フルボイスで展開される全22面の知られざる冒険

 『Portal Stories: Mel』は、名作パズルアドベンチャー『ポータル2』PC版用のMOD(ファンによる拡張)。Steamで6月25日より無料で配信されており、Steamライブラリ上に『ポータル2』のライセンスを所持していれば、誰でも利用できる(『ポータル2』がインストールされている必要はない)。

 本作を開発したのは、腕利きのMODクリエイターたちによって結成されたPrism Studios。ゲームは全22面で構成され、オリジナルのサウンドトラックと350以上のボイス収録もされていて、無料なのが信じがたいほどの大ボリューム。開発チームではクリアーまで最大6時間から10時間程度を想定している(当然パズルでどれぐらい悩むかによって異なり、二周目以降では急げば2時間以内に解くプレイヤーもいる)。

 物語は1952年、主人公のメルがアパチャー・サイエンスの実験の被験者としてラボを訪れるところから始まる。アパチャー・サイエンスを率いるケイブ・ジョンソンのアナウンスに導かれ、「短期リラクゼーション筒」(Short-Term Relaxation Vault)でちょっとひと眠りする試験……のはずだったのだが、起きた時には何年も経っていてラボは半壊しており、脱出しなければならなくなる、という案の定な展開に。
 ゲームとしては『ポータル2』本編同様、二点間を繋ぐワープゲートを開くポータルガンを使って移動し、スイッチを切り替え、ゴールを目指すパズルアドベンチャーだ。

『ポータル2』の無料MOD『Portal Stories: Mel』が配信中。PC版を持っているならプレイすべき充実した内容!_01
▲特定の壁に撃ちこむことで、任意の2点間を繋ぐことが出来るポータルガン。これを駆使すればメルの運動能力で辿り着けない場所に向かうことができる(ちなみにセリフなどは英語字幕表示可能だが、一画面に表示される量が多いので若干読みにくい。なおファン翻訳を受け付けているので、いずれ日本語訳も出るかも)。

 さて肝心のパズル部分だが、土台になっている本編『ポータル2』ベースの設計で、推進性・反発性ジェルなどの仕掛けも早めから登場。初体験のプレイヤーを考慮しなければいけない一般製品とは異なり、シリーズをプレイしていることを前提としたファンメイド作品ということもあって、基本的には“わかっている人向け”の難しめのパズルな印象。

 一方でパズルはすべて無茶な操作を前提にせず(開発チームいわく「ニンジャスキルはいらない」)、公平で理に適った設計を目指しているのはありがたい。コアなファンしか知らない操作テクや、知っていても実行が難しいアクションが正解である可能性を心配する必要がなく、「詰まった時は何か見落としているか発想が足りてないだけ」ということが保証されていれば、じっくり考えがいもあるというもの。

『ポータル2』の無料MOD『Portal Stories: Mel』が配信中。PC版を持っているならプレイすべき充実した内容!_02
▲序盤からギミックもりもりなので、トライする前に本編を復習しておくのもいいかも。

 そんな感じに、(非公式とはいえ)いかにもポータルらしい世界観とストーリーがしっかり構築されていて、何よりやり応えのあるパズルが楽しめる本作。せっかく無料だし、PC版『ポータル2』を持っているならば、ぜひ一度トライしてみて欲しい。なお、チュートリアルや仕掛けの再説明はないので、『ポータル』ならではのパズルの勘が鈍っている人は、本編を少しプレイし直してから本作に取り掛かるといいだろう。