『カオスチャイルド』の魅力にハマったライター陣がアツく作品を語り合う

 『カオスチャイルド』を語りつくすライター座談会の模様お届けする。ファミ通本誌に掲載された、プレイインプレッションでは語り切れなかったディープな話題を交えながら、本作の魅力を紐解いていく。

■ライター:石井ぜんじ
伝説のアーケードゲーム雑誌『ゲーメスト』の元編集長。現在はゲームライター、レビューなどを担当、ゲーム制作の仕事にも関わる。ゲーム関連ほか、SF、ミステリー、アニメなど、思い入れのできるエンタメ全般に興味あり。(文中は石井)

■ライター:浅葉たいが
インテリアデザイン会社所属のゲームマニア。日々大量のゲームを遊んでいるところに声をかけられ、ゲームライターとしても活動中。アドベンチャーゲームや格闘ゲーム、RPGなどの企画、記事執筆を数多く手掛ける。(文中は浅葉)

『カオスチャイルド』はどこが“ヤバい”のか

『カオスチャイルド』は“あの作品”を越えたのか? 担当ライター座談会_01

石井 本を作るということはよくやっているけど、こうやってゲームの感想をじっくり語り合う機会というのはひさしぶりですね。しかも、それがいきなり、ゲームメディアに載るというのは、不思議な感じです。浅葉君は、“『カオスチャイルド』がおもしろい”っていろいろな人にプレゼンしてましたよね(笑)。

浅葉 そうなんです。でも、それをいちばん最初に伝えようと思ったのは石井さんだったんですよ。Xbox One版を遊んだときに、“石井さん『カオチャ』マジヤバいっす”って電話する機会をうかがっていたら、どうやら石井さんも『カオチャ』のためにXbox Oneを買っていることがわかって。じゃあ、プレイし終わったくらいに電話してみようとかいろいろ考えていました(笑)。

石井 じゃあまず、その“ヤバいっすよ”から話を広げてみましょうか。

浅葉 こういうとヨイショしているように感じるかもしれませんけど、物語もテンポもシステムもキャラクターも、すごいレベルで完成されているなと感じたんです。こんなおもしろくて、粗のない作品って、なかなかないぞ、と。曖昧すぎるかもしれませんが、ネタバレのひとつやふたつで揺るがないおもしろさだなと思いました。だから、どこが“ヤバい”というより、作品そのものが“ヤバい”という、すごく直感的な感想だけで皆に薦めていました(笑)。

石井 その粗がないという感想は、僕もすごくわかります。ファミ通本誌の志倉千代丸さんのインタビューで、「いろいろな人に、物語の感想を聞くためのテストプレイをした」というようなことが書いてあったんですけど、それを見て深く納得させられました。アドベンチャーゲームって、グラフィックやシステムを作るときには、皆でチェックする機会は当然あると思うんですよ。でも、シナリオって、書いた人の力量だったり、才能への信頼だったりがあったりして、書いた人以外の意見を通してブラッシュアップを図るというのが、想像以上に難しいと思うんです。その難しい、物語を作るためにいろいろな人の手を入れるということを『カオスチャイルド』では敢えてやったことで、鮮やかな伏線回収と、どこか現実味を感じるシナリオが生まれたのかなと。今回の作りかたに、僕はすごく賛成ですよ。できれば、今後もこの方向で質の高いアドベンチャーゲームをばんばん出してほしいですね。

浅葉 シナリオの現実味というと、どういったところが印象的でしたか?

