからこそ目立っていると思います。