クリエイターの情熱を生々しく歌い上げる、圧倒的ソウルフルボイス
ヤマハは、歌手“小林幸子”の声をもとに開発した“VOCALOID4”対応の女性歌声ライブラリ“VOCALOID4 Library Sachiko”を発売した。
VOCALOIDとは、ヤマハが開発した歌声合成システムで、2004年に第1弾がリリースされ、以後“VOCALOID2”、“VOCALOID3”、そして昨年2014年冬に最新作品である“VOCALOID4”が発売されている。高い人気を誇る“初音ミク”や“鏡音リン・レン”といったソフトは、ヤマハのVOCALOIDに、クリプトン・フューチャー・メディアやほかのメーカーが、声優の声などを使った歌声ライブラリ（データベース）を乗せて発売したものだ。
今回、歌手“小林幸子”さんの声をもとに開発したVOCALOID関連の新製品“VOCALOID4 Library Sachiko”が発売。池袋・ニコニコ本社にて発売記念イベントが行われた。その模様をリポートする。
まず登壇したのは、ヤマハのVOCALOID プロジェクトリーダー・石川克己氏。石川氏は、「VOCALOIDの発表から15年となり、プロジェクトの中で“歌の力”という原点に返りつつも、新しい新境地を開拓して行きたいと思っていました。その中で、新しい文化や音楽、コミュニティに積極的にアプローチしている、かつ圧倒的な歌唱力をお持ちの小林幸子さんとコラボさせていただけないだろうか、というきっかけから今回のプロジェクトが始まりました。今日お披露目となった“VOCALOID4 Library Sachiko”で、クリエイターさんの手によって過去のジャンルにとらわれない新しい音楽が満たされていけばと思います」とコメントした。
続いて、“VOCALOID4 Library Sachiko”の声を担当した小林幸子さんが登場。オファーがきたときの心境について、ボーカロイドの父としておなじみのヤマハの剣持秀紀氏から“VOCALOID4 Library Sachiko”の話を聞き、「私、初音ミクちゃんになるんですか!?」と非常に驚いたとのこと。
“VOCALOID4 Library Sachiko”の収録については、いままで経験した収録とはまったく違い、初めての経験だったとのこと。収録では約400の言葉のサンプルを収録したとのことで、小林さんは「歌を歌うと思ったら、言葉や熟語をあ行から順に50音ずつ収録しました。ものすごい数の収録でしたね。ふつうのレコーディングだと声は枯れないのですが、VOCALOIDのレコーディングでは、つぎの日声が枯れてしまいましたね（笑）」とコメント。収録での苦労がうかがえた。
続いて、“VOCALOID4 Library Sachiko”を使用したデモストレーションでは、開発者であるヤマハの吉田雅史氏が登壇。短いフレーズのメロディーに、“VOCALOID4 Library Sachiko”の特徴でもある“小林幸子”本人の歌いまわいしを簡単に再現することができるジョブプラグイン“Sachikobushi”が披露された。
この初の試みとなる“Sachikobushi”は、小林さんの歌いかた、節まわしなど深い所まで表現できないか？ という思いから始まった試みとのこと。
小林さんのこれまでの歌唱データから“こぶし”や“しゃくり”などの特徴を徹底的に分析し、本人に近い歌い回しを再現。声の立ちあがりや揺れ幅などの効果を選ぶだけで、小林さんの歌いかたを簡単に反映させることができるのだ。
石川氏は「新しい試みで、チャレンジングなテーマだった」とコメント。小林さんは、「いままでのVOCALOIDは、こぶしの表現がなかったので、初の試みとなってうれしい！」と喜びを見せていた。
さらに、小林さん本人による掛け声や会話など、楽曲制作に使える400以上の豪華ボイスマテリアルが付属され、曲中のアクセントに最適な掛け声などが使えるようになっている。今後これらの機能を使ってどんな楽曲が制作されるのか、非常に楽しみである。
また、イメージキャラクターの“Sachiko”のデザインにイラストレーターの碧風羽氏が起用。“Sachiko”には小林さんの出身地である新潟県の県木“雪椿”があしらわれ、和のテイストと洋のテイストが混ざりあったデザインとなっている。パッケージの“sachiko”の文字は、小林さんの直筆によるものだ。
なお会場では、“VOCALOID4 Library Sachiko”で制作されたDEMO Song『星に抱かれて』Sachikoカヴァーが公開された。楽曲はYouTubeでも公開されているので、ぜひチェックしてほしい。
【Sachiko】星に抱かれて カバー【VOCALOID4 Library】
最後に石川氏は、「ヤマハとして会心の自信作となりますので、ぜひ多くクリエイターの手に取ってもらいたい」とコメント。吉田氏は「“VOCALOID4 Library Sachiko”で作成されたVOCALOIDの楽曲を、ぜひ小林幸子さんご本人にカバーしてもらいたい！」と、いままでにないプランも飛び出した。それを受けて小林さんは、「本来は私の曲をカバーしてもらうことが多いですが、私が“VOCALOID4 Library Sachiko”の曲をカバーするという初めての経験ができるかも？ 小林幸子の歌でどういう歌ができるのか、演歌を知らない世代の人たちによる演歌ができるかもしれないと思うと、とても楽しみです。ぜひジャンルを問わずに楽しんでいたければと思います」とコメントした。
“Sachikobushi”などさまざまな新機能が搭載された“VOCALOID4 Library Sachiko”。新機能で表現の幅が広がるだけでなく、演歌など新たなジャンルの展開に期待したい。