石井 この科学アドベンチャーというシリーズは、そのジャンル名のとおり、ゲーム内の出来事に、科学的な背景や説明をつけようとしてきた作品たちだったんです。いままでは。でも、この『カオスチャイルド』については、科学的な背景や説明が、最低限のところに留められています。本格的な科学的説明があることで、ある種の現実味が生まれる可能性もありますけど、そこにこだわりすぎると説明を聞いて頭に入れているあいだに、物語への没入感が薄れてしまう危険もありますよね。今回の『カオスチャイルド』では、物語性を重視して、説明過多にならないよう気を配ったのではないかと想像しています。

浅葉 僕は『カオスヘッド ノア』を遊んでいたので、プレイヤーがすでに知っていることとして省かれた説明もあったのかなと思っていたんですが、言われてみると確かに、強引に説明や解説をはしょっているわけではないんですよね。『カオスヘッド ノア』を遊んでいないプレイヤーでも、楽しめるぎりぎりのところで科学的な要素を収めていますね。

“グロ”はゲームのいち要素

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浅葉 発売前からクローズアップされた、過激な描写についてはいかがでしたか?

石井 非実在青少女は、「あれ、大丈夫なんですかね?」といまでも思っています。インパクトが強烈すぎて、このゲームを語るときのキーワードになりそうですよね。

浅葉 じつは、今回の限定版の付録は、そこにちなんだものなんですよ。ゲームプレイ後に、あの付録の意味がわかると、ひっくり返る人がいそうですよね。

石井 それは、また挑戦的ですね。浅葉君はグロは好きなんでしたっけ?

浅葉 グロが好きというと、変な人みたいですけど(笑)。ただグロいだけというのは、あまり好きじゃないですね。じつはこの作品を遊ぶ少し前にテレビドラマ版『HANNIBAL』にハマっていたので、グロシーンはわりとふつうに見ることができましたね。非実在青少女は別格としても、グロシーンの衝撃でいくと、『カオスヘッド ノア』のほうが総合的には強かったですね。

石井 プロモーションでは、事件がクローズアップされていて、“グロ”が強調されていますけど、まわりの人を疑わざるを得ないという状況のほうが恐ろしいですよね。『カオスヘッド ノア』の恐怖は、孤独というところがイチバン大きかった気がするんですが、今回は仲間がいっしょにいてくれる時間が増えました。でも、だからこそ、怪しいと思う瞬間も多いんですね。

「深読みしすぎは禁物!」なミスリードの数々

石井 浅葉君のプレイインプレッションからは、“ミスリード”がすごい! というところがとても伝わってきました。

浅葉 『カオスヘッド ノア』や、サスペンス系のアドベンチャーゲームを遊びすぎていることを逆手にとるような構成に、“やられた”という感じです。

石井 アドベンチャーゲームを遊びなれている人は、深読みがすごいですよね。いつも、いろいろ考えながらプレイしているんですか?

浅葉 「犯人を推理してやろう」とかはとくにないんですけど、「だまされないぞ」とはけっこう思っていますね。終わった後に、上から目線で「これは映画の○○を参考にしたのかな」とか言っちゃうタイプです(笑)。シュタインズ・ゲート』のときも、「『バタフライエフェクト』的でよかった」なんてドヤ顔して言っていたような記憶があります(笑)。実際は、制作陣の方々が、『バタフライエフェクト』を観たのは、作品を出してそういった反響があった後だったと聞いて、さらに驚かされました。

石井 そういうスタンスでゲームに向かう浅葉君からしても、本作は新しい体験だったんですね。

浅葉 ミスリードの置きかたがすごいなと思いましたね。ただ、インタビューで志倉千代丸さんに話を聞いてみると「ひとりで深読みしているだけ」と笑われてしまうところも多かったんです(笑)。でも、たぶん、僕みたいな人ってたくさんいると思うんですよ。

石井 僕も、それなりに深読みはして進めましたね。『カオスヘッド ノア』を遊んでいるとどうしても湧いてきますよね、いろいろな発想が。

浅葉 僕の場合は、Xbox One版の発売前から深読みが始まっていましたから。

石井 それは、リリース情報の時点でですか?

