ゲーム作りでは、「何が新しくて新鮮なのか」を追求する
2015年7月9日~7月12日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、Comic-Con International 2015(通称:コミコン)が開催。会期初日にあたる7月9日には、レアによるパネル“A Rare Chit Chat: Past and Future”が行われた。“Chit Chat”とは、“世間話”とか、“雑談”くらいの意味。レアといえば、設立30年を迎える英国の老舗ゲーム開発会社。今年のE3では30周年記念作の『Rare Replay』と完全新作の『Sea of Thieves』を発表し、ますます存在感を見せている。パネルは、レアのスタッフがファンの質問に答えるという、ユーザーライクな内容となった。登壇したメンバーは、ホスト役のクレイグ・ダンカン氏を含めて以下の6(?)名となった。
■クレイグ・ダンカン氏:スタジオヘッド
■ライアン・デュークソン氏:アーティスト、『Sea of Thieves』、『あつまれ!ピニャータ』などのアーティスティックスタイル担当
■ルイーズ・コリンズ氏:ボイスアーティスト、アニメーター、アートディレクター、プロデューサー、そしてまだ話せないシークレットプロジェクトのリーダー
■アダム・パーク氏:プロデューサー
■グレッグ・メールス氏:スタジオ歴26年の大ベテラン。レジェンダリーゲームデザイナー。最初のゲームは『ビートルジュース』(ゲームボーイ)。以降『バトルトード』、『ドンキーコング』、『バンジョーとカズーイの大冒険』、『あつまれ!ピニャータ』などを手掛ける
■キャプテン・ボーンズ氏:『Sea of Thieves』が初めての作品。これまで5本のインタビューをこなしたとのこと
質疑応答だけあって、話題は多岐に渡ったわけだが、その中からいくつかをピックアップしてお届けする。
――バンジョーとカズーイはどちらがボスですか?
グレッグ 鳥のカズーイです。バンジョーはカズーイが言う通りに行動しますね。
――懐かしいゲームが、Kickstarterのプロジェクトで取り上げられているケースがありますが、レアもこのような顧客層を狙っていくのですか? それとも広い顧客層に受けるものを出して行くのですか?
クレイグ スタジオとしては、つねに「ゲームを予期しない新しい方向に持っていくには何ができるか?」を問いかけてきました。しかし、今回の『Rare Replay』のように、ファンにはこれまでの作品をまとめた形で提供したいと思っています。新しい作品については、「何が新しくて新鮮なのか」を追求して作っています。最新作の『Sea of Thieves』も、その結果出てきたものです。
――『あつまれ!ピニャータ』はそれまでとは違うおもしろいタイトルでした。本作を開発した背景を教えてください。
ライアン 最初は、ほかのプレイヤーに会っていっしょに遊べるというコンセプトで、携帯ゲーム機向けに考えていました。そこで、いっしょに種族を見つけるというアイデアが出てきたんです。これまでとは違うユニークな外見をもったものやこれまで手掛けたことのない種族もやってみたかったんです。携帯ゲーム機から据え置き機へと発展し、さらにテレビ番組や玩具にも拡大しました。
――『Sea of Thieves』には、ほかのゲームのキャラクターも登場しますか?
グレッグ 『Sea of Thieves』は、あくまで独立したゲームで、独自の魅力を持っていますが、過去のゲームと関連したことは入れていくと思います。
――ご自身が関わった中でいちばん好きなゲームを教えてください。
ライアン 『Sea of Thieves』です。気持ち的には、いまいちばん大きな部分を占めています。
ルイーズ 『Conker's Bad Fur Day』(日本未発売)です。私にとって最初のプロジェクトであり、14人で作りましたが、チームワークがしっかりしていました。私はアニメーターとして参加したのですが、映画のパロディなどもあり、いろいろなキャラクターが出てきて楽しかった。自分にぴったりのプロジェクトだったと思います。
アダム 『Rare Replay』はすべてをプレイできるのが魅力です。『あつまれ!ピニャータ』は私が関わった最初のゲームなので、アニメーションに夢中になりました。
グレッグ 『グーリーズ ~Grabbed by the Ghoulies~』かな。あまり売れなかったゲームですが、チームワークがよくて、とても楽しいゲームに仕上がりました。私にとっては、とても大切なゲームです。
――『Rare Replay』には、『Conker's Bad Fur Day』のオリジナル版(ニンテンドウ64)が入っているのですか?
アダム そうです。ゲーマーの皆さんが懐かしさを感じるのはオリジナル版なので、そちらを入れています。
――『バトルトード』にはバグがありましたが、『Rare Replay』にはそのまま収録されているのですか?
グレッグ それについては、いろいろと意見を交換しました。難度の高いゲームなので、本質は維持したいと思いましたが、バグは修正しました。最初に目指した形でプレイしてほしいと思いました。
――『バンジョーとカズーイの大冒険』の次回作はありますか?
クレイグ 将来のプロジェクトについては、肯定も否定もできません。
――『Rare Replay』は据え置き機向けですが、過去のゲームあるいは新作をモバイル向けに出す予定はありますか?
クレイグ プラットフォームがゲームに合っていれば可能性はあります。もし納得のいくものであれば、モバイルやPC、タブレットも考慮しますよ。
――これからゲーム業界に入りたいと思っているのですが、女性にとってこの業界は働きやすいところですか? また、女性のキャラクターについてはどう思いますか?
ルイーズ とても素晴らしい業界だと思います。私は、コンピューターのスイッチを入れることも知らずにレアに入ったのですが、周囲のサポートがあったので、ここまでやってこられました。当時、チームの中で女性は私ひとりだったのですが、その後業界は女性を採用するようになりました。また、レアは女性のキャラクター作りにも長けていると思います。女性キャラが必要だから入れるというのではなくて、ゲームに合致したしっかりしたキャラクターを作っているのではないでしょうか。
――『バンジョーとカズーイの大冒険』の世界観の詳細は、どのように作ったのですか?
グレッグ 作りたいもののイメージが最初から頭にあって、書き出しました。それをアーティストに渡して描いてもらい、結果として生き生きとした世界ができましたね。
――『Snake Rattle 'n' Roll』が入っていないのは残念です。将来選ばれる可能性はありますか?
クレイグ 私たちもゲーマーとして、それぞれ特定のゲームを愛していますが、今回は120本の中から絞り込む必要があったので、これまでの私たちの仕事を最大限に代表する30タイトルを選びました。次回作は、クリエイターとして、「絶対にやらない」とは言わないです。
――『Rare Replay』を作ってどう思いますか?
グレッグ これまでひとつのプロジェクトが終わると、つぎへ移ってきたのであまり考えなかったのですが、改めて振り返ると「これだけやってきたのだ」としみじみします。やってきた甲斐がありました。それぞれのキャラクターを見るとなつかしいです。いずれもすべてを注ぎ込んで作ってきたタイトルなので、感慨深いですね。
――レアでは、誰かひとりから出されたアイデアが成功することが多いですか?
クレイグ 社内にはいろいろな人がいて、独特のカルチャーがあります。チームメンバーは柔軟な発想でいろいろな意見を出すので、すべての人が貢献していると言えます。お互いに協力することが重要だと思っています。
30年にわたりゲーム業界を支えてきたレア。こうしてファンの疑問に答える場が設けられたのは、極めて貴重な機会と言えるだろう。まさに、コミコンならではといったところ。多岐に渡る質問からは、レアの本質が垣間見える気がした。