ポップカルチャーに対する女性ユーザーが急増
2015年7月9日~7月12日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、Comic-Con International 2015(通称:コミコン)が開催。ここでは、最終日にあたる7月12日に開催されたパネル“The Future of Fandom”の模様をお届けしよう。コミコンのプログラムを見ていて、何となく心惹かれて覗いたこちらのパネルは、コミックやマンガ、映画、ゲームなどのポップカルチャーのファンの現状を分析するというもの。「北米ユーザーのファンってどういう感じなんだろなあ?」と、日ごろ疑問に思っていた記者にとっては、うってつけのパネルと言えた。登壇者は、司会を務めたWordBallon Podcastのジョン・シアントレス氏を筆頭に、『Comic-Con and the Business of Pop Culture』などの著作を持つ作家のロブ・サルコウィッツ氏、The Best and Publishers weeklyのジャーナリストであるハイディ・マクドナルド氏、ブロガーでありアナリストであるGraphic Policyのブレット・シェンカー氏など、ポップカルチャーのファン気質に詳しい識者が揃った。
パネルは、まずはマクドナルド氏が持つ資料をもとにしての分析からスタート。それによると……。
・1943年の資料によると、全米の95%の小学生、90%の高校生がコミックを読んでいた。
・女性をターゲットにした1944年の資料では、12歳~17歳の81%、18歳~30歳の28%がコミックを読んでいた。
・1970年代のスーパーヒーローの時代になると変化が訪れた。
・1995年のDCコミックの調査では(対象者は1000人)、読者の92%が男性となり、女性は数パーセントに落ち込んだ。
・ニールセンの調査でも、女性の顧客は小売店で7%、オンラインで23%、オンライン e-list(メーリングリスト)で7%となっている。
・2014年の調査では、顧客の43%が女性(男性は57%)で、年齢別では18~34歳が57%、35歳~45歳が21%を占めている。
続いて、サルコウィッツ氏の分析から。
・北米の1000件のコンベンションを対象とした市場規模は、チケットの売上のみで6億ドル。経済効果は50億ドルと言われている。ちなみにコミック市場のみの売上規模は10億ドル。
・2014年の性別調査では、男性が53%、女性が47%。30歳以下のグループでは、男女の差はない。
・ポップカルチャーのファンがおもに興味を持っているものを見ると、コミックと映画、テレビの人気が高まっているのがわかる。ゲームは男性、マンガ/アニメは女性が多い。
・消費動向としては、男女ともオリジナルアートやプリント、Tシャツなどの関連グッズ、本やコミックを購入しているが、ショー限定版の商品やセレブのサインなどは人気がない。ショーの運営者は、このような動向を把握して、フロア構成に活かすべき。
・ほとんどの人がショーやコンベンションを安全だと感じている。
マクドナルド氏からは、「Tシャツを購入したい女性は多いが、サイズがなかったり、限定されていることが多い。とくにサイズの大きい女性用はほとんどありません」と課題を口にした。
最後は、ブレット・シェンカー氏の分析。
・全米の人口の24%(4700万人)はコミックに興味を持っている。とくに大作映画が公開される夏季は、さらに増えることが想定される。
・ゲームやマンガに興味を持つ人たちの半数以上は女性。
・DCコミックやMarvel、インディーを総合すると、男性60%、女性40%。
・それぞれについては、2013年から2015年にかけて男性が増えているところもある。
・コミックファンは独身で借家、シングルペアレントも多い。
いずれも興味深いデータだが、3者がとくに問題にしたのが女性ファンについて。サルコウィッツ氏は“女性は本当のファンではない”という風潮に釘を差す。「スーパーファンかカジュアルファンか、いくらお金を使うかなどを比較すると、女性と男性はあまり差がないことがわかります。22?30歳のアニメやマンガファンの20%は年間5つ以上のイベントに参加し、250?500ドルを費やしています。これ以上金を使うのは、年齢層の高い男性コミックファンだけです。このようなファンの中には、新しい層を受け入れない人たちがいるのは残念です」という。つまり多くの女性がポップカルチャーに興味をいだいているのに、現状はそれに追い付いていないというのだ。これに対してはマクドナルド氏も「MarvelやDCコミックは社内でデータを集めているはずで、女性をターゲットとした商品を出しているのですが、その点トイ市場は旧態依然としているので、なかなか変わりません」と苦言を呈する。
質疑応答での「それは、伝統的に掴んでいるファンを失いたくないために、ほかの人たちを受け入れないのではないかと思います。ほかの人たちの数が一定数に達したときに変化が訪れるのではないでしょうか」との来場者からの意見に対しては、パネリストも大いにうなづいていた。