『塊魂』、『のびのびBOY』の高橋慶太氏の新作『Wattam』は遊んだ人みんなが笑顔になるゲーム【E3 2015】_08

狙っているのは『塊魂』と『のびのびBOY』の中間の体験

 2014年12月、SCEAが開催したコミュニティーイベント“PlayStation Experience”にて、『塊魂』や『のびのびBOY』で知られるゲームデザイナー高橋慶太氏と、『Journey』(邦題:『風ノ旅ビト』)の開発を率いたRobin Hunicke女史が設立したスタジオ“Funomena”の初タイトルとして発表されたプレイステーション4用ソフト『Wattam』。E3に先駆けて実施されたイベントでは、スクリーンショットとトレーラーが公開されてさらなる話題を集めていた。
 E3ではインディータイトルコーナーにてプレイアブル出展。プレイのあと、Tシャツがプレゼントされるなど、アットホームな雰囲気で展示が行われていた。プレイした人がみんな笑顔になっていたことが印象的な『Wattam』。E3会場にて、高橋氏に解説していただきながらプレイするという非常に贅沢な体験をさせていただいたので、インタビューと合わせてそのときの模様をお届けしよう。

Wattam E3 Trailer

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▲高橋慶太氏

高橋慶太氏(以下、高橋)  『Wattam』は、いちおうストーリーもあって。地球が大爆発で悪者を倒すんだけど、爆発しちゃったから誰もいなくなっちゃって。それからしばらくして世界が生まれるんだけど、Mayor(メイヤー)しかいない。メイヤーは地球の子どもなのね。帽子の中に爆弾があって爆発できるという。で、メイヤーはずっとひとりだと思っていたんだけど、ほかの人(ほかのキャラクター)がいることに気づく。人がいるじゃん、のぼれるじゃん、手をつなげるじゃん、その人になることもできるじゃん、と。

ーーのぼったり、手をつないで、輪ができるんですね。

高橋 そう。のぼったまま動いたり、手をつないだまま動いたりもできて。このあたりの処理はまだまだよくしたい。で、いちばん最初は友だちを5人作るのが目標。5人と手をつないでメイヤーのアクションで花火のように打ち上がって爆発すると、つぎのステージに進む。打ち上がって爆発するの楽しいでしょ?

ーー確かに(笑)。キャラクターが個性的ですね。

高橋 みんなそれぞれ個性があって、雲は雨を降らせたり、食べ物は食べられちゃったり、食べられるとうんちが出たり、うんちは臭いからみんなが逃げちゃう。

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ーーうんち、かわいそうですね。

高橋 でも、空からトイレがやってきて。うんちは流されないように逃げるんだけど……つかまると流されてゴールデンうんちになる。

ーーあ、ゴールデンになると臭くなくなって、みんな逃げなくなるんですね。よかった。

高橋 キャラクターを切り替えるとわかるんですけど、ひとりひとり音楽が違う。手をつなげると音楽がマッシュアップされて。何人つながってもマッシュアップし続けられる。手をつなげる人数に限界もないし。

――つながることに意味があるんですね。

高橋 狙っているのは『塊魂』と『のびのびBOY』の中間の体験かな。触っているだけで楽しいというのは変わらない要素。あ、このあとに出てくるキャラクター、かわいいよ。

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――枕?

高橋 そう、枕。ほかの人と仲よくしたいんだけど、枕に触るとみんな寝ちゃうの。手をつなぐとみんな寝ちゃうから友だちができなくて悲しんでる。

――うんち以上にかわいそうですね。友だちになる方法を考える必要があるわけですね。

高橋 うん。コーヒー豆のキャラクターがいるんだけど、彼は枕と手をつないでも眠らないの。コーヒー豆をあいだに入れることでほかの人もつながることができて。と、これで枕の悩みを解決できたので、枕は自分の能力を操れるようになるわけ。ちなみに、コントローラーがもうひとつあれば、ふたりプレイもできます。サッカー場のステージ……あ、ステージもキャラクター、人なの。この世界は全部生きているから、ステージを進めていくと、ステージ自体を操作できるようになる。サッカー場でサッカーの試合もできるし。と、E3バージョンの内容はこんな感じですね。じゃあ、インタビューします?

――はい、お願いします。まず、E3での反響はいかがですか?

高橋 すごくいいですよ。みんな笑顔になるし。

――確かに。E3取材で疲弊しているメディアの人たちもプレイしたら笑顔になってましたね(笑)。『Wattam』はRobin女史とふたりで作られているのですか?

