富野監督「ロボットの実現は、リアリズムでものごとを考えるための礎になる」
本日2015年10月26日、秋葉原UDXシアターにて“ガンダム GLOBAL CHALLENGE PRESENTATION 〜第一次選考発表会〜”が開催された。
“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”とは、『機動戦士ガンダム』生誕40周年を迎える2019年に、18mの実物大ガンダムを動かし、一般公開することを目指すプロジェクト。2014年7月より一般公募でアイデアを募集しており、今回、第一次募集の審査結果が発表された。以下より、その模様をお届けしよう。
【登壇者】
SUGIZO氏(LUNA SEA、X JAPAN)
ガンダムGLOBAL CHALLENGE代表理事、サンライズ 代表取締役社長 宮河恭夫氏
ガンダムGLOBAL CHALLENGE理事、創通 代表取締役社長 青木建彦氏
チーフ・ガンダム・オフィサー、バンダイ 取締役会長 上野和典氏
バンダイナムコホールディングス 代表取締役社長 田口三昭氏
『機動戦士ガンダム』総監督 富野由悠季氏
ガンダムGLOBAL GHALLENGE技術監修、早稲田大学副総長・理工学術院教授 橋本周司氏
中京大学工学部教授 ピトヨ ハルトノ氏
ライゾマティクス代表取締役 齋藤精一氏
映画監督 本広克行氏
■リアルエンターテインメント部門の発表
“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”では、2014年7月から2015年2月まで、18mのガンダムを実際に動かす“リアルエンターテインメント部門”と視覚効果を利用して仮想空間で動きを再現する“バーチャルエンターテインメント部門”の 2部門でアイデアが募集されていた。
今回はバーチャルエンターテインメント部門の該当者はいなかったが、富野由悠季氏、橋本周司氏などの外部有識者を含む選定委員“ガンダム GLOBAL CHALLENGE リーダーズボード”による厳正な審査を経て、リアルエンターテインメント部門の受賞アイデアが決定した。
宮河恭夫氏によると、募集人数の比率は国内と国外で3:1であったという。上野和典氏はこのことを受けて、本プロジェクトが世界中で話題になっていること、その期待度の高さを感じているそうだ。青木建彦氏氏は「今後は受賞された方々が、“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”のメンバーになります。ご期待ください」と語った。
リアルエンターテインメント部門の受賞者は、以下の4名となった。それぞれのコメントともに紹介しよう。
◆奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科博士後期過程 金子裕哉氏
「ガンダムとザクに相撲をとらせて四脚にした自立歩行(または足を上げて一歩踏み出し)の実現」
コメント:
私にはふたつの夢がありました。それは、富野監督にお会いすることと、ガンダムを動かすことです。そのひとつはこうして叶いましたし、ガンダムを動かすことはこれから叶えられるということで、これほどうれしいことはありません。これまで私は『機動戦士ガンダム』に消費者として接するだけでしたが、今回は作る側として、恩返しができたら幸いです。
◆Chiang国立台湾大学 准教授 Ming-Hsun氏
「ロボットが人間のような歩行を実現するための、ヒューマノイドロボット歩行に関連する新しいメカニズムの実現」
コメント:
『機動戦士ガンダム』が生まれて40周年という年に、このプロジェクトに関わらせていただくという機会をいただき、大変光栄に思っております。家族、指導してくださった先生にも、お礼を申し上げます。
◆ロボフューチャー 代表取締役 木原由光氏
「外部動力供給式軽量型ガンダム独立歩行システム」
コメント:
この“ガンダム GLOBAL CHALLENGE”の計画を聞いたときから、ぜひ参加したいと考えていたので、本当にうれしく思っております。ぜひ貢献していきたいです。
◆東京大学情報システム工学研究室 岡田彗氏(研究発表会のために欠席)
「ガンダム・リサーチ・オープンプラットフォームの開発」
青木氏からは、ガンダム GOLOBAL CHALLENGE認定書、SUGIZO氏からは50万円の報奨金の目録が贈られた。
SUGIZO氏 僕は小さなころからSF少年で、『機動戦士ガンダム』にもハマっていました。僕らが見ていた夢が、いま現実化してきているという実感があります。現実の世界にはいろいろな問題が山積みではありますが、こうした夢をひとつひとつ現実に結び付けてくれる方々に、明るくて美しい未来、平和な世界を具現化してくれたらうれしく思います。ガンダムとこの世界のために、引き続き研究をよろしくお願いします。
■巨大ロボットを動かすのはバカバカしいこと!?
ここからは、富野監督を含む選定委員“ガンダム GLOBAL CHALLENGE リーダーズボード”たちによる、トークの模様をお届けしよう。
本広克行氏 ようやく“ガンダム GLOBAL CHALLENGE ”の第一歩が終わったところです。アイデアはそれぞれ楽しく審査させていただきましたが、いかに実現が難しいかということも痛感しました。
金子さんのアイデアは、ふたつのロボットを組み合わせるという、シチュエーションにより問題を回避していくというものでした。
Mingさんは、ロボットの中の機構を工夫することで、18mのサイズを実現できる可能性を考えていただきました。
木原さんは、Mingさんとは対照的に、外に補助する機構を作ることでの解決方法を提案してくださいました。
岡田さんにはロボット開発のこれからのスタンダードと、これからの『ガンダム』のためにはどうすればいいかということまでも見据えていただきました。
こうして18mのガンダムの開発の実現に、もっとも近い方に集まっていただきましたが、まだまだ不十分ではあります。これから、皆さんといっしょ考えていければ幸いです。
ピトヨハルトノ氏 私は、いろいろな知り合いの専門家から「こんなものは、できるわけがない」と言われてしまいました。なにせ、6階建ての建物に匹敵するサイズのものを歩かせるというのですから。しかし、そうした無謀なところもあるからこそ、CHALLENGEという言葉がふさわしいと考えています。いままでは紙の上でのアイデアでしたが、今後は実現していくために、いくつかのブレイクスルーが必要です。4人の素晴らしい仲間へ迎えることができましたので、なんとか実現して、ガンダムが動くことを期待しています。
齋藤精一氏 “ガンダム GLOBAL CHALLENGE ”が、プロジェクトだけでできるかといえば、そうではありません。ハルトノさんが言ったように、プラスアルファで環境や演出など、ふたつ3つはブレイクスルーがないと実現ができない状況です。これからは、地に足が着いた段階に向かえればと思いますので、内外の方たちに、引き続きアイデアをご応募いだきましたら幸いです。
富野由悠季氏 僕は少年雑誌の特集で、ロボットの運用の面倒くささを本能的に知ってしまった子どもだったので、絵空事でロボットの実現を考えている人たちが大嫌いでした。しかし、ロボットの実現は夢とロマンに溢れていますし、それを考えることは、リアリズムでものごとを考えるための礎になると考えています。
いまでは技術によりある程度のことがごまかせてしまいます。人型の巨大なものを動かすということは、工学的にどれほど難しくてバカバカしいことなのでしょうか。それでも、ガンダムが動くという、おめでたい姿を見せてほしいです。それがどうなるのかはすぐわからなくても、子どもたちが何かを示してくれるかもしれません。そうした遊びごとを具体的に叶えるということと、「やってみせる」ことはとても大切です。