プレビュー記事を書けない代わりにインタビュー記事をお届け!

 Bosskey Productionsが開発しているPC向けのオンラインFPS『LawBreakers』が、アメリカのシアトルで開催中のゲームイベント“PAX PRIME 2015”に合わせて、会場近くのイベントスペースで同タイトル初となる体験会を実施した。

 『LawBreakers』でプレイヤーは、専用の武器・能力を持つキャラクター(LawとBreakersで2種類ずつ)を選択し、必殺技やマップ内にある低重力空間や回復スペースなどのギミックを活かして戦う。
 体験会で披露されたのはLaw側とBreakers側の2チームに分かれて5対5で戦う“オーバーチャージ”と呼ばれるゲームモードで、マップ上にあるひとつのバッテリーを奪い合って自分の拠点に運んでチャージしつつ、100%の状態で保持するのを目指すというスポーツ性の高い内容だった。

 プレイできたのはプレアルファ版ということもあって、メディアとして正式なプレビュー記事を書くことは禁じられているものの、本誌ではそれを承知であえて体験プレイ。その上で、スタジオの2トップであるクリフ・ブレジンスキー氏とアージャン・ブリュセー氏へのインタビューを敢行した。
 かつてエピック・ゲームズで『ギアーズ・オブ・ウォー』シリーズを手掛けたブレジンスキー氏と、ゲリラゲームズで『キルゾーン』シリーズの開発を指揮したブリュセー氏は、本作をどのようなシュータータイトルにしていくのか?

『ギアーズ・オブ・ウォー』と『キルゾーン』の生みの親がタッグを組んだFPS『LawBreakers』について、2トップにインタビューで直撃【PAX PRIME 2015】_01
▲左がブリュセー氏で、右がブレジンスキー氏(なぜかKawaiiピース)。前世代の家庭用ゲーム機でPSプラットフォームとXboxプラットフォームのアクションシューターの大作を手掛けたふたりがタッグを組んで、ルーツであるPCで新たなFPSに挑戦するのが『LawBreakers』だ。

往年のハイテンポなスキルベースのFPSに、今時の要素をブレンド

――ゲームをやっとプレイできたんですけど、楽しかったです。低重力ゾーンを入れるアイデアはどこから来たんですか?
ブレジンスキー 色々なアイディアが一緒になって出てきたものなんだ。一番最初の発端は子供の頃の夢。家の庭でオプティマスプライムのフィギュアで遊んでいたら突然重力が逆さまになって「神様!」って叫びながら草にしがみつく怖い夢をみたことがあって、それが今も頭に残っていて、「クルマが急に空に吸い上げられたらどうしよう?」とか考えるんだよ。

 それと、オリジナルの『アンリアルトーナメント』や『Quake』のマップにも低重力が入ってるよね。いま『コール オブ デューティ』をプレイしている10代から20代の子はそんな頃の要素は知らないわけだけど、ファッションや音楽みたいに、10年〜15年もしてルールが一巡すると、ひねりを加えて新しい世代に紹介することができる。その世代の若い子たちは「今度はダブルジャンプできんの!?」とか言ってて、僕らは「(昔あったけど)あ、うん、そうだねー」なんてことあるじゃない。彼らにとっては新鮮なものとしてハマってるわけだ。

 映画「ゼログラビティ」の強い印象も頭に焼き付いている。サンドラ・ブロックが消火器を間違った方向に撃った時とかね。「ウォーリー」でも同じようなトリックがあった。いろいろ本も読んだよ。
 さて、こうしたことがいろいろ一緒になってひとつの方向ができたんだ。フィクションとしてはプレイするにあたって一応いろいろなことが説明できなきゃいけないけど、ミステリーも残してる。政府の実験によって月が破壊されて大打撃を受けるが、人類は文明を再構築する過程で変化した重力をうまく利用するようになるってハナシだ。月をぶっ壊した図は気に入ってるよ。

――それこそ『Quake』や『アンリアル』の時代のスキルベースのFPSの香りを感じるんですが、本作は完全に性能がフラットではなくて、格闘ゲームのように固有武器や固有スキルがあるわけです。こうした理由は?
ブレジンスキー 『Quake』などのスゴい試合を見ると上達するのは難しいように思えるけど、数日気合を入れてプレイすれば新マップでもなければ大体把握はできて、そこからあまり変化はないよね。
 このゲームでは、ロケットランチャーやライトニングガンだけでなく、ADS(エイムダウンサイト/照準の覗き込み)のあるライフルなんかも入っている。バラエティが必要だと思ったんだ。そして低重力もある。

