あとはもう気になるのは値段だけ!

 アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで開幕したE3。Oculus VRブースで、同社のVRヘッドマウントディスプレイOculus Riftの製品版モデル(コンシューマーバージョン第1弾ということで、界隈ではCV1と呼ばれる)を体験してきた。

 2016年第1四半期の発売が決まり、ついに製品仕様が公開され始めたOculus Rift。肝心の価格についてはまだ不明ながら、アプリを通じた予約制のE3デモがあっという間に埋まるなど、製品そのものへの期待は確実に高まっているようだ。

 さてデモはCV1を被ったのち、Xbox Oneコントローラーを手に持たされ、VR空間内のランチャーソフトに登録された9本のソフトから好きなものを起動して体験することができた(恐らくランチャーソフトはOculus Riftのプラットフォームアプリ“Oculus Home”の原型になるものだろう)。
 被ってすぐ気がつくのが、その圧倒的な軽さだ。これまでの開発者用キットやプロトタイプを重いと思ったことはないのだが、CV1は見回すように顔を動かしても重量に頭が振られたり、自重でヘッドマウントディスプレイがずれるようなこともない。軽くなった分、ヘッドバンドでそんなに締め付けなくても十分にホールドできているので、総合的な快適性に二重・三重に貢献している。

VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftの製品版モデルを体験! 軽さと快適さに驚き【E3 2015】_05

 映像面は、CV1の土台になっているプロトタイプCrescent Bayとほぼ同じで、高精細で残像感の少ない滑らかな映像体験を得られる。ピクセルの隙間が見える網目感がまったく感じられないわけではないので完璧とは言わないが、それでも満足度は非常に高い(もちろんそれなりのマシンは必要だが)。

「三人称視点のVR」という手法

 記者がデモに選んだのは、Insomniac Gamesが先日発表したばかりのVR向けアクションアドベンチャー『Edge of Nowhere』。というのも実は本作、VRと聞くとイメージしやすい一人称視点ではなく、あくまで三人称視点のゲーム。大手スタジオが真剣に取り組む三人称視点のVRはどんなものか、試してみたくなったのだ。

 ストーリーとしては、「南極の山に消えた調査隊の捜索に向かった男が、次第に目を疑うような超常的に出来事に巻き込まれていく……」という、まぁそんなに目新しくはないお話。序盤は足場がところどころ崩れる中を進んだり、ジャンプして崩れた橋の先に飛び移ったりする『トゥームレイダー』っぽい内容で、中盤から巨大生物が姿を見せたり、小型クリーチャーに追われて逃げ回ったりといった『ロストプラネット』っぽい要素も入ってくるのだが、まぁそれ自体にはそんなに驚きはない。

 しかし、これがまぁ丁寧によく出来ている。操作はXbox Oneコントローラーで行うのだが、カメラ操作はなく、使うのはキャラクターの移動(左アナログスティック)とジャンプボタン(A)だけ。
 カメラはキャラクターを追尾しつつ、自動的にアングルを適宜調整。もちろんプレイヤーが顔の向きを変えれば、後ろに振り返るとか、「キャラを左側に逃がしながら、追ってくるクリーチャーを右を向いて確認する」といった事も可能だ。

 また、この“三人称視点のVR”は、三人称視点ゲームらしいキャラクターとの連動感に、VRの特徴である実体感が加わり、一人称視点が生み出す「キャラになる」感じとはまた違う一体感・没入感を生み出しているのがユニーク。
 その没入感の高さをさらに活かすために、本作には場面転換のトリックなども仕込まれていて、例えば「洞窟を進んだらいつの間にかどこかの書斎にワープしていた」という場面。平面の普通のゲーム映像として見てもそれほど大したことないと思うが、これがVRの実在感があることで、超常現象に遭遇して自分の認識が歪んだかのような不思議な気分になるのだ(この錯覚を使ったホラー演出もある)。

 一人称視点のVRだったら、ここからさらにスリルがアップするものの、操作に慣れが必要だし、見せたいものや演出に気付いてくれない可能性もある(視線誘導テクを駆使してそっちに向いて貰わないといけない)。『Edge of Nowhere』はVRの実在感で体験の密度をグイッとあげつつ、「難しい操作ができなくてもゲームみたいな濃い体験ができる」という、体験メディアとしての新しい表現を模索しているように感じた。

VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftの製品版モデルを体験! 軽さと快適さに驚き【E3 2015】_02
VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftの製品版モデルを体験! 軽さと快適さに驚き【E3 2015】_01
▲開発者用キットやプロトタイプでは許されていたラフなデザインや質感も、製品版となれば事情は異なる。というわけでCV1では仕上げがマットになり、ちょっと尖った高級オーディオ機器っぽい感じに。位置を検出するためのセンサー(右)も、Webカム丸出しなものからシュッとしたデザインに大胆に変更。
VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftの製品版モデルを体験! 軽さと快適さに驚き【E3 2015】_03
VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftの製品版モデルを体験! 軽さと快適さに驚き【E3 2015】_04
▲別売り予定のモーションコントローラー・Oculus Touchは触れず。

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