アカデミー卒業生はF1への登竜門GP2でも活躍中

 2015年9月17日(木)から9月20日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2015。初日のソニー・コンピュータエンタテインメントブースでは、『グランツーリスモ』を使ったドライバー発掘・育成プログラム“GTアカデミー by 日産×プレイステーション 2015”についてのメディアセッションが開催された。

 『グランツーリスモ』のトップゲーマーに本物のレーサーになるチャンスを与えようという同プログラムは、2008年からヨーロッパにてスタートしたが、日本で開催されるのは今年がはじめて。ドライバー選考の流れとして、最初に『グランツーリスモ』による予選が行われるのが最大の特徴だ。

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▲ゲストはレーシングドライバーの柳田真孝選手(写真左)

 ゲストとして登場したレーシングドライバーの柳田真孝選手は「レーシングカートをはじめてから、プロになるまで10年以上かかりました。お金もかかります。すごくたいへんなんです。(GTアカデミーにはプレイステーションと『グランツーリスモ』があればエントリーできると聞いて)ボクの苦労した10年はなんだったんだと正直思いました(笑)」と、会場の笑いを誘った。現在、スーパーGTのGT500クラスに“S Road MOLA GT-R”にて参戦中の柳田選手。自身もはじめ、周囲のプロドライバーたちが、海外のコースや初めてのコースを走るとき、「コースの再現度が風景までまったく同じ感覚」という『グランツーリスモ』を有効活用しているというエピソードも披露してくれた。ちなみに柳田選手は、“GTアカデミー2015”ジャパンファイナル(日本大会決勝)で審査員も務めた。

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 過去のGTアカデミー卒業生は、すでにプロのレーシングドライバーとして活躍している。第1回ヨーロッパ大会チャンピオンのルーカス・オルドネス選手は、2014年から日本のスーパーGTにも参戦している。また、2011年ヨーロッパ大会チャンピオンのヤン・マーデンボロー選手は、今年、F1への登竜門と言われるGP2シリーズに初めて参戦した。柳田選手は「スーパーGTではルーカス選手とレースしましたが、まったく遜色のない走り」と卒業生の実力を評していた。

日本代表の座を勝ち取ったふたりのトップゲーマ―

 さて、“GTアカデミー2015”の日本での選考は、どのように行われたのか。まず、予選参加者は、オンラインやイベント会場にて、『グランツーリスモ6』を使ったタイムトライアルに挑戦。つぎに、成績上位の20名が国内決勝“ジャパンファイナル”に進み、上位6名が英国シルバーストンサーキットでの“レースキャンプ”への出場権を獲得。そして、“レースキャンプ”では、インド、日本、タイ、フィリピン、インドネシアの計30人から、アジア地域の代表者1名が選考された。代表者は日産のサポートを受け、ヨーロッパなどほかのエリアの代表者とチームを組んで、2016年のドバイ24時間レースに出場するという流れだ。

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▲日本代表のイジョンウ選手(写真左)と高橋拓也選手。

 そして、ジャパンファイナルに入賞し、レースキャンプへと進んだ2名が登壇した。イジョンウ選手と高橋拓也選手、どちらも20歳だ。イ選手はなんと日本へ留学中にエントリー。家族からは「勉強せずに日本でなにやってるんだ」と怒られたとか(笑)。一方、高橋選手は趣味のレース観戦に出かけた先で、予選が行われていたのでついでに参加したという。そんなふたりが、シルバーストンサーキットでアジア地域の代表権をかけて行われたレースキャンプの模様を語ってくれた。選考は6日間にわたって行われ、次第に人数が絞られていったのだそうだ。

 キャンプ初日には、GT-Rによるサーキット走行でポテンシャルチェックが行われた。はじめてサーキットを走る参加者も多いなか、いきなりGT-Rをドライブするとあって、さぞかし緊張したのかと思いきや、「緊張より興奮した(高橋選手)」、「パドルシフトでゲームと同じだと思った(イ選手)」とか!

 2日目に行われたのは、精神力と体力を試す“GT NINJA”。これは、テレビの人気バラエティ番組を連想させる、巨大フィールドアスレチックのようなチャレンジだったとのこと。3日目は、1~2日目で成績が振るわなかった参加者によるジムカーナ。4日目は、各国3名ずつが参加するバギーレース。5日目の昼は、4日目に優勝できなかった参加者によるタイムアタック。そして夜は、内装をドンガラ状態にしたマーチでの国別ストックカーレース。最後に、各国代表1名によるフェアレディZでの決勝レースが行われた。とてもバラエティに富んだプログラムだ。

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 体力に優れるイ選手は、バギーレースで優勝するなど、日本勢でトップの成績を見せていたが、最終的に日本代表として選ばれたのは、バギーレースでリタイアした高橋選手だったのだそうだ。選考基準の詳細は明かされていないが、レーサーへの適性は、体力や成績だけでは測れないということだろうか。

 結局、決勝レースで高橋選手はマシントラブルによりリタイア。フィリピン代表のホセ・ゲラルド・ポリコピオ選手がアジア代表に輝いた。

プロレーサーを目指すゲーマーへのメッセージ

 ステージでは『グランツーリスモ6』を使って、イ選手と高橋選手によるエキシビションレースも行われた。ふたりともGT-RのGT500ベースモデルで、富士スピードウェイを2周で争う。さすが、『グランツーリスモ』のトップゲーマーとして勝ち抜いてきたふたりとあって、終始サイドバイサイドの展開が続いた。最終的には、0.036秒差で、イ選手が戦いを制した。

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 最後に、今後GTアカデミーに挑むゲーマーたちへメッセージが贈られた。イ選手からは「GTアカデミーは強い精神力が求められるイベント。緊張せずに楽しめば結果はついてくると思います」、高橋選手からは「ゲームで実力を磨いて、予選を通過するのが第一条件。gつぎに、レースキャンプへ勝ち上がると実車のテクニックも求められるので、そちらの上達も重要です」との、体験を踏まえたうえでのコメントが。そして柳田選手は「GTアカデミーによって、モータースポーツ、ドライバーの裾野がかなり広がった。僕たちは実際のレースを戦いながら、彼らやみなさんがドライバーとなって参戦してくるのを待っています」とセッションを締めくくった。