現役チャンピオンが最新作『Halo 5: Guardians』を語り尽くす!

 『Halo 5: Guardians』(以下、『Halo 5』)は国内で2015年11月29日に発売されたXbox OneのFPS(ファーストパーソンシューター)で、コンシューマーFPSの金字塔『Halo』シリーズ最新作である。

 Xbox Oneでは『Halo』シリーズの作品をまとめた決定版として『Halo: The Master Chief Collection』がすでに発売されているが、ナンバリングタイトルとしては『Halo 5』が初のタイトルとなる。 前ナンバリングタイトル『Halo 4』の発売から約3年、『Halo』シリーズはプラットフォームをXbox Oneに移し、どのような進化を遂げたのか。キャンペーンとマルチプレイはもちろん、その周辺のシステムやバックグラウンドにまで踏み込んだレビューをお届けする。

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※『Halo 5: Guardians』マルチプレイモード“Arena”プレイインプレッション 原点回帰しつつトレンドも追求した新時代のFPS

『Halo 5: Guardians』インプレッション キャンぺーン、マルチプレイともにシリーズ中でも群を抜いたクオリティー 日本チャンプのプレイ動画も必見_01

ついに動き出した新3部作“リクレイマー・サーガ”

 『Halo 5』のキャンペーンは、『Halo 4』から始まった新3部作“リクレイマー・サーガ”の2作目となる。『Halo 4』について少し言及しておくと、基本的には過去の『Halo』シリーズと差別化させるために作品で、新3部作としての大筋のストーリーは見えてこなかった。あくまで『Halo 4』は、リクレイマー・サーガの壮大なプロローグとしての位置づけだ。そして、『Halo 5』ではついにそのストーリーが動き出す。ふたりの主人公がそれぞれの信念を胸に、真実を追う旅に出るのだ。

ストーリー
 新たな脅威が銀河系、そして人類の居住する惑星コロニーに迫っている。
 そんな時、突如として軍の命令に背き失踪したマスターチーフ。彼は自身の率いるブルーチームとともに消失したはずのAIコルタナを追っていた。軍のマスターチーフへの信頼が揺らぐ中、エージェントロック率いるオシリスチームが追跡を開始する。

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マスターチーフ
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スパルタン ロック

 『Halo 5』では、AIコルタナを追うマスターチーフと、彼を追うエージェント ロック。ふたりの視点で物語が進んでいく。ふたりの主人公といえば、『Halo 2』のマスターチーフとアービターを思い出すファンも少なくないだろう。『Halo 5』のストーリーの特徴は“軍に所属するふたりが異なる信条でそれぞれのミッションを遂行していく”という点だ。

 異なる信条という点で見ると、マスターチーフは『Halo 4』から始まるリクレイマー・サーガから随分とキャラクターが変わっている。以前のマスターチーフなら軍の命令に背き、一方的に失踪を遂げるなどということは考えられなかったはずだ。逆にエージェント ロックは軍に忠実で、その行動基準においては過去のマスターチーフを彷彿させる。

 新たな脅威にふたりの主人公が立ち向かい、その真実を追うというのはいままでになかったアプローチで、ファンはもちろん、新しく『Halo』シリーズに触れるプレイヤーも興奮できるストーリー構成となっている。

キャンペーンはチームワークが攻略のカギ

 『Halo 5』では全編に渡って4人1組のチームで動くことになる。新しいシステムとして、味方の復活が可能となった。敵に攻撃を浴びせられ、倒されてしまっても、一定時間内に味方が助けに来てくれれば復活できる。このシステムによって、より味方との連携が重要となった。

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▲味方にアーマーのシールドをリチャージしてもらうことで復活が可能。

 また、味方に簡単な指示を出すことができるようになった。たとえば、落ちている武器に照準を合わせて指示を出せば、味方がその武器を拾いに来てくれる。乗り物に指示を出せば運転を始めてくれるし、適当な場所に指示を出せばそこを制圧してくれる。直感的に指示が出せるので、かなり使い勝手がいい。

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▲攻撃目標を指定することで一気に敵を撃破することもできる

 これらのシステムはマルチプレイには存在しないが、キャンペーンで覚えた距離感や味方を見る癖はマルチプレイでも活かせるので、『Halo』シリーズを初めてプレイするならば、まずはキャンペーンのクリアーを目指してみよう。

