2大格闘ゲームを擁するアークシステムワークスの新世代戦略とは?

『ブレイブルー』や『ギルティギア』に続く新しい格闘ゲームを! アークシステムワークス・木戸岡稔氏インタビュー【ゲームメーカー新世代戦略】_01
▲アークシステムワークス
代表取締役社長
木戸岡稔氏

 格闘ゲームを代表する『ギルティギア』と『ブレイブルー』という、ふたつの人気シリーズを手掛けているアークシステムワークス。圧倒的なクオリティーと職人気質とでも言うべき細部へのこだわりで、多くのプレイヤーから支持を集めている。今年は、その両シリーズの最新作がアーケード向けに稼動予定だ。さらに同社は、元テクノスジャパン関連タイトルのライセンスを獲得したことを明らかにしたほか、他メーカーのソフト開発の受注も手がけるなど、ますます活躍の幅を広げている。そんなアークシステムワークスの格闘ゲームに懸ける思いや、新世代機、海外でのコンテンツ展開について、代表取締役社長の木戸岡稔氏に、現状と今後の展望を聞いた。
※この記事は、週刊ファミ通7月30日号(2015年7月16日発売)に掲載されたものと同内容です。

『ブレイブルー』と『ギルティギア』、2大格闘ゲームが揃い踏みした2014年

――前回のインタビュー(2013年8月8日号)から約2年が経過しました。当時はダウンロードソフトのリリースが多く、2012年はパッケージソフトが1本のみの発売でしたが、その後の2年間は7本、6本と増えました。何か方針の変化があったのでしょうか?
木戸岡稔氏(以下、木戸岡) 方針を変えたというわけではありません。ゲームの開発には時間もかかりますし、しかも遅れることがあるので、発売するソフトの数は年によって変わります。ここ2年は安定してパッケージソフトを発売することができました。弊社は5月で会計年度が変わるのですが、2014年度は『ギルティギア』と『ブレイブルー』という主力シリーズの最新作が、たまたま同じ年度に発売されました。ただ、その反動のせいか、後半はタイトルのリリースが減りそうな予感がしています(笑)。

――『ギルティギア』にしても『ブレイブルー』にしても、相当作り込んで開発されています。発売時期が前後するのは、やはり作り込みの影響なのでしょうか?
木戸岡 いえ、むしろ『ギルティギア』や『ブレイブルー』は、それほど発売時期が延びることはありません。2013年には、弊社の設立25周年に合わせて『ギルティギア』の新作を出すことになりましたが、その『ギルティギア イグザード サイン』もなんとか翌年2月にはアーケード版を稼動することができました。稼動日が大幅に延びてしまうと、会社がたいへんなことになります(笑)。逆に中規模タイトルのほうが、発売時期が延びやすい傾向にあるので、主力タイトルは極力延期しないよう、スタッフ総力戦でがんばっています。それでも、どうしても年度別で見ると、タイトル数にはばらつきが出てしまいます。

――今後、パッケージタイトルを増やしていこうという意向はあるのですか?
木戸岡 会社としては、フルプライスで売れるタイトルをコンスタントに出していかなければいけないと考えています。それがパッケージなのか、ダウンロード専売になるのかはわかりませんが、少なくともフルプライスで展開できる、家庭用ゲーム機向けのタイトル数を増やしていきたいですね。単に全体のタイトル数を増やすのではなく、一本一本をもっと作り込んで、フルプライスでも売れるものを増やしていくというイメージです。

――3月に発売された『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会~オールスタースペシャル~』も、フルプライスでしっかり作り込んで発売されました。
木戸岡 そうですね。ここだけの話、当初の予定よりも、発売が1年ほど遅れてしまったのですが(笑)。昨年の夏から秋、そして年末……と順調に遅れてしまいました。引き続き、アップデート作業もしています。

――『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』(以下、『P4U』)や、最近では『ドラゴンボールZ 超究極武闘伝』を開発されています。受託制作というのも、今後の軸のひとつとしてお考えですか?
木戸岡 弊社はもともと開発会社ですから、お話が来れば断りませんよ。現在は自社のタイトルが中心ですが、たまたま受託のお話が少なかっただけで、つねに「お話をいただければ何でもやります」といったスタンスです。『P4U』のように、得意なジャンルでの技術やノウハウを認めてくれるようなタイトルをいっしょにできるのが理想です。また、積極的にIP(知的財産)を獲得するようなことも必要だとも思っています。いずれにせよ、他社さんといろいろなお付き合いをしていく中で、多くのことも勉強できるし、経験できますからね。

――『ブレイブルー』と『ギルティギア』の開発に多くの人員が割かれていると思うのですが、そんな中、他社のゲームも開発するのはたいへんではないですか?
木戸岡 タイトルによっては、少人数で開発できるものもあります。ただ、『P4U』のような格闘ゲームを作るとなると、現状の体制では、3本の格闘ゲームを同時平行で開発するのは無理です。今後は、クオリティーコントロールができるディレクターを増やしていかないと難しいと思っています。

