鎌田社長の発言から見えてくる、UUUMが見据える未来とは
HIKAKIN氏やはじめしゃちょー氏など、人気YouTuber(※YouTubeに動画を投稿し、その再生回数に応じた広告収入を得て活動している人々のこと)が多数所属しているプロダクション“UUUM(ウーム)”。2015年8月13日、このUUUMから、iOS/Android用のゲームアプリ『TrapTrip』がリリースされた。
YouTuberのコンテンツ作りのサポートを事業とするUUUMがゲームを制作したのは、いったいなぜなのか。UUUM代表取締役社長の鎌田和樹氏にお話をうかがった。
※このインタビューは、週刊ファミ通2015年9月10日号(8月27日発売)に掲載された内容に、加筆・修正を行った完全版です。
UUUM代表取締役社長
鎌田和樹氏
Kazuki Kamada
YouTuberの制作活動をバディとして支えるUUUM
――本日は、UUUMのゲームアプリ『TrapTrip』についてお話をうかがいたいと思いますが、その前に、UUUMとはどのような会社なのか、改めて教えていただけますか。
鎌田 UUUMはYouTuberをサポートする会社です。いまは40人以上のYouTuberが所属していますが、2013年6月に設立したときは、6、7人だけでした。YouTuberという言葉も、まだまだ知られていませんでしたからね。
――日本でYouTuberが脚光を浴びる前に、何をきっかけに、UUUMを設立しようと考えたのでしょうか。
鎌田 HIKAKINと僕は5年ほど前から付き合いがあるのですが、UUUMを作る前、ちょっと久しぶりにHIKAKINと会ったんです。そのとき、「最近、海外ではYouTuberが活躍していて、自分もYouTubeで動画を公開している」という話を聞いて。「おもしろいな」と思って、YouTuberについていろいろと自分なりに調べまして、魅力を感じ、「YouTuberをサポートする会社を作ろう」と考えました。
――具体的に、どのようなところに魅力を感じたのですか?
鎌田 “チャンネル”という概念と、個人が活躍できる場であることに魅力を感じましたね。個人が“チャンネル”の中で、撮影も編集も行う……つまりディレクターとプロデューサーの役割を担っていることに驚きました。
――確かに以前は、YouTubeの動画というと、ミュージックビデオや、動物や風景の動画というイメージがあり、“個人が自分を魅せるもの”というイメージはありませんでした。
鎌田 しかも、個人で活動している人が世界にたくさんいるだなんて、想像もしませんでしたよね。ただ、個人の力だけでは、どこかで限界が来るとも思ったんです。大きい取り組みをするなら、やっぱり仲間の力が必要になる。事実、当時のYouTuberたちは「つぎのステップに進みたい」と考えていたようで、僕たちはちょうどいいタイミングで参入することができました。
――UUUM設立の翌年である2014年には、動画が一気に普及していきましたね。
鎌田 HIKAKINを始めとするクリエイターたちといっしょに、事業を大きくしていくことができました。現在は、UUUMのYouTuberたちが、月に12000本ほどの動画を公開しています。UUUMスタッフは、“マネージャー”ではなく、いっしょに仕事をする“バディ”として、コンテンツ作りをサポートしています。
実況動画を盛り上げるためあえて理不尽なゲームに
――YouTuberのサポートを主軸に活動しているUUUMが、『TrapTrip』というゲームアプリを作った理由を教えてください。
鎌田 ゲームと実況動画の相性が非常にいいということは、これまでの取り組みでわかっていました。そこで、YouTuberのネタになるゲームを、“自分たちで作ってみたい”と思ったんです。
――では、横スクロールアクションというジャンルを選んだのはなぜですか?
