伝説のゲーム音楽バラエティーが堂々の復活

 2015年9月5日、ニコニコ生放送にてゲームサウンドクリエイターによるトークライブ番組“「おとや」第4回~コンティニュー?~”が配信された。そもそもこの“おとや”は、2010年から計4回配信された番組で、著名なゲーム音楽家が一堂に会している話題性に加え、ふだんはなかなか目にする機会のない作曲家たちによる硬軟入り混じっての本音トーク(というかすごく自由な内容)にて、ゲーム音楽ファンにとって大きな話題を呼んだものだ。それが今回、約5年ぶりの復活を遂げるというので、生放送の現場への取材を敢行。番組では見られない舞台裏の様子を含めてリポートしよう。

5年ぶりの大復活! ゲーム作曲家によるバラエティー生放送“「おとや」第4回~コンティニュー?~”の模様をリポート_01
▲左から、司会の光吉猛修氏(セガ・インタラクティブ)と坂本英城氏(ノイジークローク)、コメンテーターのなるけみちこ氏、下村陽子氏、佐野電磁氏(DETUNE)と、5年前と同じレギュラーメンバーが集結。座敷でお酒を飲みながらのトーク(脱線含む)がくり広げられた。光田康典氏は、楽曲収録の都合で後半からの参加となったが、写真だけを見てもテンションの高さが伝わるはずだ。

 番組は以前と変わらぬ、ゆるーい雰囲気でスタート。冒頭では、5年ぶりの復活ということで、レギュラーメンバーがその間なにをしていたかをフリップで説明をしていったのだが、記念ライブや海外レコーディングをした方もいれば、サンバでカーニバったり歌のおじさんになったりAMラジオパーソナリティになったり終わったりと、とてつもない幅広さがあったことを確認しあったのだった。

 続いてはこの日のスペシャルゲストである古代祐三氏が登場。学生時代から『イース』などのゲーム音楽を手掛けるなどゲーム黎明期の生き証人が語る逸話の数々に、レギュラー陣は興味津々。中でも、学生時代にPC-88シリーズで“耳コピ”した『スペースハリアー』などの楽曲をセガに送ったことで、作曲家のHiro師匠やディレクター鈴木裕氏が直々に対応してくれたエピソードには、オドロキの声があがっていた。

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▲古くは『イース』『アクトレイザー』から近年では『世界樹の迷宮』や『湾岸ミッドナイト Maximum Tune』などなど、数多くのタイトルに名曲を提供している古代祐三氏。自作の音楽ツールを制作するなど、テクノロジーと融合したゲーム音楽を作り上げた人物のひとりだ。
▲番組の歴史を見守ってきたフラッグにサインを書き込む古代氏。これまで出演した作曲家たちの名前も垣間見える。
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▲遅れて加わった光田氏(左)と古代氏は、共作となった『新・光神話パルテナの鏡』トーク。楽曲数の多さも手伝い、オーケストラに渡す譜面をプリントアウトするだけで、かなりの時間と労力がかかったなどの裏話を披露していた。

 続いては、下村氏となるけ氏によって結成されたユニット“おとめ”のコーナー。音女と書いておとめと読むことからもわかるように「将来的にはオリジナル楽曲を東京文化会館で演奏をしたいねー(はあと)」といった、ガーリーで夢のあるトークが展開。さらに、番組のためになるけ氏が急遽作ってきた“音女のテーマ”が披露される一幕もあり、かわいさてんこ盛りに盛り上がった。

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▲下村氏&なるけ氏による“音女(おとめ)”のコーナーでは、ユニット結成までの経緯や今後のビジョンが語られた。9月30日にリリースされる下村氏の新譜“Promise”は『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』のアレンジアルバムとなる。
▲歌のコーナーには、なるけ氏とともに浅草サンバカーニバルで楽隊を務めたガンホー・オンライン・エンターテイメントの三浦氏・千葉氏と、『戦国無双』や『討鬼伝』シリーズでサウンドディレクターを務めたATTIC INC.の中條謙自氏が助っ人として参加。女性ユニットということで、みなさんかわいらしい姿です(笑)。
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▲ウクレレ+トイピアノ+マトリョミン+太鼓3種による伴奏にのせて、なるけ氏が歌を披露。「♪おっとめーおとめおっとめー」という印象的なフレーズと、女性作曲家の日常を切実に綴った歌詞が視聴者たちを魅力した。