――そういったディレクターを育てるような教育もされていくわけですね。
木戸岡 社内で教育していないわけではありませんが、そういった役職には天性の感性も必要です。作品に対する自信やこだわり、ブレない考えかた、リーダーシップなどが重要になります。弊社では、森(利道氏。『ブレイブルー』シリーズ プロデューサー)と石渡(太輔氏。『ギルティギア』シリーズ ゼネラルディレクター)の個性が強すぎるので、そこに割って入るのはたいへんですが、彼らのつぎの世代にもどんどん活躍してほしいと思っています。

――開発部署間での技術共有などは行われているのでしょうか? とくに、格闘ゲームの開発チームには、それぞれでノウハウが溜まっていると思うのですが?
木戸岡 『ギルティギア』や『ブレイブルー』、弊社で家庭用への移植を担当した『アルカナハート3』など、格闘ゲームのチーム間においては、ある程度、状況や技術の共有はできていると思います。確かに、格闘ゲームだけで言うと、これまでにけっこうな本数を発売していますので、技術的な部分に関しては安定しているのではないかと思います。


★TOPIC(1) 定評ある開発力で多彩なラインアップを実現

『ブレイブルー』や『ギルティギア』に続く新しい格闘ゲームを! アークシステムワークス・木戸岡稔氏インタビュー【ゲームメーカー新世代戦略】_06
ドラゴンボールZ 超究極武闘伝
(発売元:バンダイナムコエンターテインメント)

 元エンジニアの木戸岡稔氏によって1988年に設立され、27年の歴史を誇るアークシステムワークス。2012年に2D格闘ゲーム『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』をアトラスと共同開発し、最近ではニンテンドー3DS用ソフト『ドラゴンボールZ 超究極武闘伝』を開発するなど、対戦格闘やアクションゲームを中心に、自社ブランドタイトルのほかにも、さまざまなメーカーのソフト開発の受注も行っている。こだわりと最新技術を融合させたモノ作り集団、それがアークシステムワークスなのである。


テクノスジャパンをアーケードブランドで復活させたい

――先日、元テクノスジャパンのライセンスを獲得されましたが、これはどういった経緯からなのでしょうか?
木戸岡 弊社を含め、テクノスジャパンのライセンス作品を作っていたメーカーが何社かあります。その中でも弊社が長く家庭用タイトルを出していたので、“今後もラインアップを増やし続けてブランドを大事にしてくれそうだ”と、ライセンスを管理していた方々が思ってくれたようです。それでお声掛けいただいたというのが最初になります。

――お話を聞いたときの第一印象は?
木戸岡 ありがたいお話だと思いました。これまでもテクノスジャパンさんのタイトルは何本も手がけてきましたし、確実に喜んでくださるユーザー層が見えるタイトルでした。また、スマートフォンでの展開にも向いているものが多いと思いますし、海外での知名度も高いです。それで譲受に関する話をさせていただいて、お互いに納得できる条件で契約することができました。

――具体的に、今後どういった展開を予定しているのですか?
木戸岡 まずはこれまで同様、ニンテンドー3DSなどの家庭用ゲーム機向けタイトルの開発をしていきます。

――そのほかの構想も?
木戸岡 それに加えて、テクノスジャパンさんはアーケードゲームがルーツのブランドですから、個人的にはもう一度アーケードゲームとして復活させたいという考えもあります。くにおくん』や『ダブルドラゴン』といったタイトルをアーケードで復活させたり、海外展開も、アメリカだけでなく、中国など、いままであまりできなかった国にも広げていきたいと思います。それがライセンス契約なのか、自分たちで開発するのかは別ですが。

――なるほど。アーケードでの具体的な展開予定はあるのですか?
木戸岡 はい。来年度内くらいを目標にしているのですが、前述の『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』の格闘パートをゲーム化できればと思っています。格闘ゲームを作っている会社ですから、ゲームセンターでも4人で対戦できるように、まずは“格闘”でいきたいですね。いままでテクノスジャパンのタイトルを扱っていただいた会社さんたちと協力しながら、アーケードとスマホなどでの海外展開は、ここ1年くらいをメドにして、きちんと展開していきたいと考えています。


★TOPIC(2) 元テクノスジャパン関連タイトルのライセンスを譲受

『ブレイブルー』や『ギルティギア』に続く新しい格闘ゲームを! アークシステムワークス・木戸岡稔氏インタビュー【ゲームメーカー新世代戦略】_05

 アークシステムワークスは6月12日、ミリオンが所持する『くにおくん』や『ダブルドラゴン』などの元テクノスジャパン関連タイトル事業にまつわる無体財産権を、6月1日付けで譲り受けたことを明らかにした。テクノスジャパンは、1980年代に多くのアーケード用横スクロールアクションゲームの名作を手がけてきたゲームメーカーで、アークシステムワークスでは、これまでも同ブランドのタイトルを開発・発売してきた経緯がある。最新作はニンテンドー3DS用ソフト『ダウンタウン熱血時代劇』。