浅葉 そうなんです。たとえば、Xbox One版の発売前に情報を整理しているときに、ディソードを持っている雛絵の姿のCGや、Xbox One版の主題歌CDのジャケット絵に出ている世莉架の姿を見て、「こいつらは怪しい」とかその時点でひとり盛り上がっていました。CDジャケットの世莉架が、すごく深みのある表情をしているんですよ。そんな風に、プレイ前から「こいつは怪しい」と思ってプレイしていると、ゲームの流れもなんとなくその予想が当たっているような気にさせるんです。それで「おれスゲェ!」となっているところに、その深読みをあざ笑うような「と、思うじゃん?」みたいなミスリードが飛んできて、最後には、「もう、参りました……」と(笑)。

石井 深読みすることを見越してゲームを作るというのは、サスペンスというジャンルの定石なのかもしれないけれど、それですら、いろいろなゲーム、映画、小説なんかに触れているプレイヤーからしたら、なかなか目新しいものにならないですからね。そういう意味で、趣味の幅広い浅葉君が楽しんでいるのを見て、作品の奥深さが伝わってきましたよ。

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▲浅葉氏が深読みしたという、『非実在青少年』【カオス・コラボ盤】のジャケット。

“情報強者”というテーマ

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石井 主人公の拓留のこともすごく褒めていましたよね。

浅葉 拓留の“情報強者”という設定がすごく刺さったんです。Twitterとかをやっていると、情報強者であることが正義みたいな流れってけっこう見かけるんですよ。でも、情報強者も、見かたによっては危ういということが恐怖感を交えて書かれていて、ぐいぐい惹き込まれていきました。TwitterなどのSNSで、どこからともなく情報が流れてきて、ある程度広まったところで、ソースがないデマだったみたいな流れって実際によくあると思うんですけど、あのお決まりの流れって、ときどきすごく怖いなと思うんです。ソースが、広く知られた新聞やWebであれば、何でも真実になってしまいそうな気がして。『カオスチャイルド』は、そういった情報の怖さというところをうまく描いているなと思いました。

石井 情報の怖さというのはすごくわかります。本作では、“生放送”がテーマになっているのも新鮮に感じました。拓留って、いままでの主人公とはだいぶ毛色が違っていて、見かたによってはカッコいいですよね。部長としてみんなをまとめていて、意外に行動派だし。僕としてはほかのシリーズの主人公よりも、共感できるところが多かったです。情報強者として振舞いたい気持ちや、家族との関係なんかが、彼の行動の理由付けとしてすごく理解できるんですよ。

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▲主人公の宮代拓留は情報強者を自称する“痛々しい”青年。その好奇心の強さから、思わぬ事件に巻き込まれていく。

ライターふたりのお気に入りキャラクター

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浅葉 石井さんは、どのキャラクターがよかったとか、好みだったというものはありますか?

石井 僕は来栖乃々が好きですよ。デザインとか、声とかいうところからは離れてしまうんですが、彼女の背負っているものの描きかたが印象に残っています。あまり言うとネタバレに踏み込んでしまうんですが、個別ルートがよかったですね。こういうキャラクターの見せかたは、ほかの作品で見たことがなかったので

浅葉 この作品の話って、ギャルゲーじゃちょっと難しいというか、受け入れられないのではないかと思うようなことをやってるんですけど、乃々ルートはとくにそれを感じました。「この作品がギャルゲーじゃなくてよかった」と思いましたね(笑)。

石井 個別ルートに入るまで、ヒロインたちの本音が見えてこないというのは、おもしろい作りですよね。華なんかは、個別ルートを見るまで、いまひとつ役割や目的がわからなくてお飾りなのかなと思ったら、じつはものすごく深い設定があって、唸らされました。『カオスヘッド ノア』を遊んでいるとおなじみの“あの人”が出てくるのもよかったですね。それも、“あの人”が出てきた時点で、何でもできてしまうスーパーマンなのかなと思ったら、ぜんぜんそんなことはなくて。

浅葉 華ルートは、突拍子のなさもよかったですね。“これぞ、妄想の成せる業”というところが、痛快でよかったです。

石井 浅葉くんにも、誰がよかったというのを、聞いたほうがいいのかな。雛絵、雛絵と言っていたけど(笑)。

浅葉 雛絵ちゃん、最高ですね。僕の場合は、作品における役割というより、キャラクターとしてすごく好きです。見た目とか、口調とかかわいいですし、雛絵って、このゲームでイチバンか弱いキャラクターだと思っているんですよ。

石井 確かに、物語の中でイチバンおびえているのが雛絵ですよね。そして、イチバン報われないキャラクターなのかなとも思ったり。でも、確かに「かわいい」と思うように描かれているような気がします。口調とか、すごく印象的だし。

浅葉 ここで、思いっきり脱線しそうなんですけど、また深読みの話をしていいですか?

