不気味なマスクのディレクターに、イケメンのゲームデザイナー……ふつうじゃない豪華スタッフに直撃

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 2010年に発売され、狂気を帯びた独特な世界観、心をえぐられるストーリー、斬新なゲームデザイン、印象に残る音楽などでプレイする者を虜にした『NieR』。5年の時を経て、その最新作となる『NieR New Project(仮題)』がE3 2015で発表されたのはご存じの通り。ディレクターはヨコオタロウ氏、プロデューサーは齊藤陽介氏、音楽は岡部啓一氏という前作のメインスタッフに、キャラクターデザインには吉田明彦氏が迎えられ、開発はプラチナゲームズが担当。本稿では、週刊ファミ通2015年7月2日号(6月18日発売)に掲載したメインスタッフのインタビューに加筆し、再編集したものをお届け。
※インタビュー実施日は5月下旬。

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▲前段左からヨコオタロウ氏、齊藤陽介氏、後段左から岡部啓一氏、田浦貴久氏(イケメン)、吉田明彦氏

豪華スタッフで挑む『NieR』新プロジェクト

――前作『NieR』の発売から5年が経ちました。まず、プロジェクトがスタートした経緯をうかがえますか?

齊藤 もともと『NieR』というIPで「新しいことをやりたい」という思いはずっと持っていました。当初は、『NieR』を遊んでいない人もまだまだいますので、何かの要素を加えてプレイステーション Vita版を作ろうか、という話しもあったんです。

ヨコオ イルカの岩﨑(拓矢)社長(『NieR』を開発したキャビアでは取締役を務めていた)と、「齊藤さんとの仕事は続けていきたいよね。『NieR』とか」という話をしていて、同じく岩﨑さんが社長を務めているオルカという会社といっしょに、『NieR』のPS Vita版の企画を提案したんです。それが2011年の3月くらいです。ですが、オルカが『ドラゴンクエストX』の仕事に関わることになって、『NieR』のPS Vita版は実現しませんでした。

齊藤 それとは別に、プラチナゲームズさんとも何かいっしょにやりたいですね、という話しもさせていただいていて。そこで『NieR』に関しては、5年も空いてしまった経緯もあるし、せっかくなので新作を作ろうと、改めてプラチナゲームズさんに『NieR』の新作の話をさせていただきました。

ヨコオ そして齊藤さんから「次世代機で『NieR』の新作を作りませんか?」と言われてここに至る、という感じです。ちなみに、前作の発売後に「『NieR』の続編を作りたいんですけど……」と、当時のアシスタントプロデューサーの横山(祐樹)さんに話したのですが「あ~、あんまり売れてないから続編は厳しいッスね」と言われて諦めたこともいまとなっては懐かしいです。

齊藤 いつかやってやろうと潜伏していたんですよ!(笑)

――プラチナゲームズと何かをやろう、という話がもともとあったんですね。

齊藤 はい。いろいろなタイミングが重なり、今回、『NieR』をお願いすることができました。そこでヨコオさんにお願いしたのは、「大阪に行ってほしい」と。「そうじゃなきゃやらん!」ぞと。

ヨコオ 今回の仕事の条件として、齊藤さんから提示されたのは、僕が大阪に行ってディレクションをすることでした。

齊藤 それだけ真剣にやってくれるなら、ヨコオさんに新作『NieR』を任せようと。現在ヨコオさんは、大阪在住、というくらい前のめりにやっていただけています。

――ここしばらく、Twitterで大阪でのことをツイートされていましたが、『NieR』の新作で大阪にいらっしゃったからなんですね。

ヨコオ はい。いまも月の4分の3は大阪です。

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――ヨコオさんはプラチナゲームズに対しては、どんな印象をお持ちでしたか?

ヨコオ 関西系ですし“オラオラな会社”というイメージを持っていました。

田浦 (苦笑)。

ヨコオ ですが、実際に行ってみると、物静かで、若くてヤル気のあるスタッフが多くて、とても楽をさせてもらっています。というか自分は要らない感がスゴイです。僕は毎日、Twitterでつぶやいて帰るくらいしかやってないです。

田浦 いやいやいや、いてもらわなければ困りますし、ちゃんと仕事もしていただいていますよ(笑)。

齊藤 プラチナゲームズの現場のスタッフから話しを聞くと、田浦さんを始めとして、『NieR』が好きだと言ってくださる人が多くて、ヨコオさんに対していろいろな提案をしてくるそうなんですね。それにヨコオさんが全部オーケーを出すので、プロデューサーとしては、「肥大化して収集がつかなくなるんじゃないか?」と心配もありますが、おもしろいものを作ってもらうには、まずはアイデアをどんどん考えてもらう必要がありますので、頼もしく感じています。

――次に吉田明彦さんが、プロジェクトに参加することになった経緯も教えていただけますか?

