ライブストリーミング配信にも力を入れたサービスに

 2015年9月17日(木)から9月20日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2015(17日・18日はビジネスデー)。同イベントの初日となる17日に行われた“TGSフォーラム 2015”にて、基調講演“ゲームマーケティング新時代~動画配信プラットフォーム活用の新しい可能性~”が実施。そこで、日本語版“YouTube Gaming”が発表された。

 基調講演が行われる前日の9月16日に、メデイア向けの説明会が行われ、アメリカYouTube Global Head of Content for GamingのRyan Wyatt氏から聞くことができたので、その模様をお届けしよう。

■YouTubeでのゲーム動画の爆発的な増加について

日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _03
▲Ryan Wyatt氏

 まずRyan Wyatt氏は、10周年を迎えるYouTubeにおいて、爆発的にゲームの動画が増えていると説明。じつにトップ100のチャンネルのうち50がゲームであり、毎年ファンたちは、何十億、数百億時間という時間をゲーム動画の視聴に費やしているという。

 こうしたゲーム動画の視聴時間の増加は人気の高いYouTuber(動画配信者)のおかげであり、YouTuber自身も起業家として立派なキャリアを培うことができるようになったという。たとえば、バラエティー紙の表紙を飾ったこともあるPewDiePiはチャンネル登録数が3900万以上のギネス記録保持者であり、動画の総再生回数も100億以上を記録している。インディペンデント系のクリエイターとして、ハリウッドの有名なスターでもないのにブランドを培ってきたと、Wyatt氏はPewDiePiを賞賛した。

日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _01
日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _02

 Wyatt氏は、日本でも『チャリ走DX』などのゲームを紹介した途端にランキングの上位に登場させるHIKAKIN、メジャーなゲームデベロッパーとのコラボを行うマックスむらい、“『マインクラフト』の神”と呼ばれる赤髪のとも、メディアプロモーションに1銭もかけずに実績を培ったはじめしゃちょーなどの素晴らしいクリエイターがいることと、YouTubeというプラットフォームの強さを感じているという。その成功は、動画をフルタイムベースで作るだけでなく、そこから足を一歩踏み出して、起業家精神を持って動画制作を行っていることが大きいそうだ。

日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _04
日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _05

 また、Wyatt氏はゲームデベロッパーにとってもYouTubeが非常に大きな役割を果たしており、日本のゲーム会社がグローバルに展開することもうれしく感じているという。たとえば、Google Playでナンバーワンの登録者数を誇る『モンスターストライク』の動画は、インタラクティブにゲームに関わらせることができることが成功の理由のひとつであり、今後のオリジナルアニメーションの展開にも期待しているそうだ。

日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _06
日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _07

■YouTube Gamingの特徴とは

日本語版“YouTube Gaming”が発表! ゲーム実況動画に特化したサービスの魅力が語られたセッションをリポート【TGS2015】 _08

 現在YouTubeがとくに力を入れているのは、ライブストリーミング配信だそうだ。自分の情報を発信し、シェアしていくことにおいてライブ配信の魅力は大きいため、今後はAndroid端末からの配信などの機能も大きく追加していくという。現在でもプレイステーション4から直接のYouTubeへのライブ配信ができるようになっており、その影響力はやはり大きいものなのだという。

 ここで、米国および英国で2015年8月からリリースされている、海外版YouTube Gamingの紹介動画が公開された。

YouTube ゲームアプリのご紹介 Introducing YouTube Gaming

 YouTube Gamingとは、YouTubeにおけるゲーム実況動画に特化したアプリおよびWebサイトであり、ゲーム関連の動画だけでなく、臨場感溢れるライブ配信の情報も集約されているという。Wyatt氏によると、YouTube Gamingはいちばん好きなクリエイターが動画を投稿したタイミングがわかるような通知機能を備えているほか、個人に特化されたレコメンデーション(おすすめ)の機能にも特化しているという。

 そして、YouTube Gamingが日本市場においてリリースされることがアナウンスされ、日本版YouTube Gamingの紹介動画が初公開された。このアプリがリリースされるのは、非英語圏では初めてとなる。

YouTube Gaming UI Japanese

 Wyatt氏はセッションの最後に「日本における最高のゲーム体験を作っていくために、クリエイター、パブリッシャー、ゲームが本当に大好きなゲーマーと密になり、YouTube Gamingを作っていかないといけません」と語った。

■ほかの動画配信プラットフォームとの差別化のためには

 ここからは、Wyatt氏への質疑応答の内容をピックアップして紹介しよう。

――YouTube Gamingを使うことにより、初めて動画を投稿する方でも、ユーザーに観てもらいやすくなるのでしょうか。
Wyatt はい。アプリの中で、新しいクリエイターのゲーム動画を目立たせること、これまで知られることがなかったクリエイターがより発見されやすくなります。ライブストリーミングが全面に押し出されているということもありますので、有名ではないクリエイターでも自分の存在をより広い方に見せることができるでしょう。

――ニコニコ動画などの競合している媒体との差別化などは考えられていますでしょうか。
Wyatt ゲーム動画は、ライブストリーミング配信された動画もあればVODもあるなど、非常に細分化されたものとなっています。我々の独自性で差別化ができるポイントとしては、そういうものをすべて網羅したワンストップショッピングが可能になっているということだと思います。そのようなことで、Twitchやニコニコ動画との差別化ができればと思います。

――新たにマネタイズの方法を考えられていたりはするのでしょうか。
Wyatt いまは、現在のYouTubeと同じマネタイズを考えています。今後は、一部の国でリリースされているファンファンディングなどの方法も検討するかもしれません。

――ゲームライブストリーミング配信について、e-Sportsは切り離せないものであると思います。何か対応などは考えられていますでしょうか。
Wyatt e-Sportsは北米、韓国、あるいはヨーロッパなどで、非常に大きなものとして成長していますので、日本でもこれから注目される機会が生まれるでしょう。ただ、日本ではトーナメントオーガナイザーが立ち上がっていないと思います。私どもとしてはe-Sportsをぜひサポートをしたいと考えていますが、いまはまだその力が不十分なのかもしれません。このYouTube Gamingというプラットフォームの立ち上げが、e-Sportsへのサポートの最初の一歩になると考えています。


 日本語版“YouTube Gaming”は近日配信予定となっている。

 なお、東京ゲームショウ2015のYouTubeブースでは、『モンスターストライク』のアニメ化を記念した特別ステージや、人気実況者によるゲーム実況ステージ、『Splatoon(スプラトゥーン)』のトーナメントなど、魅力的なプログラムが実施される。詳しいスケジュールはYouTube Japan公式ブログをチェックしよう。動画やライブ配信はYouTube at TGS チャンネルにて視聴できる。