石井 どうぞ(笑)。

浅葉 雛絵ちゃんは、開発スタッフがいちばんプレイヤーに萌えさせたかったキャラクターなんじゃないかと思うんです

石井 その理由は?(笑)

浅葉 イベントCGを見るとわかるんですけど、雛絵ちゃんのCGはやたら作りこまれているように感じるんですよ。左右ぶちぬきのディソードを見せる画面とか、水着になってスクロールする画面とか。画面サイズのお約束を飛び越えた演出はほかにもあるんですけど、ほかのキャラクターよりも強烈ですよ。

石井 確かに言われてみるとそうかもしれない(笑)。

浅葉 あとは、今回の移植版にも、いろいろなお店で店舗特典がついたんですけど、雛絵ちゃんのものだけ、絵柄が発表されたにも関わらず、最初の情報公開の時点で店舗が公開されなかったんですよ。ここにおれは、雛絵ちゃんの特典をつける店舗については、開発スタッフのあいだで厳正な協議が行われていたのではと思うんです。「このお店に、雛絵ちゃんを任せて大丈夫なのか」みたいな会議があったはずなんですよ

石井 深読みすぎてわりとついていけませんけど、説得されてしまいそうな熱は感じました(笑)。

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▲石井は、来栖乃々の物語や設定がお気に入りとのこと。個別ルートでは、驚きの展開が用意されている。
▲浅葉曰く“家宝”のWonderGooの店舗特典のタペストリ。

ストーリーへの没入感を助けるシステム

浅葉 僕は、システム面のバランスも、シリーズ中でも屈指の出来栄えだと感じました。石井さんはどうですか?

石井 科学アドベンチャーシリーズの最新作ということで、インターフェースはもちろん、トリガーの置きかたなんかも絶妙でしたね。ゲーム全体の難度として、没入感を削がないように調整したのかなと感じました。『シュタインズ・ゲート』と比べても、個別ルートまでのトリガーは簡単になっていて、物語に沿った形で進めればいいという方向になっていますよね。個別ルートに入りたいキャラクターの妄想トリガーをキャラクターの求めている方向に進めれば、だいたい狙ったところにたどり着きますよね。

浅葉 妄想トリガーはよかったですね、とくにポジティブが。

石井 かなり過激ですね。ポジティブだけ抽出していくと、そこらへんのギャルゲーに負けないくらい過激ですよね

浅葉 石井さんは、アドベンチャーゲームの難度は、高いほうが好みですか?

石井 ゲームとして難度が高いことをウリにしているものは、挑戦し甲斐があるなと感じますけど、意外な選択肢を選ばせ続けるという作品は、あまり得意ではないですね。攻略なんかを見て進めてしまうことも多いです(笑)。

浅葉 僕も遊ぶ前は、マッピングトリガーの情報などを見ていて、難しいのかなと警戒していたんですけど、意外にスルスル進んでよかったですね。でも、あまりにスルスル進んでしまって、「あ、俺この物語わかってるわ」と勘違いしてしまったのがよくなかったですね。それで、自分が情報強者になったような気がしたところを、ゲームのストーリーにスパーンと頭をはたかれたという(笑)。

石井 システムの難度もミスリードというのは、おもしろい考えかたですね。マッピングトリガーはどうでしたか?

