静かな森の中で人知れず繰り広げられる、奇妙な生物たちの死闘

 スイスのBits & Beastsによる2Dプラットフォームアドベンチャーゲーム『FEIST』を紹介する。プラットフォームはPC/Mac/Linuxで、Steamほか各プラットフォームで販売中。参考までにSteamでの価格は1480円(7月30日までさらに10%引き)。

 本作の主人公は、手足を持った毛玉のような小さな獣だ。『FEIST』というゲームは、彼が閉じ込められた小箱が森の中に宙吊りにされているところから始まる。
 どうしてそうなったかはわからない。どうやら先にここを通過した大きな獣と関係しているようなのだが、彼ら(人間同様に二足歩行し道具を使いこなす)に狩りの餌か生け贄にでもされたのか、あるいは別の理由か……。ともあれプレイヤーの目的は、箱から脱出し、恐ろしい生き物たちが棲む森の中を進んで、大きな獣の一団を追うことだ。

影絵のように浮かび上がる、森と恐ろしげな生き物たち。2Dプラットフォームアドベンチャー『FEIST』_02
▲主人公は真ん中のケサランパサラン的なやつ。針を撃ってくる蝿的な生き物や棘のついた毛虫的な生き物(左)なんかに対処しながら、中央右のデカい獣の一団を追っていくのが目的。

一見『Limbo』っぽいが、かなりアクション寄り。

 本作の影絵風の画面を見て、Playdeadの2Dプラットフォームアドベンチャー『Limbo』を思い出す人も多いと思う。アートスタイル以外にも、言葉で一切説明しないストーリーテリングや、物理エンジンを使ったパズルなど、『Limbo』との共通点は多い。

 だが、ゲームの中心となる部分は異なる。『Limbo』が、デストラップだらけの煉獄(Limbo)をパズルを解いて進む、あくまでパズルメインのゲームだったのに対し、『FEIST』はパズルもありつつ、戦闘の占める割合が非常に大きい(敵を無視して先に進んでもいいが、ある程度は対処しないと先に進むためのパズルを解きにくくなる)。

 その戦いの様子をタイトルになぞらえるならば、まさに小回りのきいたキャンキャンうるさい小型犬(FEIST)のごとし。森のさまざまな生物に狙われるひ弱な存在でありながら、知恵と機動性の高さを活かして飛び掛かり、周囲の環境と他の生物の習性、そしてわずかばかりのアクション(拾った棒で殴るとか、物を投げたり押すとか)を最大限に活用して、邪魔な生物を撃退していく。緊張感も高く、特に各ステージラストのボス戦はAIの出来が良く敵がヌルヌルと動き回るので、まさに死闘を繰り広げている感じが味わえる。

影絵のように浮かび上がる、森と恐ろしげな生き物たち。2Dプラットフォームアドベンチャー『FEIST』_01
▲敵の動きの反応がいい感じで、ちゃんと戦っている感じが味わえる。ハエは棒で叩き落としてから捕まえると銃の代わりにできます。

雰囲気は最高! ネックは尺の短さ。

 シーンによっては結構機敏な操作と立ち回りが求められ、『Limbo』のように“正解の動きさえわかれば後はタイミングだけ注意”という設計ではないので、アクションが苦手な人にはちょっと大変かも。ただ敵の攻撃で即死することはほとんどなく、マップ中に飛んでる羽虫を取れば回復もできるので、即死トラップにひっかからなければ、多少の操作ミスはリカバリーできる設計。

 そんなわけでゲームのテンションはかなり違うのだが、『Limbo』に出てくる奇妙な生物たちが織りなす生態系の、あのなんとも言えない無常感が好きだった人には正直たまらない内容だと思う。強いて難点を挙げるならば、尺が短いこと(2時間程度でクリアー可能)と、そのために戦闘に絡んでくるギミックのバリエーションがちょっと足りないことだろうか。

影絵のように浮かび上がる、森と恐ろしげな生き物たち。2Dプラットフォームアドベンチャー『FEIST』_03
▲各ステージのボスは異なる能力を持ち、例えばコイツは追尾する光弾を複数放ってくる。それ以外の敵も多いので、緊張感はマックス。ただ贅沢かもしれないが、もうちょっといろんなバトルや、もっと習性を利用して同士討ちさせるような仕組みが欲しかったかも。