“謎解きLIVE『美白島殺人事件』”放送直前スペシャル対談!

 2015年7月18日(土)~19日(日)、NHK BSプレミアムで二夜連続放送予定の“謎解きLIVE『美白島殺人事件』”。視聴者参加型のミステリードラマとなる本番組は、原作を我孫子武丸氏が務め、解答者としてイシイジロウ氏が出演することがアナウンスされており、ゲームファンからも注目を集めている。本稿では、放送直前スペシャル企画として、我孫子氏とイシイ氏のミステリー対談をお届けしよう。

我孫子武丸 vs. イシイジロウ! “謎解きLIVE『美白島殺人事件』”で推理対決するふたりのスペシャル対談_01

■“謎解きLIVE”とは?
 NHK BSプレミアムで放送されている視聴者参加型のミステリードラマ。有名作家が書き下ろしたオリジナルのミステリードラマを放送し、視聴者とともに事件の真 相を解き明かすことに挑戦する双方向型番組。二夜連続の生放送。視聴者はデータ放送を使ってリアルタイムで番組に参加できる。また、推理に必要な捜査資料はホームページに掲載され、「一夜目」と「二夜目」の放送間にも新しい情報がアップされる。2015年7月18(土)、19日(日)には、我孫子武丸氏が原作を務め、解答者としてイシイジロウ氏が出演する『美白島殺人事件』 が放送予定。公式サイトはこちら

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我孫子武丸 vs. イシイジロウ! “謎解きLIVE『美白島殺人事件』”で推理対決するふたりのスペシャル対談_03

◆我孫子武丸氏(写真左)
新本格派ミステリー作家。『殺戮にいたる病』などシリアスな作品から、『速水三兄妹』シリーズなどコミカルなものまで作風は幅広い。 『監禁探偵』などのマンガ原作や『かまいたちの夜』を始めとするゲームシナリオに至るまで、ジャンルを越えて活躍している。

◆イシイジロウ氏(写真右)
ゲームデザイナー。おもにアドベンチャーゲームのシナリオ、監督、プロデュースを務め、2014年に独立。アニメ原作や脚本に活躍の幅を広げている。代表作は『428~封鎖された渋谷で~』、『タイムトラベラーズ』など。

双方向の仕掛けもありますし、ゲーム性もありますのでぜひご覧になってください(我孫子)
ゲーム業界の代表としてNHKさんに殴り込み、我孫子さんに挑戦したいと思います(イシイ)

――おふたりは親しい間柄だと思いますが、改めてこれまでの仕事の関わり合いからお聞かせいただけますか?

我孫子武丸氏(以下、我孫子) 直接仕事をしたのは『428 ~封鎖された渋谷で~』(以下、『428』)(2008年12月4日、セガから発売されたWii用のサウンドノベルゲーム。開発はチュンソフト)のときです。

イシイジロウ氏(以下、イシイ) そうですね。

我孫子 『428』のボーナスシナリオの依頼を受けて。本編のシナリオがある程度できた段階で読ませていただいて、ボーナスシナリオとして本編にはちょっとしか出てこない鈴音という女の子の別の物語を書いてほしいと、設定が決まった状態での仕事を引き受けました。『428』はゲーム自体もシナリオも評判がよかったと思っていたらイシイさんはチュンソフトを……。

イシイ 『428』発売後、チュンソフトを辞めることになったのですが、『トリックロジック』の制作は最後までいました(笑)。 発売のときはもう辞めてしまったので、プロモーションは手伝えなかったのですが、『TRICK×LOGIC(トリックロジック)』(2010年7月22日、ソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたプレイステーション・ポータブル用ソフト。推理ノベルゲームでチュンソフトが開発を担当)では我孫子さんに企画段階からお願いしていました。『トリックロジック』のそもそもの発案は僕なんですよね。