“難しさ”を“奥深さ”に置き換えたスキルランクシステム

 『Halo』シリーズのマルチプレイは“ストイック”や“硬派”といった言葉で表現されることが多い。この点をどう受け止めるかはプレイヤーの好み次第ではあるのだが、かなり人を選ぶFPSであるというのが筆者の見解だ。

 プレイヤーの操作するスパルタン(特殊なアーマーを身にまとった兵士)は高い体力を持っているので、長時間の撃ち合いが必要になる。そのため、エイミングの難易度が一般的なFPSに比べて高い。また、マップに一定時間でドロップする強力な武器を争奪しながら戦うのも敷居を上げている点だろう。Halo 5に関しては、前者は変わらずで、後者は初心者向けの変更がされている。どのような変更かというと、武器がドロップする前にアナウンスが流れるようになった。このアナウンスのおかげで、初心者でも武器がドロップする前にその地点へ向かうことができるようになっている。ちなみに、以前は武器のドロップする時間を頭で覚えて向かう必要があった。

 とはいえ、この変更だけでは初心者にお勧めできない。相変わらず難しいFPSであることに違いはなく、FPSに限らず難しいゲームというものは初心者と上級者の差が広がりやすいからだ。

 だが心配しないでほしい。『Halo 5』では初心者と上級者、少なくとも圧倒的なレベル差のあるプレイヤーはマッチングしない。それが『Halo 5』で導入されたスキルランクシステムだ。最初の10マッチでプレイヤーのスキルランクを測定、以降は近いスキルランクのプレイヤーどうしがマッチングするというシステムだ。上達すればスキルランクは上がるし、逆に最初の10マッチが過大評価であれば各スキルランクの最下層から抜け出すことはできない。

 このシステムのおかげで、プレイヤーは手に汗握る試合を楽しむことができる。近いスキルランクのプレイヤーと切磋琢磨しながら、モチベーションを絶やさずにプレイできるのだ。

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▲最初の10マッチが未完了の状態
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▲最初の10マッチを完了した状態。ちなみにオニキスは最高スキルランク帯のひとつ手前

スタイリッシュなアビリティが従来のイメージを一新

 従来の『Halo』はシンプルなアクションでまとめられており、よく言うならわかりやすく、悪く言うなら地味といったものだった。『Halo 5』ではスタイリッシュなアビリティ(特殊能力)が追加されており、すべてのプレイヤーに標準装備されている。『Halo 4』のアビリティはアンロックしてから好みのものを装備する形式だったが、『Halo 5』ではすべてのプレイヤーが最初から同じアビリティを装備しているため、ゲームの進行度合いによる差はない。アビリティは昨今のトレンドを意識しており、ゲームスピードをかなり早くしている。

 以下、アビリティの簡単な説明だが、イメージしづらいものに関しては画像を載せておいた。

スラスター
 前後左右へ瞬時に移動できるアビリティ。敵を追い込んだり、敵から逃げる際に使用できる。銃弾の回避や近接戦闘時にトリッキーな動きをして敵を惑わすこともできる汎用性の高いアビリティだ。

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クライマー
 ジャンプで乗り越えられない高さの塀をよじ登ることができるアビリティ。

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スライディング
 ダッシュから姿勢を低くして滑り込むアビリティ。敵の足元に滑り込んだり、咄嗟に遮蔽物に隠れる際に使用できる。

スマートリンク
 武器とアーマーの機能をリンクさせて照準を表示するアビリティ。一般的なFPSでいうところのADS(Aim Down Sight)やズームに該当するものだ。

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グラウンドパウンド
 『Halo 5』の花形アビリティ。上空から拳を地面に叩き付け、衝撃波を発生させる。その威力は高さによって上下するため、できるだけ高所から発動するか、弱った敵を衝撃波で倒すように使用するのがコツだ。外した際の隙があまりに大きいため、基本的には敵に気づかれていないシチュエーション、かつ1対1の場面で発動しよう。

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発売直後とは思えないほど高水準のゲームバランス

 通常は半年~1年ほどかけてゲームバランスを改善していくのだが、『Halo 5』は発売直後にも関わらず、高水準のゲームバランスを誇っている。実は、海外の『Halo』シーンで活躍する“プロゲーマー“が343 Industriesとともに開発を行っているのだ。日本のトッププレイヤーの意見も参考に聞いてみたが、「武器バランスは限りなく完璧に近い」との答えが返ってきた。確かに、どの武器もシチュエーションによって使い分けることで強みを発揮できるようになっている。

