「もっとも高いバリュー(価値)を、Xbox Oneから提供したい」

 年末に向けての数々の施策が明らかとなった“Xbox One 大感謝祭 2015”。ここでは、同イベントに合わせて来日したマイクロソフトスタジオ コーポレート・バイス・プレジデント クドー・ツノダ氏へのインタビューをお届けしよう。ファーストパーティータイトルの開発を取り仕切るマイクロソフトスタジオだが、今後のXbox Oneでの戦略はどうなる?

マイクロソフトスタジオのトップ、クドー・ツノダ氏に聞く! すべての条件が揃ったXbox Oneは、いまが買い時_04

マイクロソフトスタジオ
コーポレート・バイス・プレジデント
クドー・ツノダ氏

シリーズ作から新規IPまで、とにかくタイトルが充実

――今年のXbox Oneのタイトルラインアップは、“史上最強”だとアピールされていますが、現時点での手応えをお教えください。
クドー とても大きな手応えを感じています。とくに、Xbox One専用タイトルが人気です。『Rare Replay』と『Forza Motorsport 6』は販売本数も好調ですし、ゲームの評価も極めて高いです。この後には、『Halo 5: Guardians』や『Rise of the Tomb Raider』などが控えていますので、さらに楽しみにしています。

――ソフトの充実は、マイクロソフトスタジオの注力の賜物?
クドー 2013年11月に欧米でXbox Oneが発売されてから今年で3回目のホリデーシーズンとなるわけですが、つねに「もっとも高いバリュー(価値)をXbox Oneから提供したい」ということを念頭に置いてきました。その成果が、この年末にかけて出てきたとは言えるかもしれません。とはいえ、Xbox Oneのラインアップは2015年がピークというわけではありません。2016年には『Quantum Break』や『Scalebound(スケイルバウンド)』、『ReCore』などのタイトルが続々と控えています。

――新規オリジナルIP(知的財産)が充実していますね。
クドー シリーズ作としては、2016年には『Gears of War 4』や『Crackdown 3』(仮題)などがありますよ。私たちは、新しいIPと既存シリーズのバランスはつねに考えています。ファンの方に本当に愛していただいているシリーズ作は大切にしていきたいですし、一方でイノベーション(革新性)が感じられる新しいIPをファンの皆さんのために作っていくつもりでいます。日本での発売が2016年4月7日に決まった『Quantum Break』は、そんな“イノベーション”が感じられる最適なタイトルだと自負しています。本作は、ゲームとライブアクション(※)のミックスになっています。ゲームを楽しみつつ、ライブアクションに切り替えられるんです。ゲームプレイはあくまでも主人公であるヒーローの視点ですが、ライブアクションではヴィラン(悪役)のストーリーが展開される。より深みのある世界観が堪能できるようになっているんですね。新しいIPに新しいテクノロジー、そしてイノベーション。こういったものを打ち出していかないと、ファンの方に満足していただけないと思っています。

※ライブアクション……映画やテレビなどの特殊撮影。実写とアニメーションやCGを同一画面で合成する手法のこと。

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▲『Quantum Break』。

――『Scalebound(スケイルバウンド)』や『ReCore』など、日本人クリエイターの手になるタイトルがラインアップされているのもうれしいところです。
クドー マイクロソフトスタジオでは、日本のクリエイターさんをとてもリスペクトしています。日本のクリエイターさんは、本当にすばらしい仕事をしてくれます。キャラクター造詣にすぐれていますし、ゲームプレイのスタイルも秀逸です。そして、キャラクター性とゲームプレイが高いレベルで融合しているんです。そのブレンドがすばらしいからこそ、豊かな感情が喚起される。神谷(英樹)さんや稲船(敬二)さんとは、これからもいっしょに仕事をしていきたいと思っていますし、さらにほかの日本のクリエイターさんと新たな協力関係を築くのも、今後は必須だと認識しています。

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▲『Scalebound(スケイルバウンド)』。

――ほかにも日本のクリエイターとのコラボを予定していると?
クドー 話し合いの機会はつねに持っています。ただ、ここでは具体的にはお話しできないですが(笑)。もっと言えば、マイクロソフトスタジオでは世界中の最高のデベロッパーさんたちといっしょにお仕事をしたいと思っています。Xbox Oneで最高のゲームを提供するためには、それが不可欠です。特定のエリアのクリエイターさんとコラボして作品をリリースすることは、そのエリアに住んでいるユーザーの皆さんにアピールできるのと同時に、世界中のゲームユーザーに優秀なクリエイターを知らしめる絶好の機会でもあります。特定エリアに訴求するのと同時に、ワールドワイドで通用するクオリティーを持ったタイトルを作る。これがマイクロソフトスタジオの大きなテーマでもありますね。