 またプレイヤーはゲームの中でキャラクター性を欲しがるということを認識する必要がある。ヒーローということではなくて、どんな役割を演じるか。Kitsuneだったらヤクザ・アサシンの彼女を演じるわけだ。『League of Legends』をプレイする時ほどではないけど、『LawBreakers』は『チームフォートレス』との中間ぐらいにそういったキャラクターへの没入があると思う。ゲームの基本はまず最初の30秒間を楽しく、それを30分、30日、30ヶ月のスパンでも実現できるように設計していきたいんだけど、今はこの最初のふたつができてきたと感じている。

――たとえばChronosやKitsune(いずれもBreakersのキャラクター)のLaw版的な、逆サイドのリバース・キャラクターを入れる可能性はありますか?
ブリュセー 今回のデモでは各サイドふたりずつだけど、これからいろいろミックスして、同じ役割のキャラクターを両サイドに入れていこうと考えている。キャラクターの違いははっきりわかるようにしたいね。
 例えばLawのMaverickにあたるキャラクターがBreakersにいるとすればどうなるか。Maverickはアメリカっぽいキャラクターなんだけど、もっとメカ的だったり、戦闘機っぽくなるかも。最終的には各サイド5-6タイプになっていくと思うんだけど、これから検討していきたい。

ブレジンスキー KitsuneのLawバージョンがどうなるか楽しみだね。ヤクザ・アサシンというコンセプトは自然に出来たんだけど、Lawだったらどうするんだろう? みんなでどんなひねりを入れるか楽しみにしているよ。

――高機動なギミックがあるぶん、通常の移動スピードがちょっと遅く感じることもありました。ブーストなどのパワーを使い切ったガス欠状態でどうプレイしますか?
ブレジンスキー ゲームがずっと同じテンションというのは嫌なんだ。スローな状況もあれば、パワーが加わって無重力状態をかっ飛び、上下にスライドしてロケットが飛んでくることもあるような。それがずっと続くのもよくない。ずっと怒鳴っていたり悪態をついている人の話を聞かなくなるように、山あり谷ありがいい。速いキャラクターだってスローな時がある。Kitsuneのグラップリングに制限がなかったら彼女を撃つことなんてできないさ。3つしか持ってないから落とせるんだ。
ブリュセー 完全にガス欠になってクールダウンに入ると時間がかかる上にスローになる。そこはスキルが必要だね。
ブレジンスキー 学習して欲しい部分ってことさ。

――シールドやアーマーシステムなどを入れる予定は?
ブレジンスキー 今はやらない。実験してみたけど、結局どれだけヘルスがあるかわかりにくい。『Halo』はエネルギー・シールドがあるからそれができるわけだけどね。異なる役割をコントロールしていくだけで結構大変だと思うから、まずはストレートにヘルスだけで行くよ。
ブリュセー スペシャル・アビリティとしてそういったものを取り入れていく可能性はあるけどね。

――ではミニマップをつけなかった理由は?
ブレジンスキー これも実験して決めたことなんだ。プレイヤーはミニマップをまったく見ないか、そればかり見ているかのどちらかだというのがわかった。ちゃんと音を仕込んだりして、状況把握が出来るようにすれば必要ないと思ってるよ。

固有武器・技持ちのキャラクター性FPSが増えた理由は『LoL』?

――『コール オブ デューティ ブラックオプスIII』とか、Blizzardの『Overwatch』なんかでも似たようなキャラクターに固有の武器や技といった個性を持たせたシステムを採用していますね。このトレンドについてどう思いますか?
ブレジンスキー いろいろなゲームが取り入れてるね。『League of Legends』などのヒーローベースのゲームのシステムの成功を追いかけているからだと思う。それはそれでいいことだと思うんだ。
 一方でアートの面では、『コール オブ デューティ』は軍隊モノに根ざしたミリタリーファンタジーで、『Overwatch』はもっとカートゥーン的。ウチとしてはその中間を狙っている。アフガンにいると感じて欲しいわけではないし、ミリタリーものはもうちょっとやめて、もっとカラフルな所を攻めたい。でも映画のレーティングで言うとPG13(ややマイルドな暴力)よりも、もう少し大人向け。PAXのショーフロアに行けばわかるけど、いまはピクサーっぽいゲームも多いからね。

