オイ車大解剖!
2015年9月20日まで、千葉・幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2015(以下、TGS2015)。そのビジネスデー2日目となる9月18日、ウォーゲーミングジャパンブースにて“『World of Tanks』(以下、『WoT』)戦車スペシャルトークステージ”が開催された。
ステージではまず、「ニホンといえばニンジャ!」というイメージの海外ファンのためにこのTGS 2015に向けて開発された、特殊塗装の“Shinobi Tank”と、『WoT』にて2015年9月10日にいよいよ実装され、モバイル版の『World of Tanks BLITZ』(以下、『BLITZ』)にも実装予定となっている、日本重戦車ツリーの紹介がなされた。
そしてこのトークステージに、鈴木氏が招かれた理由がここでやっと明らかとなる。今回のTGSでウォーゲーミングジャパンのブースに展示されている、1/1スケールで再現された日本重戦車Tier6車輌、オイ車こと“O-I”。鈴木氏は『WoT』にこのオイ車が実装されるにあたり、そのモデリングを完成させるために必要な資料を唯一所有しており、それを提供してくれた重要人物だったのだ。
ステージでは、鈴木氏からの詳細なオイ車の解説が続いた。
そもそもオイ車とは、日本陸軍が開発を進めていた、多砲塔にして100tを上回る超重規格の戦車だ。重量100t、そしてKV-2の砲にすら匹敵する15cm砲を搭載し、11人が搭乗するという怪物となる予定の戦車だった。
完成した試作車輌は1台、それも戦艦大和のように非常にきびしい極秘開発が進められたため、日本では防衛省にすら資料が残されておらず、“試製100t戦車”のその姿は長年謎とされてきていた。だが、鈴木氏が代表を務めるファインモールド社が、戦前の貴重な三面図などの資料を発見。オイ車がどのような姿をしていたのか、ついに明らかとなったのだ。
当時の試作車輌は砲塔を搭載しない形のまま解体を迎えたとされているが、72年の時を経て、今回のTGS会場では砲塔や追加装甲などを完備した完成形として1/1模型が蘇ったことになる。
『WoT』に日本重戦車ツリーを導入するにあたり、Tier6に位置する“O-I”を完成させることは、ウォーゲーミング側としてもその後のTierで重戦車を作っていく礎とするためにも必須。そこで貴重な資料を鈴木氏に提供してもらえないかと頼みに行ったところ、鈴木氏はすでに『BLITZ』をプレイしており、快諾してくれたとのことだ。
鈴木氏は、ゲームということでオイ車がどのような形で再現されるのか当初は不安もあったとのことだが、実際に動くオイ車のモデルを見て感動を覚えたとのこと。日本陸軍が果たせなかった夢を、いまの日本人がデータを集め、1/1模型やゲーム内で動き回るモデルとして完成させてくれたことに、何より感動したという。
また鈴木氏からは、『WoT』でオイ車に惚れ込んだというプレイヤーに朗報も。ファインモールド社から11月下旬に、この貴重な資料を参考に作られた1/72スケールのオイ車の模型が発売されるという。
ファインモールド社からは、『WoT』の人気車輌はもちろん、『ガールズ&パンツァー』モデルの戦車模型など、さまざまな商品が発売されているが、数量限定の商品も多いので、興味が湧いたなら要チェックだ。9月26日、27日に東京ビックサイトで開催される“全日本模型ホビーショー”にもファインモールド社は出展するので、これらの情報はぜひ公式サイトで確認してほしい。
ほかにも鈴木氏からは、オイ車の15cm砲がスチュワート戦車をバラバラに吹き飛ばす試射の映像が残っていること、鈴木氏も最初は「やっつけ仕事だったんじゃないか」とさえ思ったという変わった砲塔の形が避弾経始にもたらす効果や狙いの推測、走行試験でベアリングの大半が吹き飛んでしまったこと、オイ車の組み立てに必要な規模などから見えてくる戦時中の列強国と日本の工業力の違いなど、興味深いさまざまな話を聞けたが、ステージ終了の時間が迫り、残念ながら閉幕となってしまった。
ステージの最後には、『WoT』の日本重戦車ツリーはまだ始まったばかりで、今後も鈴木氏をはじめとするさまざまな人に協力をお願いしたいと語る宮永氏に、鈴木氏も快く、「今後の展開も楽しみにしている」と協力を約束してくれた。
なお、これまでの話のとおり、ブースに展示されている非常に貴重な1/1オイ車は、残念なことにTGS2015終了後は、あまりに巨大なため保存が難しく、解体されることになっている。会場に訪れる機会がある人には、この現代に蘇った幻の戦車の勇姿を、ぜひその目に直に焼き付けてほしい。