最愛の友達を探すため、少女は小さな旅に出る。

 Tiger & Squidによるアドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』を紹介する。本作のPC版はSteamで配信中。価格は1480円(執筆時点では発売記念のセール価格で1332円)。海外ではXbox Oneでも配信されている。

 『Beyond Eyes』の主人公は、不幸な事故により失明してしまった少女Rae。失意とともに過ごしていた彼女を救ったのが、家の庭にやってきた猫のNaniだった。そうしてNaniが彼女の支えとなってからいくつかの季節が過ぎたある日、Naniは家に来なくなってしまう。Raeは勇気を振り絞って、最愛の友達を探す冒険に出る。

 本作の最大の特徴は、失明した少女が知覚する世界をビジュアライズしたアートスタイルにある。Raeが歩きまわって音や匂いで周囲を知覚することで、真っ白で何もなかった世界が水彩画のようなタッチで彩られていくのだが、これがなんとも美しい。
 単に見た目だけでなくアドベンチャーゲームとしてのギミックにもなっていて、遠方から鳴っている音が視覚化されることでプレイヤーを誘導したり、音から受けたイメージと実際にあったものが異なる“錯覚”が仕込まれていたりもする。

失明した少女が“視る”水彩画のような世界。アドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』_04
▲とにかく水彩画風のアートスタイルが美しい! 彼女が歩くことで、世界が美しく彩られていく。
失明した少女が“視る”水彩画のような世界。アドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』_02
失明した少女が“視る”水彩画のような世界。アドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』_03
▲彼女は音や匂いから世界をイメージしている。近付いてみたら実際にそこにあった物が全然違っていたなんてことも。

 探索アドベンチャーとしては、彼女の行動は非常に限定されていて、まずはとにかく歩き回って、Naniがそこを通ったであろう気配を発見し、追っていくのが基本。
 周囲が見えていないと迷いまくりそうだが、ルートの分岐や広いオープンエリアなどはなく、足元の小道や遠くに見えたものなどを参考にしつつ歩いて行けば大体問題ない。時折、彼女が怯えて通れないもの(犬やクルマ)が配置されている場所があるが、迂回して別の道を探したり、通れるようにする方法を探す若干の謎解き要素となっている。

失明した少女が“視る”水彩画のような世界。アドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』_05
▲彼女が怯える怖いものは黒いオーラで示される。迂回するのがほとんどだが、なんとかして通れるようにする謎解きになっていることもある。

 ただし、それでもヒントに気付かないと迷うポイントが数カ所あり、彼女の歩くスピードが遅いのもあって、中盤以降で若干のストレスになるのは否めない。もし迷ったら「進める方向に進んでいる間は大体合っている」、「大きく戻らされるような仕掛けはない」という記者からの助言を参考に、周囲をもう一度よく見渡してみて欲しい。

 全体で90分前後でクリアーできるコンパクトな内容ながら、世界を発見する喜びに満ちた本作。スタッフロール後まで続くエンディングには、静かな感動が待っている。値段相応と感じるかどうかは人次第だが、アートスタイルにグッと来た人ならそう間違いはないのではないだろうか。

失明した少女が“視る”水彩画のような世界。アドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』_01
▲彼女は見えないなりに世界を発見していく。本筋とは離れたところに実績が隠されていることも。