ストイックなマルチプレイを堪能できる競技志向のArena

 Arenaは先述の通りスキルランクシステムが導入されているため、自分のレベルにあわせたマルチプレイを楽しむことができる。自分と近い実力のプレイヤーとマッチングされるため、少しずつ上達できるのが魅力だ。

 今回はArenaの対戦動画を収録した。アビリティもできる限り使ってみたので、プレイの参考にしてほしい。

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 Arenaは先述の通りスキルランクシステムが導入されているため、自分のレベルにあわせたマルチプレイを楽しむことができる。自分と近い実力のプレイヤーとマッチングされるため、少しずつ上達できるのが魅力だ。

 今回はArenaの対戦動画を収録した。アビリティもできる限り使ってみたので、プレイの参考にしてほしい。

 さらに、『Halo 5』では新たなルールが追加されている。そのうちのひとつであるブレイクアウトは従来の『Halo』にはなかったアプローチで作られたルールだ。ブレイクアウトは1ラウンド1ライフ、5ラウンド先取のルールで、敵を全滅させるか、マップ中央に配置されたフラッグを敵の陣地まで運べば勝利となる。1ラウンド1ライフのルールはこれまでになかった緊張感を演出してくれるし、1ラウンド2分というのもテンポがよくて遊びやすい。基本的に人数差が生まれると圧倒的不利になるルールなので、味方との連携と個人技の両方が重要視されるルールだ。

三陣営が入り乱れる大人数のお祭りゲーWarzone

 Warzoneは『Halo 5』から新たに追加されたモードで、東西に分かれる基地を占拠し、敵のパワーコアを破壊するのが目的だ。12対12の計24名のプレイヤーに加え、キャンペーンで登場したコヴナント、プロメシアンも第三勢力として登場する。

 また、『Halo 5』には徴発というシステムが存在しており、Arena、Warzoneをプレイすると獲得できる徴発ポイントと引き換えに、Warzoneで使用できるカードをランダムで入手できる。このカードはWarzoneのマップ上に点在する徴発ステーションで武器や乗り物と交換できるのだ。

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▲プレイ時間を確保できない人は現金で購入することもできる
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▲カードのレアリティは高いほど強力な武器となる
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▲徴発ではWarzoneで使えるカード以外に、ウェポンスキンや、外観をカスタマイズする装飾品も入手できる

マルチプレイ ファン待望の観戦モードが導入

 『Halo 5』では『Halo』シリーズ初となる観戦モード(スペクテーターモード)が導入された。完全なリアルタイムでの観戦はできないが、30秒程度のディレイでシアターモードと同じ機能がすべて使える。全員の一人称視点、三人称視点、フリーカメラはもちろん、早送りや巻き戻し、一時停止もできる。大会の実況解説時に役立ちそうな機能だ。上級者のプレイを見て勉強たり、フレンドとチャットしながら酒のつまみに観戦するのもいいかもしれない。

新たなスタートを切った343 Industriesの『Halo』シリーズ

 『Halo 5』はキャンぺーン、マルチプレイその両方において高い水準を保ってきた『Halo』シリーズの中でも群を抜いている。全体的に素晴らしい、と言ってしまえば薄っぺらく聞こえるかもしれないが、その通りなのだ。

 『Halo』の十数年に及ぶシリーズ展開はまさに盛者必衰の歴史である。偉大なBungieから343 Industriesに受け継がれて開発された『Halo 4』は過去作と比較され、コミュニティから最高の評価を受けることができなかった。Bungieの残した遺産である『Halo』を以前と同等かそれ以上のもので提供できなかった343 Industriesに、コミュニティは冷ややかだった。

 筆者は343 Industriesが『Halo 5』でコミュニティの十分満足いくものを提供したように思う。評価サイトや国内外のコミュニティの声を聞いても、『Halo 5』の評価は以前のそれと同等かそれ以上のものだ。

 いまや『Halo』の一大コミュニティツールとなったTwitterで、毎日のように流れる“WeBack”のハッシュタグを見ながら、『Halo』シリーズの新たなスタートを筆者はとても嬉しく思う。

■筆者紹介 VEXATION ベクセイション
『Halo』シリーズの現日本チャンプ。攻めるゲーマーのアイウェア“GUNNAR”オフィシャルアンバサダー。