スマホ版『World of Tanks』の現在と未来
『World of Tanks』や『World of Warships』といった人気オンラインゲームを運営するWargamingは、PCオンラインゲーム界隈では世界的な評価を得ているメーカーだ。同時に、モバイル・タブレット端末向けの『World of Tanks Blitz』(以下、『Blitz』)でも着実にプレイヤー数を増やしている。
Wargaming Asiaで『Blitz』のプロデューサーを務めるOzan Kocogle(オザン・コチョール)氏に、本作の現状や今後のサービス内容についてお話を伺った。
日本戦車の実装は“恩返し”
――サービス開始から1年以上が経過した『Blitz』ですが、ユーザーからの反響などはいかがですか?
Ozan iOS版とAndroid版を合わせ、『Blitz』の登録者数は2500万人を突破しました。この数字は、モバイルのコンテンツとして非常に大きな実績であり、我々としても大きな成功を得たと実感しています。
――日本も含む、アジア圏での反応はいかがですか?
Ozan 『Blitz』において、アジアリージョンはとくに反応が良好です。正直に言いますと、PC版においては、ほかのリージョンに比べると、アジアのユーザー数は決して多くはありませんでした。一方で、『Blitz』におけるアジアは、売上だけを見てもグローバルで第3位と高く、我々としても重要な地域となっています。
――第3位ですか! アジアで人気になった背景は、日常的にモバイル機器が多く使われている国が多いからなのでしょうか?
Ozan そうですね。やはり、アジアにはモバイルプレイヤーは非常に多いです。これから『Blitz』には、さらにPC版とは異なる特別なアイデンティティを持たせたいと考えています。皆さんにはより楽しい体験を提供できると、我々も楽しみしています。
――なるほど。お話から察するに、今後『Blitz』独自の新コンテンツも多数実装される……ということですね。
Ozan 新コンテンツはもちろん、モバイル機器で遊ぶゲームであるという特徴を活かした機能の追加や改善、遊び心があるイベントもどんどんリリースしようと考えています!
――具体的な例などもお伺いできますか?
Ozan 2015年9月17日(木)からすでに配信開始となっていますが、プレミアム戦車“Type 3 Chi-Nu Kai Shinobi”の実装が、その動きのひとつです。この戦車は『Blitz』では初の日本戦車で、車体に手裏剣などが描かれたデザインが特徴です。
――さらに、先日には日本戦車のツリーの実装も発表されていましたね。
Ozan はい。日本のタンクツリーは12月を目標に実装予定です。まずは軽戦車と中戦車が実装され、重戦車はその後に実装される流れとなります。日本の戦車はアジアを代表する戦車であり、遊びやすい車両も多いので、実装されれば戦場でたくさん見かけることになると思いますよ。
――正直な話をしますと、このタイミングで日本戦車ツリーが来るのは意外でした。
Ozan 日本ツリーの実装がもっと先だと思っていた方は、私も多いと思っています。PC版ではアジア系の戦車の実装は中国が最初でしたからね。このタイミングで日本のツリーを実装するのは、日ごろからたくさん遊んでくれている日本人プレイヤーへの、我々からの小さな恩返しです。皆さん、楽しみに待っていてください。
“Rise of Continents”へのアドバイスは「賢く遊べ!」
――そのほかに、注目の企画があったら教えてください。
Ozan なんといっても、2015年9月28日(月)から2015年10月25日(日)まで開催されるイベント“Rise of Continents”です。これはWargamingの歴史でも過去に前例のない、北米、欧州、ロシア、アジアで同時に行うサーバー対抗戦になっています! イベントの期間中、戦闘数、獲得経験値、ミッション達成数といった特定のプレイデータを記録しポイントを集計。最終的に、リージョンごとの獲得ポイントで順位を決めるというルールです。
World of Tanks Blitz: Rise of Continents
――グローバルを巻き込んだランキング戦みたいな感じですね
Ozan そうです! 期間中に100バトルと20日間プレイすれば、参加したプレイヤーなら必ず報酬がもらえるので、まずは参加することが重要です。報酬は所属するリージョンの最終的な順位で変わり、1位になればプレミアムアカウント14日間と500ゴールドと、かなり豪華です。ぜひアジアには総合1位を目指してほしいと思います!
――リージョンごとにプレイヤー数は大きく差があると思うのですが、結果に影響はしないのでしょうか?
