360度パノラマ動画と3D音響でのめり込む!

 2015年9月20日(日)まで千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2015で、エクシングのカラオケ“JOYSOUND”をPlayStation VRに対応させた『JOYSOUND VR』のプロトタイプ版が展示されている。試遊の感想とともに、プロデューサーへのインタビューをお届けしよう。

『JOYSOUND VR』は、360度パノラマ動画と3D音響により再現された仮想空間で、 “究極のヒトカラ”(ひとりカラオケ)を体験できるコンテンツ。今回展示されているプロトタイプ版では、アイドル気分が味わえる“アイドルとオンステージ”と、桜のある風景を堪能できる“SAKURA TRIP”のふたつが楽しめた。前者には名古屋の大須を拠点に活動するアイドル“OS☆U”が登場。メンバーのひとりとしてステージに立ち、パフォーマンスを披露することになる。後者では、桜の風景を堪能しつつ、歌声と連動して出現する桜吹雪に包み込まれる体験が可能なのだ。

アイドルになってライブ///

 体験用に用意された部屋に赴き、さっそくプレイに臨む。PlayStation VRのヘッドマウントディスプレイをかぶると、そこは近未来的なカラオケルームの中だった。

『JOYSOUND VR』PlayStation VRで私、アイドルになりました……! 試遊リポート&インタビュー【TGS2015】_01
▲このイメージビジュアル内の椅子に座り、奥の壁面ディスプレイを眺めているイメージだ。

 コントロールはおもに視線で行なう。今回用意されている2曲から、歌いたいほうを選んで視線をあずけ、パッドで決定。この体験会では、手にマイクを握っていたため、決定操作はVRディスプレイの外のスタッフがしてくれた。

 まずは“アイドルとオンステージ”に挑戦。コンテンツが決定されると、電脳空間を転送されるようなデジタルデータがブロック化して崩れる演出で目の前が暗くなり、ついで行き先が逆回しで現れた。ベタベタだが、VRでこれをやられると、えらくワクワクする。

 たどり着いたのはどこかの廊下。目の前にOS☆U のうち、3人のメンバーが立っている。「後ろも見てください」というヘッドフォン外からの声に振り返ると、自分がぐるりとメンバーに囲まれているではないか。立体映像ではないが、視野は360度自由自在。周囲のメンバーは口々に「今日はがんばろうね」など声をかけてくれているが、こちらは、天井や床のディティールを眺めたり、「この子は好みだな」だとか考えたりと、それどころではない。

『JOYSOUND VR』PlayStation VRで私、アイドルになりました……! 試遊リポート&インタビュー【TGS2015】_02

 声も後ろから前から左右から。3D音響なので声のする方向を向こうと首を回すと、声も合わせて移動する。なかでもひとりが一歩こちらに踏み込んで声をかけてくれたとき、その近さに照れ、ちょっと惚れかけた。まじまじと見つめようかと思ったが、自分の視線は外のモニター越しに周囲の人にバレバレ。けっきょく自重し、VRの空間を存分に眺めるふりをした。

 最後は円陣状態のまま皆が中央に手を伏せて差し出し、団結を高める状況に。「これは差し出さざるを得ないだろう」とさらに照れながら手を伸ばしたが、カメラマンに笑われた。

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 いよいよステージだ。場所はどこかのライブハウス。そのステージ上に仲間のメンバーといっしょに立っている。自分のポジションはセンター後ろ。「もう少しだけ人気の順位を上げなければフロントには立てないのだろう」などと考えていたら、曲が始まっていた。OS☆Uの皆さんには申し訳ないが、知らない楽曲だ。マイクに向かって声を出しているとスポットライトの光量が変わるというので、「オイ、オイ」と合いの手を入れることにした。

 歌詞は、奥へといくぶん倒れるように、画面下部に斜めに固定で表示されている。いわゆるプロンプターのような感じだ。歌を知っている人は、ときおりチラ見で確認すればいい。

 横のメンバーを眺める。「もえちゃんも頑張ってるから、私も頑張らなきゃ」。勝手にそんな気になってくる。これもVRのなせる没入感の一種だろう。客席ではファンのみんながサイリウムを懸命に振っている。足下を見れば、最前列のファンの持参した手荷物まで見える。「ああ、私はいまアイドルで、ステージの上なのよ」と自覚した。

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 曲の構成の切り替えに合わせて、今度は視点が客側からのものになった。「だったら」とファン目線でオイオイ叫びながら、メンバーを眺める。ジロジロあんなとこやこんなとこが見たいけど、やっぱり自重。周囲をぐるりと見回して、この空間の盛り上がりに身を委ねた。最前列で漫然と観るライブはとても華やか。悪くない。

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 何度かこの視点変更をくり返してライブは終了。画面が暗転し、つぎは楽屋で座っていた。ひとりひとり楽屋に入ってきながら、声をかけてくれる。
「最高の笑顔だったよ!」
自分でもそう思う。ずっとニヤけていたのが笑顔なら。

花は咲き、鳥は飛び

 続いては“SAKURA TRIP”に挑戦。曲は『千本桜』。だがあいにく記者は昭和のオヤジ。歌えない。歌えないから、コチラもオイオイで押し通すことにした。

 舞台は昼日中の広い公園。見通しがよく、気持ちいい。周囲をぐるりと眺めてみる。遠くに犬の散歩をしている人が見える。自分はオイオイ言っている。

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 桜の木を見上げると、枝ぶりも立派で、「おー」と声が出る。声によってこちらは桜の舞い散る量が変化した。少し声を止めると、はらりはらり。意を決して「オイオイオイオイ」とまくし立てるとけっこうな量の桜吹雪に。

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 そんなことをしているあいだに、風景が切り替わった。あ、ここはたぶん新宿御苑だ。ここは芝増上寺。「ん、ここはどこだ?」 声に出ていたらしく、ヘッドフォンの外から「井の頭公園です」と回答が。お恥ずかしい。いろいろなところの桜に見惚れていたら、鳥のさえずりが聞こえた気がして、見上げるとやっぱり飛んでいた。その背景には、視界一面を覆う桜の枝と花吹雪。このときはオイオイと叫ぶことを忘れていた。

 あっというまに体験は終了。そのまま公園をのどかに散歩したかったが、ヘッドフォン、PlatyStation VRと、ひとつひとつ夢の世界が剥がされていく。すべて外すと体験用の部屋に猫背で座る自分がモニターに反射していた。そのコントラストが、さっきまでのめり込んでいたVR世界を、より美しいものに思わせた。

 ちなみに“アイドルとオンステージ”も“SAKURA TRIP”も、終了後には評価がなされる。正確な名称は失念してしまったが、アイドルを見ていたのか、客を見ていたのか、歌詞を見ていたのか、景色をたのしんだのか。そうしたプレイヤーの視線の先を検知し、ちょっとしたゲーム的な要素として診断しているという。