浅葉 『シュタインズ・ゲート』のラボの連帯感みたいなのを、システムを通じて感じられましたね。部室に集まって、マッピングトリガーを進めながら、皆で「ああだ、こうだ」言っているときが、青春だなぁって感じで(笑)。

石井 プレイヤーに情報を整理させながら、キャラクターの個性も交えていくというのは、すごくおもしろい手法ですよね。

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▲プレイの没入感を削がないよう、絶妙なバランスで盛り込まれた“トリガー”システムにも注目だ。

『カオスチャイルド』は、『シュタインズ・ゲート』を超えたのか

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浅葉 秋葉原の街で、“この作品は『シュタインズ・ゲート』を超えたのか”って書いてる宣伝トレーラーが走っていたんですよ。あれは、かなりの衝撃でした。この質問を、実際にされたとしたら、どう答えるかすごく悩みませんか?

石井 浅葉君は、「科学アドベンチャーシリーズ最高傑作かもしれない」ってインプレッションに書いていたから、“超えた”ということでいいのかな?

浅葉 あれ、書くときにすごく悩んだんですよ。でも、2014年を振り返ったときに、あれだけ人に薦めたソフトってなかなかないなと思って、最後は勢いであの表現にしました。ゲームとは関係のない仕事のメールとかにも、「ところで、最近遊んだ『カオスチャイルド』がすごくおもしろかったんです」みたいなことを追伸として書いていたくらいなので(笑)。でも、僕は『シュタインズ・ゲート』もめちゃくちゃ好きなんですよ

石井 『シュタインズ・ゲート』も発売したときに絶賛していたものね。それがきっかけで、いっしょに何冊か本を作ることになったくらいだから。

浅葉 はい。Xbox 360で遊んだときは、震えましたよ。でも、なんか口コミで人気が広がっていって、「おもしろいというのが当たり前」という状況になってきては、密かに派生作品を追いかけるようになりました。『シュタインズ・ゲート』って、アドベンチャーゲーム界の『ドラクエ』や『ファイナルファンタジー』みたいな位置に来ちゃったのかなと勝手に思っていて。それを大きな声で「スゲェ!」っていう必要は、もうないのかなと思ったりしてたんです。ひねくれてますね(笑)。

石井 それ、すごくわかります。僕がゲーメストにいたころにも、同じような考えかたをしているライターがいました(笑)。

浅葉 どっちも好きということで、まとめるしかないのかなという話題ですね(笑)。石井さんは、『シュタインズ・ゲート』と『カオスチャイルド』、どちらか1本しか選べないとなったら、どうしますか?

石井 どちらか一方しか選べないといわれると、迷いに迷って『シュタインズ・ゲート』を選びます。話としては、両方ものすごくおもしろくて、超える超えないというのはあまり意味がないんですが、1本しか選べないのなら、そうします。

浅葉 石井さんにとって、『シュタインズ・ゲート』は特別な作品なんですね。

石井 話の内容はもちろんいいんですけど、僕は『シュタインズ・ゲート』の発売当初から静かに広がっていったプレイヤーの熱が、強く印象残っているというのが僕にとっては大きいんですよ。そこから、この作品の魅力を読み解いてみようと思ったのが、自分で年表を作ったりするところにつながっていきました。そういった体験を含めて、特別な1本です。もう、どちらの作品がおもしろかったかという話じゃないですね(笑)。Xbox 360版が発売された直後から、Webを含めてあらゆるところでユーザーの反応を探っていたんですけど、まゆりが酷いことになるシーンや、「失敗した」のシーンで、ガツンとやられているプレイヤーがたくさんいたんです。そこからこのゲームは、人の心を揺さぶるものがたくさん詰まっていると確信したんですね。

浅葉 でも、きっと超える超えないって、そういうことなんですよね。ひとりひとり、答えが違うと思うんです。『カオスヘッド ノア』や『ロボティクス・ノーツ』がイチバン好きといわれても、その感覚をわかりたいと思いますね。それくらい、科学アドベンチャーシリーズって全部おもしろくて、むしろ全部遊んでおくと、なおおもしろいというような構造になっていますし。

石井 世界観が微かにつながっているのがいいですよね。小ネタとして、ほかのシリーズ作品のキャラクターや出来事がちょろりと出てくると、得した気分になりますから。

『カオスチャイルド』の食わず嫌いはもったいない

『カオスチャイルド』は“あの作品”を越えたのか? 担当ライター座談会_12

石井 ちょっと話を戻しちゃいますけど、プレイステーションプラットフォーム『カオスチャイルド』をプレイした人の評価というのは気になりませんか?

