今度はアクションRPG! 菊田裕樹氏も参戦予定

 Lab Zero Gamesは、格闘ゲーム『スカルガールズ』を開発した小規模スタジオ。現在は新作の『Indivisible』を開発中だ。『Indivisible』は『ヴァルキリープロファイル』や『スーパーメトロイド』に影響を受けた新IPのアクションRPGタイトルであるとされており、サウンドを菊田裕樹氏が提供予定。現在は公式サイトがオープンしており、ティザートレイラーを公開して、Indiegogoでのクラウドファンディングの予告をしている。

現在はプロトタイプを開発中。クラウドファンディング前に公開予定

 そんな『Indivisible』だが、すでにパブリッシャーとして505 Gamesと契約していることを公表しており、505 Gamesの公式サイトではLab Zero GamesのCEOであるPeter Bartholow氏により、パブリッシャー契約とクラウドファンディングの関係について説明が行われている。

 いわく、現在は505 Gamesが開発費を負担する形でLab Zero Gamesがプロトタイプの開発を行っており、これは完成したらデモとして公開予定。そしてそれを材料に9月に製品化に向けたクラウドファンディングを開始する予定だ。

 一方でクラウドファンディングはPR効果のためにやるのではないと明言しており、目標額をクリアーしなかった場合は、(なんだかんだで505 Gamesが全額出資するのではなく)残念ながらプロジェクトはキャンセルになる。逆に目標額をクリアーした場合は505 Gamesが残りの開発費を支払うだけでなく、発売時の利益分配についても、従来のパブリッシャー契約と比較してLab Zero Gamesがより多くの収入を得る契約だという。

開発、パブリッシャー、ファンの三者でリスクと負担を分散

 これはいわば、開発元Lab Zero Gamesとパブリッシャーの505 Gamesとファンの三者で、クラウドファンディングによる制作のリスクを分散させる形だ。

 まずLab Zero Gamesは、505 Gamesからのサポートでプロトタイプを前提にクラウドファンディングをスタートさせることができる。自社単体でクラウドファンディングをやるよりも各種サポートを得られるし、成功時の収入が従来のパブリッシング契約よりも大きい(ただし失敗した場合は恐らく505 Gamesに話を持って行くまでに自己資金を使った分が無駄になるし、そもそもキャンセルがキツい)。

 次に505 Gamesは、プロジェクトが失敗した場合はプロトタイプ分の出資が無駄になるし、発売時の利益分配の比率が下がるが、通常のパブリッシャー契約として全額出資する場合より少ないリスクでパブリッシングできる。また、クラウドファンディング終了後にパブリッシング契約をするケース(後述)よりも、立ち上げ段階から積極的に展開に関わっていけるというのも大きいだろう。

 最後にファンは、「未完成のゲームに出資しなければいけない」というクラウドファンディング共通のリスクに対して、このケースではプロトタイプを遊んで出資に値するか判断できる。クラウドファンディング開始時にプロトタイプが提示されていることはあまりないが、きちんと動くものを見て判断できるのはありがたいところ。さらに505 Gamesの出資援助により、相対的な負担額も減る。

『スカルガールズ』のLab Zero Gamesが新作で提案する、クラウドファンディングとパブリッシャーのスッキリした関係_01

透明性を上げてパブリッシャー契約との相性の悪さを相殺

 そして三者に共通するメリットとして、プロジェクトの透明性が挙げられる。クラウドファンディング成功から発売までの流れが前もって提示されているので、突然パブリッシャーとの契約が発表されたり、追加出資を求めるクラウドファンディングが行われて炎上するということが起こりにくい。

 なぜパブリッシャーとの契約が問題になるかと言うと、そもそもクラウドファンディングが、パブリッシャーからの出資が期待できないニッチなゲームや古いIP(精神的続編を含む)が生き残る道だったり、クリエイティブ面の独立性を維持したいクリエイターの資金獲得手段として発展してきたという経緯があるからだ。
 少なくともイメージの上で相性が悪いし、個人的にはゲームがちゃんと仕上がってくれて遊べればなんでもいいのだが、「ファンにリスクを背負わせておいて、後から美味しいところだけ持ってくなら最初から直接投資しろ」といった意見も、筋論として気持ちはわからないでもない。

 実際には、クラウドファンディングで集まった額では開発費に到底足りないため追加投資が必要だったり(本来それではいけないのだが、よくあることだ)、PR/マーケティング/流通といったパブリッシャーが持つ出資以外の機能が必要だったり、クラウドファンディングで話題になったことで理解あるパブリッシャーに発見されて展開を拡大しようという話になったのだったり、契約に至る理由はいろいろある。
 なので個々のケースでも事情が変わる際にそれなりに説明されるのが普通だが、なんせクラウドファンディングの場合、ファンの数だけ説得しなきゃいけない出資者がいる。イメージの相性が悪ければ、そういう実情はなかなか聞いてくれないものだ。

 そうした中で今回のケースのように、最初から誰が何を負担し、どういう契約関係なのかが示されていれば、少なくともその範疇の出来事ならば納得することができる。例えばもし、それでも505 Gamesが全額出資しないのに納得できなければ、単に乗らなければいいだけで、話はシンプルだ。
 実質的にクラウドファンディング後にパブリッシャー契約をするケースが相次いでいる以上、全部クラウドファンディングでやるか全部パブリッシャーの出資でやるかという0か1かの話をするよりも、こういう最初からハイブリッド型でやる選択肢もあった方が健康的じゃないかと思うのだが、いかがだろうか。