我孫子 綾辻行人さんと有栖川有栖さんの共同執筆で『安楽椅子探偵』という視聴者参加型の推理ドラマがあったのですが、劇中の犯人およびそのトリックを当てる公式懸賞企画が催されるというものだったんです。問題編の1週間後に解決編を放送するという、まさに今回の“謎解きLIVE”のお手本のようなテレビドラマシリーズがありまして。それをイシイさんも気に入っていて「これをゲームにできないか」という話から『トリックロジック』につながったんですね。

イシイ 我孫子さんは『かまいたちの夜』(1994年11月25日、チュンソフトから発売されたスーパーファミコン用ソフト。『弟切草』に続く、サウンドノベルシリーズ第2弾)を作った方なので、知恵を拝借したいというスタンスでお付き合いしていることが多くて。『428』はサウンドノベルの集大成的なことをしたいという考えもあったので、とにかくいままでサウンドノベルに参加していただいたキーマンの方に全員参加していただきたいということで、我孫子さんにもボーナスシナリオを書いていただけないかとお願いにいった、という形ですね。『トリックロジック』はミステリーゲームとして『かまいたちの夜』のつぎのステップができないかという思いがありました。そんなときに『安楽椅子探偵』を見て「これは可能性がある」と我孫子さんにご相談にいき、「ゲームに落とせますか」と聞いたんです。『かまいたちの夜』の仕組みは、ゲームと物語の融合としてすごいと思っていて。我孫子さんはその作品を作られた方というイメージがあるので、そういう意味ではこの場で気楽にしゃべりかけているように見えるかもしれませんが緊張感があります(笑)。クリエイターとしてすごい武器を持っているイメージで、その刀を抜かれたら勝てる気がしないですね(笑)。

――おふたりから『安楽椅子探偵』というテレビドラマがキーワードとして出ましたが 、影響の強い作品だったのですね。

我孫子 影響といいますか、ほかの方に説明するときに『安楽椅子探偵』をご存じだと説明がしやすいんですよ。綾辻さんもそうですし、僕もそうなんですが、京大ミステリー研(京都大学の推理小説研究会)で“犯人当て”というのをやっていたんですね。会員が持ち回りでオリジナルの犯人当て小説を書いてきて問題編を朗読し、参加者が犯人当てに挑戦するという。京大ミステリー研の伝統行事ですね。ミステリー業界ではときどき行われていることなのですが、その経験を通じて、ルールの部分が鍛えられていったんです。そういうことに慣れていない人に頼んでも、「これでは京大ミステリー研のルールではダメです」と言われかねないので、そのあたりがわかっている人に頼むという。『安楽椅子探偵』はそういった現実のルールが適用された作品でしたので、この作品を見てもらうと誰にでもわかってもらえるんです。

イシイ 推理小説のルールは、“ノックスの十戒”(イギリスの推理作家ロナルド・ノックスが提示した、推理小説の中で守らなければいけない10のルール)とかいろいろあるんですよね。ゲーム的なルールが厳密なところがおもしろいんだと思います。『安楽椅子探偵』で驚いたのは、一般の方から見ると、ミステリーってそこまで厳密ではないように見えていたと思うんです。動機とかで感動するタイプが一般のミステリーでは多いじゃないですか。本来の犯人当てというのは、最近ではあまり世の中に出ていないイメージがありました。だからこそ『安楽椅子探偵』のソリッドな内容に驚いて『トリックロジック』を作りたいとなったんです。我孫子さんが入られていた京大ミステリー研の方々と実際に企画を作るのはおもしろいと思ったんですね。ルールを知っていると、どこに注目すればいいのかがわかるんですよ。ルールを知らないと、ズルいとか、わからないとか、興味がないからおもしろくないと感じたりしてしまうのですが、ルールを知ったうえで読むと本当におもしろい。『トリックロジック』はミステリーの読みかたを知らなかった僕が、皆さんといっしょにミステリーの読みかたを学んでいくようなゲームにしたかったんです。