高橋 いや、もともと僕がバンクーバーでやっていたプロジェクトがキャンセルになったときに、もうちょっと海外でやりたいなと思って。新しい自分のゲームを考えたときに『Wattam』のアイデアが生まれて。でも、作るにはエンジニアが必要で、インド人の知り合いが手を挙げてくれて、その彼とふたりで立ち上げたのが最初。

――そうだったんですね。

高橋 作っていくうちにおもしろくなりそうだったから、SCEAに見せようと。僕らお金もないし(笑)。GDCのときにサンタモニカスタジオの人にプレゼンして。「よさそう」という反応をもらえたんだけど、僕はバンクーバーにいて、インド人の彼がニューヨークにいて、スタジオがサンタモニカ。このまま作るのは難しいとなったときに、サンフランシスコにいるロビンにあいだに入ってもらって。それが2年前くらい。『Wattam』というタイトルも造語で、タミル語だったかな。タミル語で“vattam”が輪という意味で、人とつながるゲームだから“輪”と“vattam”をつなげて『Wattam』にしようかと。

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――いろいろわかってきました。そういう経緯があったからPlayStation Experienceで登壇されていたんですね。でも、なぜE3ではインディーコーナーでの出展なんですか? SCEAブースに出展されていると思って探しましたよ。

高橋 ん~、どこまで言っていいのかわからないんだけど、いろいろあって……。とにかく、メディアのみなさんに取り上げてもらって、いい方向に話が進むとうれしいかな。

――対応プラットフォームはプレイステーション4ですよね?

高橋 うん。Unityで作ってるから、やろうと思えばPCでもなんでも出せるけど、いまはプレイステーション4のみ。

――E3ではプレイステーション4の実機で動いてますよね。

高橋 実機だね。

――さきほど、『Wattam』は『塊魂』と『のびのびBOY』の中間を狙っているという発言がありましたが、最初の発想はどういうものだったんですか?

高橋 アイデアのきっかけは、子どもと積み木で遊んでいたとき。積んでは壊し、積んでは壊しというのがおもしろくて。積み木に別のものを混ぜると、難しくなるんだけど、よりおもしろくなって。で、それが現実世界のように感じたのね。たとえば、日本人だけのグループに外国人が入ると輪が乱れたりとか。会社組織でも、なんて言えばいいんだろう、いろいろな種類があるじゃない。国も違うし、言葉も違うし、宗教も違う。その違いをどうやれば乗り越えられるんだろう、と。個性としてはみんな同じよりも、違うほうがいいんだけど、違いがあることで混乱や衝突が起こって。それを積み木で遊んでいるときに、積むのも壊すのも楽しいから、みんなが協力して楽しくできないかな、って思ったのね。積み木が生きていると思ったの。積んで積んで、最後に壊すだけじゃなくて、爆発が起こる。そうしたら楽しいだろうなって。楽しくて笑っていたら、違いなんて気にしなくなるかなって。そういうことでこういうゲームになった。だからひとりひとりのキャラクターが違う必要があったの。

――手をつなぐ表現については?

高橋  本当は手をつなぐよりものぼるアクションのほうが好きなのね。積んで壊すというのが好きだし。手をつないでも、のぼってもゲームプレイとしては何も変わらないんだけど。手をつなげるし、のぼれるし、ぶらさがることもできるし。可能な限りフィジカルなゲームプレイを残そうと思っていて。

――音楽のマッシュアップというアイデアをよく実現できましたね。

高橋 ほんとだよね(笑)。インタラクティブなミュージック、インタラクティブなプレイをずっとやりたくて。いままではうまくできなかったけど、今回は絶対にできると思って。まじめな話になるけど、音楽がひとりひとり違うのはいいんだけど、AとBがつながったときに、Aの音楽とBの音楽がつながってCの音楽になっちゃうと、AとBはどこに行っちゃったんだ、ってなる。それって集団は個の集まりなんだけど、集団では個が失われるということになっちゃう。だからマッシュアップする形にして、Aの音楽とBの音楽は残るんだけど違うものになるということがやりたかった。本当はプレイヤーが好きな音楽を入れられたらもっとおもしろいんだけどね。触っているだけでおもしろいのがいちばん。人を選ぶだけで音楽が変わるし、20人いたら20曲あって、つながりかたで音楽が変わる。いまの段階では、まだ全部はできてないけど、それが目標。

――日本でも遊べる日を楽しみにしています。

高橋 みんなが応援してくれると助かります。

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