浅葉 すごく気になります。

石井 Xbox Oneって、日本だとどうしても、相当なコアゲーマー向けのハードで、Xbox Oneで『カオスチャイルド』を遊んだ人というのは、科学アドベンチャーシリーズの怪しい魅力を受け入れられる、歓迎できる人が多いと思うんですよ。それが、もうちょっとライトな層に広がるであろう、プレイステーションプラットフォームにきて、どういういう評価が出てくるのか楽しみです。超えた、超えないが、そこで議論されるとおもしろいですよね。

浅葉 僕は『カオスチャイルド』を遊んだとき、「科学アドベンチャーが俺のところに帰ってきた!」と思ったんですよ。『シュタインズ・ゲート』や『ロボティクス・ノーツ』は、ギャルゲー的なところからもちょっと離れていて、雰囲気カッコいいところも多いじゃないですか。それが、またちょっとオタク的に喜べる要素が山盛りになって帰ってきたなと感じたので、それが一般というか、カジュアルにゲームを遊んでいる人にまで刺さるのかは興味がありますね。

石井 刺さると思いますよ。僕はこの作品、一見奇抜に見えて、いろいろなターゲットを狙える作りになっていると思います。キャラクターたちの心理に、共感しやすいというか、どこか現実味があるのがイチバンの強みだと思います。『シュタインズ・ゲート』のダルとかフェイリスとかって、愛すべきキャラクターたちではあるんですけど、記号的なイメージが強かったんですよ。それに比べて、『カオスチャイルド』は、キャラクターたちの考えかたがはっきり描かれていて、その心のやりとりや駆け引きにおもしろさを見出しやすいと思うんですよ。

浅葉 僕はいろいろ喋りまくったんですけど、石井さん的に、『カオスチャイルド』の肝はどこですか?

石井 “人によって見えている世界が違う”というところが肝なのかなと。見えている世界が違うからこそ、いろいろなことが起きてしまうという物語の構造が、この作品の大きな見どころじゃないでしょうか? 誰の目線で物語を見るかで、ぜんぜん印象が変わってくるので、クリアー後に想像を巡らせると、いろいろな発見があると思いますよ。あと、“そして僕は、このくそったれなゲームをクリアした。”というキャッチコピー。ここに深い意味があったと知ったときは驚きました。いつかネタバレありで、またこういう座談会をしてみたいですね。

浅葉 そのときに向けて、僕も遊び直しておきますね(笑)。


カオスチャイルド
メーカー 5pb.
対応機種 PSVPlayStation Vita / PS4プレイステーション4 / PS3プレイステーション3
発売日 2015年6月25日発売予定
価格 PS Vita版は6800円[税抜](7344円[税込])、限定版は8800円[税抜](9504円[税込])、ダウンロード版は6000円[税抜](6480円[税込])、PS4版とPS3版は各7800円[税抜](各8424円[税込])、限定版は各9800円[税抜](各10584円[税込])、ダウンロード版は各7000円[税抜](7560円[税込])
ジャンル アドベンチャー
備考 企画・原作:志倉千代丸(5pb.)、プロデューサー:松原達也(5pb.)、メインキャラクターデザイン:ささきむつみ、サブキャラクターデザイン・制服デザイン:松尾ゆきひろ、メインシナリオライター:梅原英司、サブシナリオライター:たきもとまさし、安本亨、谷崎央佳、林直孝(5pb.)、シナリオ補佐:たきもとまさし、シナリオ監修:林直孝(5pb.)、演出:若林漢二(5pb.)、ディソードデザイン:麦谷興一(CHOCO)、音楽:阿保剛(5pb.)、ディレクター:松本裕介(5pb.)