もっといっしょにいたい
2015年6月16日~18日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催される世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2015”。SCEAブースの“Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)”コーナーにて、バンダイナムコエンターテインメントの技術デモンストレーション・ソフト『サマーレッスン』のE3 2015版を体験。インプレッションをお伝えする……のだが、ちょっとしたカミングアウトをするため、あえて匿名で望ませていただきたい。
E3開催前日にサプライズ発表された、ふたり目となるキャラクターは金髪碧眼の外国人。シチュエーションも“女子高生に勉強を教える先生”から“ホームステイ中のミュージシャンに日本語を教える”という海外出展仕様に。ちなみに、筆者は取材で前回デモの『サマーレッスン』を体験済みで、女子高生へのドキドキをすでに経験していることを先に記しておこう。
さて、E3 2015版に登場する金髪碧眼の彼女は、赤いキャミソールの上に白い薄手のニットをまとい、ショートジーンズにサンダルという格好だ。体験が始まると、目の前に青い空と海が広がる。沖縄らしき場所なのだろう。平屋と思われる家屋の縁側に座っている状態だ。右側を見ると、ギターを抱えて歌っている彼女の姿が見えた。しばらくすると立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づいてくる。そのあいだに周りを見回してみると、ブタの形をした蚊取り線香置きや扇風機、風鈴といった、夏を代表するものが目に映った。まずここでお伝えしておきたいのが、部屋の中のような閉鎖空間ではなくても、ここまで臨場感を出せるものなのか、と驚いたこと。空と雲が広がる開放された空間でありながら、バーチャルの世界として成立している。言葉にすると簡単だが、おそらく技術的には相当難しいはず。
さらに、いままさに彼女が近づいてくるという感覚は、奥行きがあるからこそ体験できるものであって、前回のデモでは味わえなかったことだ。と、冷静だった筆者に動揺と衝撃が走ったのは、彼女がすぐ目の前にきたときだった。
「かわいい」。
CGキャラクターに「かわいい」なんて、使い古された形容詞だ。でもそれ以外に言葉が出ない。前回のデモの女子高生も、驚くほどリアルだった。だが、今回の金髪の彼女は、重みがあるというか、存在感があるというか、生々しいというか……。筆者がどのような行動を取ってしまったかを伝えるのがもっともわかりやすいかもしれない。
彼女と目が合わせられなかった……。
そうしてしまった理由は、日を浴びてさらに白さを増した肌と、透き通る金髪をなびかせる彼女の生気に、美しさを覚えてしまったからだ。それほどの輝きを彼女は放っていた。日本語を教えてほしいと、僕を「センセイ」を呼ぶ彼女。隣りに座り、ノートを開き、ときに無邪気に、ときに破壊力満点の無防備さを振りまきながら、さまざまな表情を浮かべる彼女。青い瞳で見つめられたとき、僕はロサンゼルスで恋に落ちた……。
なんだろう。前回のデモではここまでドキドキしたことはなかった。日の光が燦々と照る屋外だからこその開放感があったからかもしれない。白いニットの下に赤いキャミソールがうっすらと透けて見えたからかもしれない。ショートパンツからすらりと伸びる足に心を奪われたのかもしれない。思い当たる理由はいくつかあるのだが、はっきりとした原因はわからない。あえて言うのならば、彼女の艶かしさがリアルよりもリアルだったからにほかならない。とくに、彼女が近づいてきて手を差し伸べてきたときの表情は破壊力バツグンで、プレイが終わったあとに、何度も思い出してしまうほどだった。
今回のデモでは、話題を選んで会話が進む“注目アイコン”システムが搭載されており、好きなアイコンを選んで見つめる(視線を合わせる)ことで、選んだアイコンに応じた話題で会話が進む。アイコンは4種類あり、風鈴、家、ギター、庭(にあるひまわり)から選択が可能だった。筆者が選んだのはギター。彼女の歌が聴きたいと思って選んだのだが、会話だけで終わってしまったのでちょっと残念な結果に。ただ、このように分岐があるのはプレイヤーとしてはうれしい要素だ。実際、すべての展開を知りたくてウズウズしたことを告白しよう。
また、前回のデモとは異なり、今回は彼女がもう行かなくちゃと告げて縁側の奥に立ち去るシーンがあるのだが、この瞬間がじつに絶妙で、去っていく彼女に対して追うことも話しかけることもできないため、別れの悲しさというか、もっといっしょにいたいという気持ちが浮き彫りにされる。このシチュエーションがあったからこそ、より彼女への思い入れが増したのかもしれない。
以上、『サマーレッスン』のE3 2015版デモの感想を述べてみた……のだが、この原稿を書いているときも彼女のことを思い出し、恋慕が深まっているのを感じた。まさかロサンゼルスで、しかもCGキャラクターに恋をするとは……。人生何があるかわかりませんね。