 なぜか法被&ふんどし姿な光吉氏のコーナーでは、ふたたびゲストの古代氏が登場。メガドライブの楽曲を手がけているときのエピソードや、共作となった『シェンムー 一章 横須賀』についての思い出話がふんだんに語られた。そして光田氏と下村氏も加わって、3人が楽曲を提供しているセガの音楽ゲーム『チュウニズム』についてのトークも展開。音楽ゲームの曲作りの感想や、キャラクターイラストからイメージを膨らませて楽曲を作るコツなどが明らかにされた。なお、3人の楽曲は9月10日よりプレイ可能となっている。

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▲豪華メンバーが手がけた課題曲を番組で初公開。古代氏の“Grab your sword”は4つ打ち+シンフォニックな楽曲。光田氏による“Alma”は憂いのあるヴォーカルが印象的な一曲。下村氏の“Tango Rouge”はバイオリンとピアノの掛け合いがアダルトさを醸し出している。
▲トークがあれば、もちろん歌も! 世界一歌のうまいサラリーマンの本領を発揮して『チュウニズム』にも収録されているボカロ曲“千本桜”を、光吉バージョンにて熱く、熱く歌い上げた。

感動的な演奏から爆笑トークまで幅広すぎる後半戦

 後半戦は坂本氏の演奏から再開をし、氏の代表曲のひとつ『タイムトラベラーズ』から“The Final Time Traveler”を生演奏。鳴り響くバイオリンの切ないメロディが、スタジオを凛とした空気に包み込んだ。かと思えば、さらに雰囲気をガラリと変えて、ノイジークロークの社員バンド・TEKARUのフリートークコーナーを展開。最新アルバムの“TEKARU HECTOPASCAL”には、ノイジークローク制作の楽曲アレンジ以外にも、『ゼビウス』などの楽曲も収録されているとのこと。また、緑のジャージに衣替えして撮影されたCDジャケットに隠された秘密についての脱線トークなどがくり広げられていった。

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▲坂本氏のピアノと、急遽坂本氏に出演オファーを受けたというヴァイオリニストの松原まり氏によって、『タイムトラベラーズ』から“The Final Time Traveler”を演奏。画面越しでも視聴者のうっとりした表情が見えるかのような、美しい演奏が届けられた。松原氏は沖縄ゲームタクトのコンサートミストレスを務めた腕前の持ち主なのだが、なぜか「サラ・オレインさんじゃなくてすみません」と何度もお詫びをするスタイル。
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▲TEKARUメンバーによるゆるゆるトークでは、ノイジークロークのいとうけいすけ氏、川越康弘氏に加え、サポートギタリストでもある中條氏がジャージ姿で大集合。ニューアルバムのジャケットである組み体操について、オモシロまじめなトーンで紹介していった。

 今回も出演者からは“緑のおしゃべりマシーン”として恐れられた佐野氏は、光田氏いっしょに現在進行中の最新プロジェクトの情報をひっそりガッツリと紹介。佐野氏は、楽器メーカーKORGと共同でiOS用のシンセアプリを開発中。また、新作ゲームアプリ『新約・アルカナスレイヤー』の楽曲では、「イトケン(伊藤賢治)さんみたいなバトル曲を書いて」というオファーに即オーケーし、“俺の考えるイトケン節”をこれでもかというほどに紹介。楽曲よりも響く“超電磁音声”に視聴者は晒されっぱなしとなった。

 富士山の麓にスタジオを構えたという光田氏は、この日の生放送がスタートしてからもレコーディング作業をしていたという、作曲家20周年として10月14日にリリースされるクロノ・トリガー&クロノ・クロス アレンジアルバム“ハルカナルトキノカナタヘ”の最新情報を公表。まさに直前まで作業をしていた音源を惜しげなく披露するというサービスぶりであった。

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▲もとより流暢(すぎる)なトークで知られる佐野氏だが、CBCラジオにてオンエアされていた“電磁マシマシ”のパーソナリティを務め、そして終了したことでパワーは倍増。マイク不要な音量で、突っ込んだり突っ込まれたり。光田氏もつられてジョークを連発!
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▲まだ名前もいえないというiOS用の新作シンセを実演する佐野氏。“ドラムシンセ”や“ボコーダー”いった気になるキーワードをお漏らししていたが、その正体は秘密だ。
▲光田氏は、ファンから待ちに待たれた『クロノ・トリガー』『クロノ・クロス』のアレンジアルバムを告知。自身が厳選した楽曲の中には、ヴォーカリストとしてローラ・鴫原氏やサラ・オレイン氏が美声を披露しているものも。

 5年の間があっても、変わらず出演者それぞれの色合いが出まくっていた“おとや”。ほかにも、好みのシーケンサー論争や、捨てられない楽器など作曲家ならではのトークがありつつ、気がつけば4時間あったはずの番組枠は残り僅かに。シメは恒例の光吉氏の歌のコーナーとして、視聴者アンケートにより選ばれた“Burning Heart 炎のANGEL”とアンコール“Let's Go Away”の歌声がとどろき、最高潮の盛り上がりのままで番組は終了となった。なお、ニコニコ動画のプレミアム会員ならば、2015年10月5日までタイムシフト視聴が可能なので、この記事で興味を惹かれたならばぜひ試聴していただきたい。楽しいよ!!