――2015年以降は、タイトルの充実ぶりは期待できそうですね。
クドー はい。あと、2015年末は大作だけではなくて後方互換に関しても、期待していただきたいです。Xbox 360用ソフトを遊んでいた方には朗報ではないかと。今年の11月には100タイトルを無償で提供して、その後さらに100タイトルを予定しています。提供のスパンは具体的には決めていないのですが、ある程度までは一定期間内に提供するつもりです。

――後方互換に関しては、E3での発表後に公式サイトでアンケート調査をしていましたが、基本はアンケート上位100本に?
クドー 基本的には、ファンの皆さんの要望にできるだけ忠実にタイトルを提供していきたいと考えています。ただし、サードパーティーさんの意向もありますので、そのへんは相談しつつ決めていくつもりでいます。

――ワールドワイドのアンケートだと、日本のタイトルが入らないかもしれないという心配もありますが、そのへんはいかがでしょう。
クドー 私たちとしては、ファンがいちばん切望しているタイトルをサポートしていきたいとは思っていますが、投票数としては少なかったタイトルでも、重要度などから判断して、一部のタイトルは優先的に扱うものなども出てくるかなと思っています。

――ああ、それは期待したいですね。後方互換に関しては、さきほどおっしゃっていた、“新しいテクノロジー”に相当するものだと思うのですが、実現まではけっこうたいへんだったようですね。
クドー この業界では、ゲーム機の世代交代が起こったときに、後方互換はつねに話題になりますね。後方互換に関しては、ファンの皆さんからの要望が高く、私たちとしても、ファンの方がせっかく購入してくれたソフトの資産をムダにしたくないとの思いもありました。マイクロソフトとしても取り組むべき課題だったわけですが、技術的には相当高いハードルだったのは確かでした。それがミーティングのときに、エンジニアから「後方互換が実現できる」と聞いて、思わず口をあんぐりと開けてしまいました(笑)。マイクロソフトの優秀なエンジニアを投入した成果ですね。

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――今後の新しい取り組みとしては、“Press Play”も、“Xbox One 大感謝祭 2015”の前に行われた説明会で大々的に取り上げられましたね。
クドー いまの時代はゲームメカニズムやゲームプレイのビジネスモデルそのものが変化していますが、“Press Play”は開発面で新しいイノベーションを起こそうという動きですね。“Press Play”では、ゲーマーの方が開発プロセスにもっと参加できるように……という発想から生まれたものです。従来に比べてより早くプロダクトにアクセスできますし、要望などもしっかりと反映されます。デベロッパーだけではなく、ゲーマーの方々のクリエイティビティの潜在能力を引きだすことが重要だと思っています。

――“Press Play”は“ユーザー第一”の最先端の形とも言える?
クドー 少なくとも、今後はゲーマーにもプロダクトの開発に、もっと携わってほしいと思っています。ほかの業界と比べて、ゲーマーの方々はプロダクトのことを熟知しているし、貢献していただける余地が大きいと思うので。彼らは本当にゲームを愛しているので、「こういったゲームがあったら、もっと楽しめる」といった積極的な要望をいただきたいですね。

――ある意味で、“Press Play”はゲーム開発の未来形でもある?
クドー ゲーム開発の手法はいろいろとあって、“Press Play”のモデルしかないと考える必要はないと思っています。いまの開発手法でうまくいっているプロジェクトもたくさんありますし、ゲームにもいろいろな種類があって成功しているように、開発の方法論もいろいろある。そういう意味では、“Press Play”はそのなかのひとつです。私がここで強調したかったのは、“この分野にイノベーションがあるか”です。イノベーションがあって、本当にエキサイティングで新しいものをゲームに反映し得る可能性があるということを明らかにしたかった。“Press Play”という新しい方法論によって、今後新しいゲームが開発できると大いに期待しています。

――ちなみに素朴な疑問なのですが、“Press Play”には、僕のような素人でも参加できる?
クドー 誰でもできます! microsoftstudios.comに来ていただいて、サインアップしていただければ、新しい“Press Play”に参加できますので、ぜひこのWebサイトにお越しください。きっとおもしろい経験ができますよ。記者の方には、すばらしいレビューを書いてほしいなあ(笑)。

――“Xbox One 大感謝祭 2015”の前日に行われた説明会では、“すべてのプラットフォームで同じコンテンツを”という、いわゆる“マルチデバイス”戦略も強調されていましたね。
クドー ゲーマーの方に、幅広いゲームを遊べるような選択肢を提供していきたいと思っているんです。とくに、いまゲーマーの皆さんはいろいろなデバイスを使ってゲームを楽しまれていると思うのですが、まず第一に、ほかのデバイスを使っている人たちとゲームが遊べることをサポートしたいです。欧米では年末発売の『Fable Legends』では、Xbox One版とWindows 10版の2タイプを発売予定です。これまでコンソールのゲームとPCゲームは別々だったのですが、今回はこのふたつの世界が融合していきます。プラットフォームの違いは問わないんです。Xbox OneとWindows 10が連携することで、家にいるときはコンソールでゲームを遊んで、職場では同じゲームをWindows 10を搭載したPCで遊ぶといった可能になってくるんです。ひとつのデバイスで進めたゲームプレイを、ほかのデバイスで続けられる。デバイスの違いを問うことなく、自分がプレイしたい人たちとつながってゲームができるんです。

