『プチコン』初のファンイベント

 2015年10月17日、スマイルブームが提供するニンテンドー3DS用ソフト『プチコン3号 SmilleBASIC』(以下、『プチコン3号』)のファンミーティングが、東京堂ホール(東京都千代田区)にて行われた。Wii U版『プチコンBIG』の発表や、『プチコン3号』の、バンダイナムコエンターテイメントのカタログIPとのコラボレーションなどが発表されたイベントの様子をお届け。

 『プチコン3号』は、ニンテンドー3DSでBASICプログラムを作成可能なダウンロード専売ソフト。2014年11月に発売されて以来、カジュアルなゲーム制作環境を求めるユーザーを中心に、着々とファン層を広げています。今年7月には、プチコン大喜利(スマイルブーム主催のプログラムコンテスト)の各部門受賞作を収録したゲーム集『プチコンマガジン 創刊号』がリリースされるなど、コンシューマーゲームソフトのラインアップの中で、独自のポジションを確立しつつあります。
 そんな『プチコン3号』初のファンイベントが、神田神保町は東京堂書店のホールで開催されました。事前登録した来場者には、『スマイルベーシックマガジン 創刊準備号』と銘打たれた冊子や特製缶バッチなどが配布されました。

ハカセによる『プチコン3号』最新情報発表!

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 まずは、スマイルブーム社長の小林貴樹氏……のかわりに、『プチコン3号』のイメージキャラクター“ハカセ”が登場しました。プチコン大喜利の結果発表動画などでおなじみのハカセですが、公の場に出るのは今回が初めてとのこと。いささか走り気味ながらも、小林氏の代役として、『プチコン3号』関連の5つの最新情報発表を行いました。

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 バンダイナムコエンターテインメントのカタログIPオープン化プロジェクトとのコラボの話題の際には、「テレビゲームのルールの根幹を学ぶテーマとして、ナムコさんのこの時代のものがわかりやすいと思います」と、カタログIPタイトルをよく知らない若者向けにもきっちりとアドバイスする小林氏……もとい、ハカセでした。

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▲仮装用ではない、本物の白衣を身につけて熱弁するハカセ。メガネやヒゲを落としても、動じずに対処していました。
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▲ステージ後方には、発表内容にちなんだ実機デモが展示されていました。それぞれの開発に携わったスタッフがブースに常駐し、来場者からの質問に応えていました。

開発者トーク(1)『SOLID GUNNER』開発秘話

 トークセッションのコーナーでは、『プチコンマガジン 創刊号』に収録されているオリジナル縦スクロールシューティング『SOLID GUNNER』のプログラマー、長谷川豪氏が、制作秘話エピソードを披露しました。グラフィック素材がすでにある状態で、「ニンテンドー3DS独自の機能を使ったシューティングゲームを作ってほしい」とのオーダーを受けた長谷川氏がまず試したのは、タッチスクリーンのスライダーを動かして、ショットの角度を調整するという独創的な操作システム。しかし、操作に爽快感がなく、長時間プレイでは手が痛くなることから開発を断念。シンプル操作で爽快感を重視した、現行のスタイルに方向転換したとのことです。

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 その一方で、開発工数の削減には、『プチコン3号』の機能・性能をフル活用。敵編隊の軌道パターン作成用に、ランダムで打った点を結ぶ曲線のパラメータを求めるプログラムを組み、その中から選んだ曲線の座標列データを、別のスロット(※別個のプログラムを格納・実行できる単位。『プチコン3号』には4つのスロットが用意されている)に、スプライトアニメーション用データとして出力したり、各ステージの背景グラフィックをユニットパターンだけ定義しておいて、ステージ開始時にランダム配置するなど、「プロージャルで必要な各種データを得るというモダンな制作方法」(長谷川氏)を全般的に採用したとのことです。
『プチコン3号』を実際に使ってみての感想として、制作に必要なツールがすぐ作れること、スプライトの衝突判定関連の処理が構文としてあらかじめ組み込まれていることなどを評価した長谷川氏。作ったものをニンテンドーeショップでリリースできることもふまえた上で、「2Dベースのゲームのミドルウェアとしての可能性を感じました」と締めくくりました。

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▲セッション中、『SOLID GUNNER』のステージ3の背景生成ルーチンにバグがあることを明かした長谷川氏。同作品のソースコードがオープン化されたことにちなんで、「皆さんでそれぞれ直してみてください(笑)」と明るくコメントしました。

開発者トーク(2)『プチコン3号』のヒ・ミ・ツ

 続くトークセッションでは、『プチコン3号』のサウンド、エディタ、UI以外の部分をほぼひとりで開発した、“隊長”こと細田洋一氏が登壇。SmileBASIC(『プチコン3号』で使用できるBASIC言語)の内部処理構造の解説や、開発こぼれ話を披露しました。

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 『プチコンBIG(仮)』の補足情報では、『プチコン3号』との互換性の高さを強調。現行の開発バージョンでは、『SOLID GUNNER』を無修正で起動できたそうです。ハードウェアの仕様が異なるマイクに関しては、専用の命令が追加され、通信関連の命令は諸事情によりカットされるとのことです。
 そのほかにも、2画面表示(外部モニター+GamePad)と1画面表示(GamePadのみ)の切り替えや、外部モニターにニンテンドー3DS本体の上下2画面を同時に表示する機能などが実装予定であることが明かされました。

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▲開発中の『プチコンBIG(仮)』上で起動する『SOLID GUNNER』。展示バージョンでは、十字キーや、USBキーボードによる自機の操作にも対応していました。

参加者の情熱が伝わるライトニングトークコーナー

 イベント来場者が、5分間の制限時間内で、自身の作品や活動を自由にアピールできる、ライトニングトークコーナーには、13組が参加しました。その顔ぶれは、プチコン大喜利の部門受賞者、『プチコン3号』を使った動画投稿職人、『プチコン3号』を電子工作と連動させるツワモノ……など、じつに多彩。『プチコン3号』およびニンテンドー3DSの、ホビーユース・コンピュータとしての汎用性の高さを垣間見ることができました。
 印象的だったのは、10代の登壇者が目立ったこと。同じ部活(陸上部)のメンバーでRPGを制作中の高校生チームや、Scratch(※米MITメディアラボが開発した子供向けプログラミング学習環境)で制作したゲーム(?)をSmileBASIC用に移植した女子中学生など、『プチコン3号』が若年層にもしっかり届いていることを再認識しました。

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▲有償コンテンツの第一弾としてリリース予定の『高度サウンドユニット(仮)』を開発した、スマイルブームの藍圭介氏(右)もライトニングトークコーナーで登壇。実機によるデモは制限時間内にできなかったのですが、展示ブースで来場者に個別で対応していました。

第2回開催にも期待!

 イベントの最後には、来場者全員参加のじゃんけん大会が催されました。ハカセとのじゃんけん勝負に勝ち残った3名が、ニンテンドー3DS用ソフト(スマイルブームととくに関係ないタイトル)や、スマイルブームご当地の北海道みやげを受け取りました。

 はしゃぐハカセと、そんなハカセに冷静なツッコミを入れるスマイルブームスタッフの軽妙(?)なやりとりが独特の和みムードを作ったイベントは、無事終了。次回の開催時期や場所については未定ながら、スタッフ(とくにハカセ)は意欲的でした。

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▲コーナー間の休憩時間では、来場者と積極的に交流を図っていたハカセ。ライトニングトークコーナーをきっかけに、来場者どうしの交流も盛んにに行われていまいた。