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▲熱唱する光吉氏を出演者総出で盛り上げる恒例のエンディング。『リッジレーサー』『デイトナUSA』『湾岸マキシ』の作曲者が揃い踏みするというレアなシーンもあったり!

終演後インタビュー&舞台裏写真を公開!

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――まずは坂本さんから、5年ぶりの番組を終えての感想をお聞かせください。

坂本 まずは出演者の皆さんが、みんな健康でよかったなと。5年というと3.11の震災の前ですしね。皆さんとは番組以外でお会いする機会も多いので「久しぶり?!」といった感覚ではないのですけど、ファンの皆さんからは「次の“おとや”はいつやるの?」と言われ続けていただけに、実現できてよかったなと思っています。

――ほかの皆さんはどんなご感想でしょう?

下村 電磁はうるさいとかね(笑)。

佐野 それは「電ちゃん大好き」って気持ちの裏返しですよね!

(一同苦笑い)

光吉 ひさびさに番組をやりますとお声がけいただいてから、5年前に皆さんと番組をやっていた記憶が蘇ってきて、同窓会みたいな楽しい気分でしたね。

光田 番組に遅刻したのが心残りですが、本当にひさしぶりに楽しい番組に出させていただいて、話を聞くのもすごく楽しかったですし、ぜひとも次の第5回をやりたいですね。

なるけ 始まる前は「いつものメンバーだな~」となごやかだったんですけど、番組がすすんでいくうちに佐野さんが際立って、それにみんなが少しずつイライラしてくる。そういう懐かしい当時の感覚を思い出しました(笑)。下村さんとなにかいっしょにやろうと言っていたのが、具体的にできたことがよかったですね。

下村 5年経っても声をかけていただいて、素直に嬉しいです。「やりたいね!」というばかりだった“音女”のコーナーが気づいたらできていたんですけど、その前触れとして放送3日前に送られてきた200MBのムービーでは、なるけさんがニコニコしながらウクレレをペローンと弾いてて(笑)。そういう“ゆるいけど勢いでやっちゃう”のはこの番組らしくて楽しかったです。次に向けてネタも仕込みたいし、電磁は打倒したいと思っています(笑)。

中條 すでに“おとや”をやってきたメンバーの中に、混ざれて楽しかったですね。僕は飛び込みのような入り方でしたけど、なるけさんから突然メールが入って「どうせ番組を見学するなら出演して!」と言われて(笑)。これに限らず、もっと自分の楽曲を演奏する機会を増やしていきたいですね。願わくば普通の服装で!

佐野 えーーー、向こう5年生き延びていこう、という気持ちでいっぱいです。長生きは正義!

――ありがとうございます(笑)。ゲスト出演された古代さんはいかがでしょう?

古代 なんか気がつかないうちに光田さんとのシーケンサー論争に巻き込まれてましたが(笑)。お仕事などで個別にお会いすることはあるんですけど、このメンバーで集まってそこに入るのは初めてでした。番組ってことを意識しないで楽しめましたね。それとですね、ここしばらくダイエットをしてきたんですけど、ジーンズがゆるくなっているのを実感できたのがよかったです。

下村 たしかに古代さん、お会いするたびにシルエットが違いますよね。

佐野 でもそれは、明日のYahoo!ニュースの見出しにはならないなぁ(笑)。

――「次回開催はよ!」という視聴者からのコメントが多数ありましたが、具体的な構想としては?

坂本 そうですね。「こういうコーナーをやりたい!」という具体的なアイデアもあったりするので、あとはお忙し皆さんのスケジュールがあえばというところです。

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▲番組開始直前でもこのほがらかさ。出演者どうしのふだんからの仲のよさが見えてくるショット。
▲休憩時間のひとコマ。楽器があれば楽しめるのが音楽家だ。
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▲キャラの濃い人だらけの中でも、際立って特濃な方々によるスリーショット。これだけ見ても、なんの番組かはさっぱりわからないが、それもまた魅力。