満を持しての海外リリース決定!

 『ドラゴンクエスト』(以下、『DQ』)シリーズでは初となるアクションRPG、『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』(以下、『DQH』)。日本ではPS3/PS4で2015年2月26日に発売され、好評を博した本作が、北米では2015年10月13日、欧州で2015年10月16日にPS4にて発売されることが明らかとなった。

 そこで、本作のプロデューサーであるスクウェア・エニックスの青海亮太氏と、ディレクターを務めるコーエーテクモゲームスの庄知彦氏を直撃! プレイステーションフォーマットでは10年ぶりとなる海外での『DQ』シリーズ発売について、たっぷりと話を聞いた。

海外での発売が決定した『ドラゴンクエストヒーローズ』そのローカライズに込められた狙いとは?【E3 2015】_01
▲スクウェア・エニックス 青海亮太氏(写真左、文中は青海)
 コーエーテクモゲームス 庄知彦氏(写真右、文中は庄)

とことんこだわったローカライズ

――E3 2015の会場は周られたのですか?
青海 ずっと取材なので、会場を歩いたくらいですね。
 気になるタイトルは待機列が長いので、並ぶヒマがないんですよ。
青海 『Star Wars』が大好きなので、『Star Wars バトルフロント』が気になっているのですが……。隣にエレクトロニック・アーツのブースがあって、ずっとあのテーマ曲が聞こえるので、それでテンションを高めています(笑)。

――E3 2015で気になるトピックスはありましたか?
 『ファイナルファンタジーVII』のフルリメイク作品ですね。まさかと思いました。
青海 “Xbox E3 2015 Briefing”で見た“HoloLens”のデモはインパクトがありましたね。ワクワクしました。
 Project Morpheusみたいな、“覗く”系統のデバイスに未来を感じました。5年後、10年後が楽しみになります。
青海 ゲームはもちろんですが、新しい技術が発表されるところがE3のおもしろさですよね。

――そんな数あるトピックのひとつに、本作のローカライズがあります。いよいよ『DQH』が海外で発売されますね。
青海 各国の取材を受けているのですが、今回のローカライズでは英語ボイスだけでなく、日本語のボイスも収録しています。日本が誇る声優さんだけでなく、松坂桃李さんや桐谷美玲さん、片岡愛之助さんの声で楽しんでいただけるのは、うれしいですね。どの国の方も、まず最初に「日本版のボイスは入っているのか」と聞かれるんです。「もちろん」と答えると、皆さんが喜んでくれますね。
 とくにフランスの方が喜ばれていました。やっぱり日本のアニメやゲームが好きな方が多いので、すごく好意的にとらえてくれました。

――英語版のキャストも、堀井さん(堀井雄二氏。本作ではゼネラルディレクターを務めた)が選ばれたのですか?
青海 そうです。PS2でリリースした『DQVIII』の海外版でボイスを付けたこともあるのですが(※国内版は未収録)、今回もオーディションを行って、堀井さんみずから、どの声がアリーナに合うのかな、と選ばれました。アリーナとクリフトは、海外版の『DQIV』ではロシア訛りの英語を話すという設定になっていまして……。

――そうなのですか?
青海 異国の人というイメージから、そうなったんです。なので、今回もロシア訛りの英語が話せるキャストを選ばれていました。ほかにも、ビアンカにはアメリカの田舎に住んでいるイメージがあるので、少し訛りのある英語をしゃべってもらったり……。そういったニュアンスの違いが興味深かったですね。
 過去のナンバリングタイトルを翻訳する際に作ったイメージを、今回もそのまま踏襲しているんです。
青海 ボイスは、イギリスのロンドンで収録しました。『DQ』はファンタジー作品なので、基本の言語はファンタジーの本場であるイギリス英語になっています。日本とイギリスそれぞれのローカライズ担当が密に連絡して、『DQ』らしさを失わないように注意していました。海外ゲームのローカライズ作品をプレイしていると、たまに日本語が変だったり、字幕の改行の位置がおかしい場合がありますよね? そういったことのないように、丁寧にローカライズしています。
 初めて『DQ』のローカライズを見て、ここまでこだわるのかと驚きました。私自身も、制作していて非常におもしろかったです。

海外での発売が決定した『ドラゴンクエストヒーローズ』そのローカライズに込められた狙いとは?【E3 2015】_02
海外での発売が決定した『ドラゴンクエストヒーローズ』そのローカライズに込められた狙いとは?【E3 2015】_03
▲E3会場のLAコンベンションセンター内SOUTH HALL入り口には、大きな垂れ幕が飾ってあった。
▲スクウェア・エニックスブースでは試遊台が置かれ、さまざまな国のプレイヤーが楽しんでいた。

世界各国の反応は……?

――海外ユーザーからの反応はどうですか?
青海 プレイステーションのフォーマットで、ここまで大々的に『DQ』作品を展開するのは『DQVIII』以来なので、10年ぶりとなります。すでに発売されているアジア版では、初めてハングルと繁体字の字幕を付けて好評をいただいたので、北米欧州でのセールスも期待できると思っています。アクションゲームという点でも、北米欧州のプレイヤーの嗜好に合うので、歓迎してくれている印象ですね。
 いろいろな国の取材を受けて、世界各国に『DQ』ファンがいらっしゃるんだなと実感して、あらためて驚きました。アクションゲームとしてはものすごく目新しい作品ではありませんが、好意的に受け止めてもらえていると感じています。

――海外メディアの反応は?
青海 『無双』シリーズ、海外では『Warriors』シリーズと呼ぶのですが、そこに関連付けた質問が多いですね。
 『ゼルダ無双』が海外でヒットしたので、「『ゼルダ無双』と何が違うのか?」とよく聞かれますね。そもそも、本作は『ゼルダ無双』とはコンセプトが違うことを毎回のように説明しています(笑)。
青海 ユーザーさんもメディアの方も、『ゼルダ無双』が好きだという方がとにかく多いんですよ。
 “ゼルダ”というIPの人気のすごさを感じましたね。

――“ゼルダ”の話になってしまいました(笑)。ちなみに、海外向けに何かしらの変更をゲームに加えたりは?
 基本的にはしていません。国内で配信されたDLCはすべて収録していますが、今回は純粋にローカライズを楽しんでいただきたいと思っています。
青海 誰でも気軽に楽しめるのが『DQ』の良さなので、難度も変えていません。

――国内版でも英語ボイスを聞けるようなパッチをあてることなどは……。
 それは、さすがに難しいです(笑)。
青海 気になる『DQ』ファンは、申し訳ないのですが、海外版をどうにかしてプレイしていただければ。
 私も、堀井さんの言葉がどのようにローカライズされているのか、改めてゲームで確認したいですね。
青海 英語で展開するムービーシーンを見ていると、ピクサーが作った海外のアニメ映画を見ているような感覚になるんですよ。
 鳥山明先生の描いたキャラクターのデザインもそうですし、グラフィックの質感が近いのかもしれないですね。私は、海外版のタイトルロゴが国内版と同じであるところにいちばん驚いています。『無双』シリーズでは毎回変わるので、そういうものなのかと(笑)。
青海 メインビジュアルも日本と同じです。そこはやはり、本作の世界観ならではの強みですね。
 どれだけの方に遊んでいただけるのか、本当に楽しみです。

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