ビデオゲームマニアには意外と国境がない

 先週末から今週頭にかけてシアトルで行われたゲームイベント“PAX PRIME 2015”。ビデオゲームについてのWebコミック“Penny Arcade”を発端とする本イベントには、最新の超大作からレトロゲームまであらゆるビデオゲームが集結し、来場者が遊び倒す。

 というわけでもちろん日本のゲームも当然のように出展。ここではインディー寄りのタイトルを中心にピックアップしてご紹介する(ちなみに会場が広大すぎて全部回れるわけもないので、取りこぼしがあるだろうことはご容赦頂きたい)。

■Playism『D4』/『La-Mulana 2

 日本のインディーゲームの海外展開も手掛けるPlayismは、世界からインディーゲームが集まるIndie MEGABOOTH内で自社ブースを出展。PC版のパブリッシングを行っているアクセスゲームズのアドベンチャーゲーム『D4: Dark Dreams Don't Die』と、NIGOROが開発中のアクションゲーム『La-Mulana 2』を披露していた。
 『La-Mulana 2』は7月に京都で行われたインディーゲームイベント“ビットサミット”に出展されたバージョンに改良が加えられ、ヘルスシステムが追加(関係者いわく「死ねるようになりました」)。まだ開発途上といった感じだが、アクションゲーム好きがやってきてはトライしていた。東京ゲームショウにもこのバージョンが出展される模様。また、Mac版をリリース予定であることも発表された。

全米のゲームマニア垂涎のイベントPAXで見た日本のビデオゲーム特集(インディー編)【PAX PRIME 2015】_02
▲PC版のパブリッシングを行っているアクセスゲームズの『D4』と、『La-Mulana 2』を出展していたPlayism。

■Funomena『Wattam』/FullPowerSideAttack.com『Torquel
 そのPlayismのお隣では、Funomenaの『Wattam』と、FullPowerSideAttack.comのアクションゲーム『Torquel』(配信中)がデモ。
 Funomenaは『風ノ旅ビト』のエグゼクティブ・プロデューサーだったRobin Hunicke氏が率いるスタジオで、本作では『塊魂』や『のびのびBOY』などで知られる高橋慶太氏がゲームデザインを担当。Mayor(市長)以下、寿司や花や芝刈り機など奇妙なキャラクターたちを操作して手を繋ぎ、友達を増やしては爆発することで進んでいくという、言葉では説明しにくい内容なのだが、これが遊びだすとじんわりまったりと楽しい。
 言葉で説明するより、触ると惹きこまれる設計は、まさに高橋氏の真骨頂。多分親が子供と遊んでも楽しいんじゃないだろうか。

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▲Playismブースの横で注目を集めていた『Wattam』は、高橋慶太氏がサンフランシスコのスタジオFunomenaで開発しているタイトル。

■17-Bit『宇宙戦士ガラクZ

 さらにそのお隣ではシアトルと京都で開発する17-Bitが、PS4/PC版の日本での配信が待たれるスペースシューティングアクション『宇宙戦士ガラクZ』を出展(海外ではプレイステーション4版がすでに配信中)。さらにパブリッシャーであるガンホーブースでモバイル版『Galak-Z: Variant Mobile』を出展していた。
 『宇宙戦士ガラクZ』は慣性の利いた宇宙戦闘を絶妙な操作で切り抜けるのが魅力のタイトルだが、モバイル版では基本的な戦闘システムを見事にタッチパネルに最適化。かなりPS4版に近いプレイ感で遊べたのが驚き。アニメ調のグラフィックとは裏腹にやりごたえありまくりのハードコアなアクションが楽しめるので、こちらの配信も期待したい。

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▲京都/シアトルの17 Bitは自社ブースのほかに『宇宙戦士ガラクZ』のモバイル版を出展。操作が最適化されていて、慣性のきいた独特なスペースシューティングが意外とタッチ操作で遊べちゃうのに驚き。

■Ackk Studios『YIIK

 その17-Bitの裏に出ていたAckk Studiosの“ポストモダンRPG”『YIIK』についても言及しておきたい。Ackk Studiosはニュージャージーのスタジオなのだが、『マザー』や村上春樹からの影響を公言していたり、トレイラーに使われている曲「The Machine and the Crow」を日本の丸山美佳氏が歌ってたりするのだ。
 ちなみにゲームはJRPGスタイルを参考にしつつ、ターンベースの戦闘で突然ミニゲームが始まったり、そもそもレコードで戦っていたり、現代設定にも関わらず精神世界のようなステージが出てきたりと、なかなかイッちゃっている感じ。

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▲レコードオタクが体育会系とバトったりするRPG『YIIK』。

クラウドファンディングを成功させた大物たちによるパネルも

 またPAXでは、さまざまな議題が取り上げられたり、クリエイターが自作について語ったりするパネルディスカッションも重要な要素。
 インディーの括りで扱うべきかどうかはともかく、今年は稲船敬二氏(comcept)と五十嵐孝司氏(ArtPlay)の、大手メーカーから独立してクラウドファンディングを成功させたクリエイターがパネルを行い、多くのファンを集めていた。

 というのも、こういったPAXのようなゲームファンが集まるイベントには当然クラウドファンディングで支援した人達が多く集まってくるので、情報のアップデートをしたり、ファンサービスをして報いるのにベストの機会なのだ(『La-Mulana 2』もクラウドファンディングで開発しているタイトルなので、デモ出展は出資者へのアップデートという意味合いがある)。

 ちなみに両者のタイトルの開発に関わっているインティ・クリエイツの會津卓也代表取締役社長は両方とも登壇。ファンが五十嵐氏と写真を撮る際にカメラマンをやらされていたりしたのだが、あの、その人えらい人だから……。また稲船氏の講演では、自社がパブリッシングするアクションゲーム『蒼き雷霆 ガンヴォルト』のフロッピーディスクを配布するという粋なプレゼントも(中にSteamでPC版をダウンロードできるコードが書かれているので、フロッピーディスクドライブは不要)。

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▲稲船敬二氏の講演では、なんと『蒼き雷霆 ガンヴォルト』のフロッピーディスクを配布(実はラベルにSteamのダウンロードコードが書かれている)

 そして五十嵐氏のパネルでは、アクションゲーム『Bloodstained: Ritual of the Night』のカスタマイズ要素も公開に。主人公ミリアムが「女の子なのでオシャレできるように」(五十嵐氏)頭部の装飾品や髪色などを変えられるそうで、装備にあたるものについてはパラメーターも変わるとのこと。

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▲『Bloodstained』のパネルではIGAこと五十嵐孝司氏が登場。カスタマイズ要素を紹介。メガネいいです。