鎌田 『TrapTrip』は、いわゆる“死にゲー”なんです。とにかく、すぐに死にます(笑)。理不尽なものって、突っ込みたくなるものですよね。その突っ込みが、実況動画で活きるんです。そこで、“死にゲー”として成立しやすい横スクロールアクションを選びました。
――とにかく実況されることありきで企画を進めていったのですね。
鎌田 ゲーム自体が有名になってくれたら、もちろんうれしいのですが、“実況があってゲームが有名になる”ことが、僕らのビジネスの根幹になると思うので。それから、UUUMがゲームを手掛けるのは初というわけではなく、昨年12月に『Yの冒険』という2D横スクロールアクションゲームをリリースしているのですが、この『Yの冒険』での経験を活かすという意図もありました。
――『Yの冒険』は、HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんが操作キャラクターとして登場することが大きな特徴になっていましたが、『TrapTrip』の操作キャラクターは、普遍的なデザインの“男の子”や“女の子”ですね。
鎌田 『TrapTrip』は、HIKAKINたちのファン以外にも遊んでいただきたいと思ったんです。皆さんが主人公になれるように、スマートフォンの画像を取り込んで、操作キャラクターをアレンジできる機能も作りました。
――『Yの冒険』にはなかった要素として、“自分でステージを作れる”という機能もあります。
鎌田 用意したステージをクリアーしてもらうだけでは、すぐにプレイが終わってしまいますから。長く遊んでいただくことを重視しました。ステージを作る過程も動画にできますし。ユーザーの皆さんには、どんどんステージを作ってもらって、ほかのユーザーに向けて公開してもらいたいです。
――配信後の、ユーザーからの『TrapTrip』への反応はいかがですか?
鎌田 じわじわ広まっているという印象を受けます。1週間で、20000ものステージがユーザーの手によって生まれました。これはたいへんうれしいことです。先ほど言った通り、長く遊んでもらいたいので、この“じわじわ”はいい流れだと思っています。YouTubeで『TrapTrip』の動画が再生されればされるほど、このゲームもダウンロードされていくように宣伝していきたいですね。すでにHIKAKINやレオンチャンネルがプレイ動画を公開していますが、タイミングを見て、新しい動画も増やしたいです。いまの時代、『マインクラフト』のように、動画を通じて有名になるゲームがもっと増えてきてもいいと思うので。動画が作られるということは、誰かがそのゲームについて知る機会、メディアが増えるということですから。
――動画のほかに、『TrapTrip』に関して、実施を予定している施策はありますか?
鎌田 東京ゲームショウのYouTubeブースでは、19日の11時30分より、『TrapTrip』の実況イベントを行います。ぜひご覧ください。
※実況イベント視聴ページは→こちら
――ちなみに、『TrapTrip』の制作には、何人ほどのスタッフの方が携わったのですか?
鎌田 UUUMで関わったスタッフは、ほぼ僕だけです。ゲーム事業の部署があるわけではないので。
――えっ、鎌田さんがおひとりで!? プロデューサーとディレクターを兼務された……ということでしょうか。
鎌田 もう、ひとりではやりたくないです(笑)。でも今回、『TrapTrip』を作ってみて、ゲームの発売が延期する理由がわかりました(笑)。あの機能も入れたい、この機能も入れたいと思ってしまって。「こうやってゲームは作られているんだな」と理解しました。
――開発するうえで、YouTuberの皆さんからの取り入れたりはしましたか?
鎌田 ゲームの一部を少しずつ見せるようにして、意見をもらいました。全貌を見せてしまうと、いざ実況するときに、おもしろみがなくなってしまうと思ったので。
――『TrapTrip』の経験を活かして、今後、新しいゲームを作る予定はありますか?
鎌田 いまのところは決まっていません。もちろん、何かのきっかけがあって、新しいゲームを作り始める可能性はありますが。僕たちはゲーム会社ではないので、これを機に、ゲームで収益を上げようというつもりはないんです。『TrapTrip』も、課金要素はまったくありませんから。
――ゲームはあくまでも、動画を盛り上げるための施策のひとつということですね。
鎌田 僕たちが作りたかったのは“儲かるゲーム”ではなくて、“動画と実況に結びつくコンテンツ”です。動画を見る人、実況をする人を増やしたいと考えています。
――今後、ゲーム以外でチャレンジしてみたいと思うことはありますか?
鎌田 まだお付き合いのない企業の方といっしょに、皆さんがお持ちのIPとYouTuberを絡めた動画を作っていきたいですね。それから、YouTubeの外に出て、プロダクトを発信していきたいとも思っています。HIKAKINたちが曲を作って、音楽配信サイトでの販売を始めたのも、その一環です。11月21日には、U-FES.というイベントの開催も予定していますし。
――活動の幅は、YouTube内に留まらないということですね。
鎌田 これからも“動画”をキーワードとして、いろいろなことに挑戦していくつもりです。いっしょに取り組みたいと思ってくださる方は、ぜひご連絡ください!
TrapTrip ダウンロードページ(AppStore)
TrapTrip ダウンロードページ(Google play)
おしゃべりマルチ ダウンロードページ(AppStore)