――Windows 10との連携が、Xbox Oneのさらなる普及に向けてのカギとなりそうですね。
クドー もちろん、Xbox Oneにフォーカスしたタイトルを開発することで、最高のゲーム体験をゲーマーの皆さんに提供できると信じているところはあります。ですが、Windows 10はゲーマーの皆さんにとってすばらしいプラットフォームですし、いろいろなデバイスでゲームを遊びたいと思っている方がたくさんいらっしゃいます。そういう意味では、コンソール対Windows PCという構図ではなくて、使っているデバイスは関係なしに、最高のゲーム体験を提供できる。同じゲームを違ったデバイスでプレイできることこそが、究極の姿ではないかと思っています。

――その“マルチデバイス”の中には、スマートフォンも入ってくる?
クドー スマートフォン向けゲームの遊びかたは、コンソールのゲームプレイとはぜんぜん異なります。コンソールとPCは親和性がありますが、モバイルはスタイルが異なる。いまクリエイティブの面における悩みの一端はそこにあります。どのようにすれば、異なるデバイスの異なるゲームスタイルを持つコンテンツを、同じゲームプレイのユニバースでサポートできるのか……。これはデバイスの違いに留まらず、それに加えてさまざまなゲーマーの方のプレイスタイルでもあります。そこもきちんとフォローしていきたい。つまり、さまざまなデバイスの上にひとつのゲーム体験を構築するだけではなくて、最終的にはいろいろなタイプのゲームプレイを同じユニバースの中でサポートできることによって、より多くのゲーマーの方に参加してもらって、同時にゲームを楽しんでもらえる。たとえば、子どもたちとゲームを遊ぶと、当然のこと私たちとは違うゲームスタイルがあることに気づかされるわけですが、そんな子どもたちといっしょにプレイすることで、これまでにはなかった新しいゲームスタイルを生み出すことができるかもしれない。デバイスとは関係なく、文化やプレイスタイルなどの垣根を越えて、いっしょにゲームを遊べることになるのが目標ですね。

大いなる可能性を秘めたMicrosoft HoloLens

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――E3でお披露目されて大きな話題を集めたMicrosoft HoloLensの進捗を聞かせてください。
クドー 技術検証は着々と進めています。Microsoft HoloLensは、ゲームはもとより、エンターテインメント分野や通信コミュニケーション、教育など幅広いジャンルで活用できるデバイスだと期待しています。Microsoft HoloLensのテクノロジーが導入されることによって、複合現実(MR)として現実世界に3Dのオブジェクトを出現させられる。新しい技術により、いままで閉ざされていたクリエイティビティが引き出されるんです。しかも比較的安価に。Microsoft HoloLensにより、デベロッパーの3Dに対するクリエイティビティが本当に開放されるわけです。

――ゲームはもちろんですが、あらゆるコンテンツの可能性がさらに広がりそうですね。
クドー そうですね。ホログラフのテクノロジーはまさに始まったばかりです。多くのクリエイターさんも、Microsoft HoloLensには興味を持ってくださっていまして、ホログラフの技術に接することによって、大きな気付きがあるのではないかと。今後どのような可能性が生まれてくるか、私自身にも想像ができないくらいです。

――新しいテクノロジーといえば、最近Kinectの影が薄いのが気になるところです。
クドー マイクロソフトはKinectの根幹とも言える深度センサーのテクノロジーには相当な注力をしていて、将来的にも有望な分野であると認識しています。実際のところMicrosoft HoloLensの中には小さい深度センサーが搭載されていて、ホログラムを作成する際に不可欠の要素となっているんです。「Kinectの影が薄くなった」とおっしゃいますが、深度センサーのテクノロジーに関して言えば、ますます存在感を高めているといっていいでしょうね。

――つまり、KinectはMicrosoft HoloLensに進化したと?
クドー Kinectはプロダクト名です。マイクロソフトは深度センサーのテクノロジーに多大なる投資をしているということで理解していただければ……と。

――Microsoft HoloLensがリリースされるのはいつくらいに?
クドー 現時点では未定です。ただし、時期は未定ですが、Windows 10の技術提供サイクルの課程の中で、Microsoft HoloLensの開発キットをデベロッパーに提供することは決定しています。あと、これは私の希望になりますが、一般の方にMicrosoft HoloLensに触れていただき、開発に協力していただける体制にしたいと思っているんです。いずれにせよ、今後の展開にご期待ください。

――ラインアップといい、新しいテクノロジーといい、今後のXbox Oneには期待できそうですね。
クドー はい。とくに年末にかけては専用タイトルが充実していますし、後方互換機能も実装されます。そういう意味では、Xbox Oneはまさにいまが買い時ですよ!