齊藤 キャラクターデザインをどなたにお願いするかというのは、ヨコオさんと考えながら、いろいろな方を候補に挙げていきました。その中でダメもとでもいいので「吉田明彦さんにお願いしてみようか?」と提案したのがキッカケですね。

ヨコオ 吉田さんは以前からとても好きなイラストレーターさんでした。というか「いつか仕事でごいっしょできればいいな……」と思う憧れの存在であり、あまりに雲の上の存在過ぎて、今回のキャラクターデザインの候補に挙げることすらしていなかったくらいです。齊藤さんから「吉田さんに頼んでみようか?」と言われた時は「マジですか!? そりゃあ実現したらスゴイですけど……」と絶句したくらいです。

齊藤 ヨコオさんも、田浦さんも吉田さんの大ファンということでダメもとで打診することになりました。そこで、まず、ヨコオさんとふたりで、Cygamesの渡邊(耕一)社長にお会いして、「(吉田さんが)お忙しいタイミングなら難しいとは思いますが……」とお話させていただいて。幸運なことに、渡邊社長自身が『NieR』の熱心なプレイヤーだったということもあって、とんとん拍子に話が進み、吉田さんがいないところで話がまとまりました(笑)。

――なんと(笑)。吉田さんは、話が下りてきたときにどんな感想を?

吉田 『NieR』は、いままで自分がやってきたことがないタイプの作品なので、挑戦してみたい、という思いはありました。ですが、社内の仕事で忙しいタイミングでしたので、正直、スケジュール的にできるかな? と不安はありました(笑)。

齊藤 たしかに、いちばんの問題はスケジュールでした。こちらとしては、「なるべく吉田さんのスケジュールに合わせるようにします」とお願いし、何とかキャラクターのデザインをしていただけることになりました。

――田浦さんと、吉田さんは『NieR』に関しては、どんな印象をお持ちでしたか?

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田浦 もともと『NieR』発売時にプレイしていて、いい意味で期待を裏切っていく作品だなという印象でした。3Dアクションをプレイしていたつもりなのに、いつの間にかシューティングゲームやサイドビューアクションになっていたり。当時は「こういうゲームもアリなんだな」と衝撃を受けましたね。それと相まって、シナリオとBGMもすごくいい。いつかこういうゲームを作りたいと思っていました。それが叶うことになって、すごくテンションが上がっています。社内にも『NieR』ファンが多くいて、プラチナゲームズとして、いままで手を出してこなかったタイプのゲーム……たとえば、ストーリーに分岐があるとか、サブクエストがあるとか、NPCキャラクターと会話するような要素もいままで個人的には作ってこなかったので、「新しいタイプの作品が作れる」というワクワク感もあります。

吉田 『NieR』は、『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズと並んで、タブーを恐れないヨコオワールド全開の稀有なゲームだと思っていました。あとは、すごく熱心なファンがいて、自分の知り合いもそうなのですが、女性ファンも多い作品という印象ですね。そんな作品の続編のキャラクターデザインを担当することになって、ファンの方の反応が怖いですけど(笑)。

――実際にいっしょに仕事してみて、ヨコオさんの印象は?

田浦 すごく変な人だなというのと(笑)、とにかく期待を裏切ることが好きなんだな、という印象です。「こういう要素を入れよう」という話しになったときに、予想とは真逆から答えが返ってくることがよくあります。プラチナゲームズにはいないタイプのディレクターなので、刺激を受けながら、みんな楽しく開発しています。

ヨコオ 僕は、プラチナゲームズさんと仕事して、「こんなたくさんの要素を本当に作れるんですか?」という心配をずっとしている、という感じです。若いスタッフがどんどん突き進んでくれるので、たとえるなら、多数のシベリアン・ハスキーに引っ張られる犬ゾリに乗っているような気分です。皆さんすごくパワーがあるので、放っておいてもいいものがあがってくる。いままでのゲーム作りでしてきた苦労があまりなくて、こんなに楽でいいのかな、と思っています。

齊藤 しかも、やろうとしていることに対して、できあがる速度が早いんですよね。

田浦 今回、チームメンバーを選出するにあたって、もともと『NieR』が好きだというメンバーを優先して集めた結果、非常に優秀なメンバーを揃えることができました。

齊藤 その優秀なメンバーをスタッフィングする能力も含め、田浦さんは優秀なゲームデザイナーですね。

ヨコオ 社内政治ってぶっちゃけた話、たいへんなんですよ。人集めに暗躍している田浦さんを見て、「スゲェな」と思って見ていました。あと、これはぜひ載せてほしいんですが、イケメンで仕事ができるなんてホント、感じ悪いとつね日ごろから思っていました。今回の記事では、それだけ載せられれば僕は満足です。