ファミキャリ!会社探訪第26回はHEROZ!
ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。第26回となる今回はHEROZ。
早稲田大学、NECで同期だった高橋知裕氏と林隆弘氏が、2009年に設立したHEROZ。早くからモバイルアプリの開発に力を入れてきた同社の、最大の特徴はAI(人工知能)。そのAIの技術を活かして、将棋やチェス、バックギャモンなどのアプリを手掛けている。今回は、代表取締役の高橋氏と将棋の強豪AI“Apery”を開発し、世界コンピュータ将棋選手権で優勝したこともある平岡拓也氏に話を聞いた。
ゲームに限らず、AIで何かを成し遂げたい(平岡氏)
人工知能研究者
Apery開発者
平岡拓也氏
――平岡さんの経歴から簡単に教えてください。ゲーム業界を志した理由やHEROZに就職したきっかけや経緯を教えてください。
平岡拓也氏(以下、平岡) 大学を卒業後、新卒で地元の大阪にある半導体メーカーに就職しました。その会社は、ゲーム会社向けのカスタムメモリ開発などがメインだったのですが、当時はとくにゲーム業界を意識したわけではありませんでした。その後、ソフトウェアの開発をすることになり、初めて本格的にプログラミングを学ぶことになりました。
――プログラミングは、社会人になってから始めたのですか?
平岡 学生時代も少しやっていました。社会人になってから、プログラミングを勉強しつつ、趣味でコンピューター将棋も始めました。それから徐々にゲームAIに興味を持ち始めて、2014年には、第24回世界コンピュータ将棋選手権で優勝もしました。優勝した時、すでに前の会社を辞めることは決めていたのですが、コンピュータ将棋選手権の関係者兼HEROZに所属している方から誘いを受け、おもしろそうだなと思って、転職することにしました。
――前職を辞めた理由は何だったのですか?
平岡 興味が変わったのがいちばんの理由です。つぎの会社を決めてから辞める人が多いと思いますが、とりあえず辞めてからつぎを探そうと思っていました。そこに深い意味はなく、当時はあまり先々まで考えていませんでした(笑)。
――HEROZへの入社は、コンピューター将棋を開発している平岡さんにとって、天職ですね。
平岡 そうですね。本当に、趣味が高じての入社です(笑)。
――コンピューター将棋に興味を持ったのは、将棋が好きだったからなのか、AIそのものに興味を持ったからなのでしょうか?
平岡 将棋が好きだったから、というのが大きいですね。ちょうど始めた時には、“Bonanza”(独自の思考ルーチンで将棋ソフトに革命を起こしたと言われる)というソフトのソースコードが公開されまして、仕事で使う言語も同じだったこともあり、勉強にもなると思って始めました。
――HEROZに入社しようと決めた決め手は何ですか?
平岡 おもしろそうだと思ったことがひとつ。ユーザーとしてはあまりゲームをやらないのですが、『将棋ウォーズ』はプレイしていましたので、HEROZのことも知っていましたし、知人が勤めていて、入りやすかったのも理由のひとつです。
――入社後は、コンピューター将棋のAIを突き詰める仕事に?
平岡 いえ、将棋はすでにアプリでありましたし、それほど関わることはないだろうと思っていました。入社してからは、ボードゲームアプリの開発に携わりました。いまは、別のボードゲームのAI開発やルール実装などを担当しています。
――AIに特化した会社は非常に珍しいと思いますが、HEROZという会社を初めて知った時の印象は?
平岡 『将棋ウォーズ』というアプリくらいしか知らなかったのですが、斬新なゲームだと思いました。小さいころから将棋をやっていて、将棋のAIはどのようなものという自分なりの定義があるのですが、それとは全然違うもので、AIの活用がうまいと感じました。
――平岡さんが開発した将棋AIの“Apery”は、これからもまだまだ改良していくわけですよね?
平岡 はい。まだ続けます。一種のライフワークのようになっていますね。
――ちなみにAIの開発というのは、具体的にはどのような仕事なのですか?
平岡 ゲームのAIに関してになりますが、まずルール通りに先の状況を読むことが最低限のラインです。そこからさらに強くするために、たとえば強いプレイヤーの動きを分析し、それを探索の効率化や機械学習などを用いてプログラムに落とし込みます。AIをより強く、賢くすることでユーザーに楽しんでもらえるようにすることが、開発するなかでおもしろいところです。また、開発の経験やスキルが活かせる仕事に携われていることには、大変やりがいを感じています。
――個人作業が多いのですか? それともチームで?
平岡 AI自体の開発は、個人で仕事をすることが多いです。しかし、分担するパートを作って、できるだけみんなで取り組めるようにすることが、いちばん作りやすい形だと思います。ひとつのアプリを作ることに関しては、当然いろいろなコミュニケーションが必要ですし、ひとりで全部できるものではありませんね。
――将棋ソフトをはじめ、各種アプリがそうそうたる実績を上げています。現在の御社の“AI”のレベルをどのようにとらえていますか?
平岡 目指すところは、やはり無限の強さです。ですから、終わりはないですね。将棋の完全解析は、ほぼできないと思っていますので、逆に言うといつまででも強くなると思っています。現状はプロ棋士と対局して、勝っても驚かれないレベルにまで来ています。
――では、社内の雰囲気はどのような感じでしょうか?
平岡 社内はとても明るい雰囲気ですね。仕事もやりやすいですし、将棋AIでトップクラスとなる“ponanza”の開発者・山本(一成氏)、“ツツカナ”の開発者・一丸(貴則氏)をはじめ、研究所出身者など、実力あるメンバーが多くいますので、刺激も多いです。若くても仕事を任されている人や、自分で責任と目的意識を持って仕事をしている人も多いですね。
――将棋好きなスタッフからは、一目置かれているのではないですか?
平岡 いえ、そんなことはありません。とくに、林(隆弘氏。HEROZ共同創業者)がプレイヤーとしてやたらと強いんですよ(笑)。