――デモは5対5でしたが、より大きいモードはあるんでしょうか?
ブレジンスキー 今は5対5だ。アージャンは『バトルフィールド ハードライン』に関わったから、大きいゲームの恐怖について聞いてみるといい。
ブリュセー 人数が増えるとそれだけ大きなマップが必要になり、長く歩かなくてはならなくなって、実際の戦闘がある場所に到達するのに2分歩かなくてはいけないというようなことになる。それで着いたらすぐ死んじゃったってんじゃあ楽しくない。ゲームはタイトかつ速いものにしたいんだ。
ブレジンスキー その中で生まれるライバル性を大事にしたいんだ。5対5で誰かを何度も何度も倒したら、その人はウチに押しかけてきて顔を殴るだろう。バトルフィールドシリーズではよくあることだ。あ、でももしウチに押しかける時は、少なくともまずベルは鳴らしてね。

――チームデスマッチやキャプチャー・ザ・フラッグなど、他のモードは?
ブレジンスキー 検討しているところだ。何が入るかは約束できない。ところで今日プレイしてみてどうだった? 片方のチームの一方勝ちだったのか、バランスが取れていたのか? オーバーチャージは、片方がスコアして、もう一方がスコアを入れて、最後の5秒で勝負が決まるというのを目指している。わくわくするからね。今日はどうだった?

――一回バッテリーを相手の陣地にホールドされちゃうと辛かったですね。
ブレジンスキー ハハ、一方的だったようだね。

――オーバーチャージモードはどういうコンセプトでデザインしたのか、もう少し詳しく聞いてもいいですか?
ブレジンスキー 元Valveのスコット・ジョーダンが中心になって作った。『チームフォートレス2』にも関わった優秀なリード・レベル・デザイナーだ。自分が大事にしているのは、グルッと円陣になって時間の経過を待つようなモードは作らないということ。ドラマが欲しいんだ。今年のスーパーボールでも――ああ、出張で忙しくて立ち会えなかったが――最後の最後にどんでん返しがあった。これが欲しい! 人はこれで熱狂する。ビデオゲームでもこういう瞬間が優れたエンターテインメントだと思う。eスポーツでもいつかそうなるかもしれない。

日本展開は未定。しかし登録はしておいてもいいかも

――Mod(プレイヤーが作成した拡張)のサポートは?
ブリュセー それができるエンジン(アンリアルエンジン4)で開発しているので、いずれは検討することになるかもしれない。コミュニティがマップを作ってくれるかもしれないが、いまは40人という小さいチームで、MODサポートにもちゃんとエコシステムを整備する必要があるからね。

――日本でもプレイ出来るようになるんでしょうか? パブリッシャーのネクソンさんが決めることかもしれませんが’。
ブレジンスキー プリアルファと呼ぶものかどうかわからないけど、とにかく初期バージョンを2016年の初めには出す。その際にはまず欧米にフォーカスする。というのは、順番に段階的にモニターしていかないとわからないからね。たとえばアメリカ、ロシア、日本、中国では、それぞれ何にどれだけ払うかという価値観が異なる。ロシアではゴールデン・タンクを買って勝ちたいという人が多いかもしれないが、アメリカではそうはいかない。アジアについてはまったくわからないからさ。

――F2Pとしてどのようにやっていくんでしょうか?
ブリュセー 今はまだ決定していない。このゲームにはどのやり方が適しているかを検討する必要があるね。今のゴールはまず、欧米でうまくいくものを選択すること。ネクソンアメリカはこれからオリジナルのタイトルを展開していくところだから、このようなタイトルで何がうまくいくのかを検討することになる。完全に無料でスタートするのか、20ドルくらい払って何かを入手するようなものなのか。カウンターストライクのようにするのかなど、いろいろ見ているよ。
 ベストなタイトルにはなりたいが、課金が乱用されるタイトルにはしたくない。モバイルでは特にお金で時間を買ったりレベルを上げたりことが多いけど、それはしたくないし、PCではできないしね。その辺りはこれから検討していくが、まずは優れたゲームを作ることに注力したい。人々が何十時間も、やがては何千時間もプレイしたいと思うものにしたいんだ。

――日本でプレイしたい人はとりあえず登録した方がいいんでしょうか? それとも無駄にならないよう展開のアナウンスがあるまで待ったほうがいいですか?
ブレジンスキー サインアップしておくのに越したことはない。自分たちとしても、世界中の熱心なゲーマーのコンタクト先をチェックしたりしてるしね。動画が出る前からついてきてくれている人たちは特別な存在だけど、その先のフェイズ2のアルファ、ベータなどにはアクセスできると思う。フェイズ1は5000人くらいのコアファンのためのものだからね。