Ozan 各リージョンで順位を決めるイベントではありますが、集計するデータは過去3ヵ月のアベレージを個別に図り、その結果に対して設定される目標突破率を%化します。ですので、人数差で結果が左右されることはありません。
――個人のがんばりが重要になるわけですね。
Ozan 個人の働きはもちろん大切です。ただ、このイベントではプレイヤーどうしでコミュニケーションを図り、“賢く”プレイすることこそが重要になります。
――コミュニケーションですか?
Ozan たとえば、専用のイベントサイトでは、毎日プレイデータを確認でき、目標の達成状況が一目瞭然です。そこでドイツ戦車の破壊数が足りなければ、みんなで呼びかけあってドイツ戦車に乗ることで、自分が破壊しても、破壊されても所属リージョンのメリットにつながるんです。
――なるほど! 言われてみると、サーバーごとに遊んでいるプレイヤー層が違いますもんね。自分が倒されても、相手も同じリージョンなら目標のカウントは増える。
Ozan このイベントだけで言うと、やられてもオーケーなんです(笑)。ですので、イベントサイトやコミュニティーを有効活用し、しっかり作戦を立てて共有することが、順位を上げる近道なんです。私もコミュニティサイトでサポートなどをしていきます。ちなみに、個人で活躍すれば、毎週11人以上のプレイヤーにリアル賞品としてゼンハイザー提供の高品質ヘッドセットなど、豪華な賞品もご用意しているので、こちらも狙ってほしいと思います。
――“Rise of Continents”はグローバル単位で行われる、Wargamingにとっても非常に大きなイベントですね。これを、本家とも言えるPC版ではなく『Blitz』で開催することには何か理由があるのでしょうか?
Ozan 『Blitz』は、スペックなどの関係からPC版で遊べなかったプレイヤーでも『World of Tanks』を気軽に体験でき、また違ったおもしろみを感じられる、とても遊びやすいゲームです。今回のイベント自体は既存ユーザーへのアプローチという面が強いですが、もともと『Blitz』は頻繁にイベントを開催しています。もっと気軽に遊べるようにしたいという目標が、“Rise of Continents”の実施につながりました。
来年のサービスはe-Sportsを意識!
――では、今後アジアでサービスを行う中で課題や目標とするものなどはありますか?
Ozan ひとつやりたいのは、国の色に合わせたコンテンツやキャンペーンを提供していくことです。いまはアジア全体でサービスを提供していますが、私はもっとローカルに考えるべきだと思っているんです。たとえば、ひとくくりにアジアと言っても、国ごとに違う文化があるので、休日や季節感はまったく異なります。クリスマスという行事も、国ごとで祝いかたも違うし、宗教によっては関係ない場所だってある。
――夏にクリスマスを祝う国もありますよね。
Ozan そういった地域で、ゲーム内では雪が降り、クリスマスツリーが輝いているのは違和感しかありませんよね(笑)。それぞれの地域でタイムリーな話題は違うのは当たり前ですが、我々はそれを非常に重要なことだと思っています。
――来年は大会などの実施も考えていますか?
Ozan もちろん考えています。来年はe-sportsと相性のいい要素も取り入れようと思っています。いまは知らない人としか遊べていませんが、プライベートマッチやトレーニングができるシステムをほしがるユーザーは多いです。必ず実装できるものなので、実現に向けて動く予定です。また、アジアではほかのリージョンよりも多くのフォーラムアクティビティを実施しているほか、“Blitz Action”というアジアだけで展開しているプログラムも存在しているので、活用してほしいなと。
――“Blitz Action”ですか。
Ozan これは私が考案したプログラムで、ユーザーが自分でオフラインイベントを作り、それを我々がサポートするというものです。イベント申請をしてもらえれば、我々が専用フォーラムを通して情報を発信するだけでなく、賞品を用意したり、スタッフを派遣したりと、イベントをサポートさせていただきます。
――至れり尽くせりじゃないですか!
Ozan 大小問わず、審査さえ通ればバッチリサポートいたします! e-sports要素の強化で、いずれは個人でも大会が開けるようになる日も来るので、皆さんの手で、そういったイベントも積極的に開催していただければうれしく思います。最初は難しいかもしれませんが、コミュニティーに参加することで『Blitz』のおもしろさはより増していきます。皆さんには、積極的にコミュニティーに参加してほしいですね。
TGS2014でお会いして以来、筆者がOzan氏と会うのは3回目。お話を伺うたびに、日本、そしてアジア全体の『Blitz』プレイヤーのことを親身になって考え、「よりすばらしい体験をしてほしい」という想いをひしひしと感じさせてくれる。今後もサプライズに期待しつつ、まずは“Rise of Continents”でOzan氏の期待に応えよう!