ビデオゲームの表現の歴史を縦横無尽に行き来するゲームの新作
Shiro GamesのアクションRPG『Evoland 2』を紹介する。本作のプラットフォームはPCで、SteamとGOG.comで販売中。言語は英仏独に対応。価格は1980円。
本作は、PC/iOS/Androidなどで発売されている『Evoland』(iOS/Android版のみ日本語アリ)の精神的続編。JRPG風のゲームの進行に応じてビジュアルやプレイ要素がゲーム史的に進化していくユニークなタイトルが超絶パワーアップして帰ってきた!
ゲーム表現史のパロディというコンセプトが強かった前作
気がついた人もいるかもしれないが、公式サイトにも書かれているように、本作はあくまで『Evoland』の精神的続編(spiritual successor)であり、普通の続編ではない。なぜ同じ開発のゲームで、しかも2とついているのに、わざわざそんな言い方をするのか? それは本作が前作と似たようなビジュアルコンセプトでありながら、ゲームそのもののコンセプトがまったく異なるゲームだからだと思う。
オリジナルの『Evoland』は、「JRPG風のゲームの進行に応じてビジュアルや要素がゲーム史的に進化していく」というコンセプトとビジュアルが深く紐付いた作品だった。しかし、色数の少ないドット絵で始まったゲームが徐々にカラフルになり、解像度が上がり、3Dになっていくというスタイルそのものは面白いのだが、5時間ほどでクリアーできる短編ということもあって、(主に日本の)ゲーム表現の歴史のパロディというコンセプト以上のプラスαはあまりなかった。
コンセプトのための作品から、コンセプトを通じての王道再生へ
それに対して『Evoland 2』は、オリジナルの“過去のゲームのビジュアルスタイルやゲームデザインを縦横無尽に行き来する”という部分を、時間旅行によるタイムパラドックス物語に重ね合わせた、紛うことなきRPG作品なのだ。
そのスタイルは、オープニングから清々しいほど王道中の王道。謎めいたプロローグ、記憶喪失状態での目覚めと少女との出会い、村の近くでの冒険、もしかするとラスボスかもしれない連中との遭遇と小ボスとの戦闘、そして不意に起こる最初のタイムスリップと、それによって始まる元の時代に帰るための旅……と、往年のスクウェア作品を思わせるド直球ぶりだ。
もちろん“元ネタ”がわかる20~30代以上を対象にした作品であるため、オマージュ的なネタや昔のRPGにあったようなご都合主義的なセリフをいくらか交えたりもする。しかしあくまでわかる人にはわかるユーモアの範疇だ。ふざけようと思えばいくらでもふざけられると思うが、オリジナル『Evoland』のように主人公を名無し状態で延々と引っ張ったりもせずに、とっとと名前を入力させ、物語を堂々と展開していく。本作には語るべきストーリーがちゃんとあるからだ。
Shiro Gamesはフランスのボルドーにあるゲームスタジオだが、これはまさにフランスからのJRPGを始めとする日本の往年のビデオゲームへの本気のラブレターであり、自分たちで王道の作品を作ろうというチャレンジだ。
だから、例えばゼルダスタイルのマップ上の謎解きや、レイトン教授のようなパズルが出てくるシーンなどを取ってみても、前作と比べると作り込みのレベルが違う。「こういうパズルあったよねー」という形だけのものじゃない、ちゃんと謎解きさせるためのパズルになっている。
遊びごたえもボリュームもたっぷり。それだけに日本語対応が欲しい
そんな感じに遊びごたえはもちろん、ボリュームも大幅にアップしており、価格が2倍になった分、それに見合ったものはあると思う。オマージュ対象も、ゼルダ、FF、レイトン教授、聖剣伝説、ボンバーマン、DDR、ダブルドラゴン、ストリートファイター……と幅広く、この辺のゲームを通ってきている人なら、懐かしさにニヤリとしながら、この奇妙な冒険に惹きこまれていくことだろう。
あえてリクエストをするならば、やはり日本語ローカライズが欲しいところ。ゲームの進行に関係ないNPCなどにもちゃんと細かくセリフを割り当てていて、ギャグなども仕込んであるのだが、軽妙なやり取りであればあるほど、英語に慣れていないとすんなり入ってこない。インディーゲームの日本語ローカライズも増えてきているので、どこか手を上げてくれないだろうか?