ゲームとしては『毛糸のカービィ』よりも、むしろ『Limbo』寄り

 スウェーデンのゲームスタジオColdwood Interactiveの2Dアクションゲーム『Unravel』は、エレクトロニック・アーツが5月末に行ったプレE3イベントの中でも、それまでまったくのノーマークながら、最大の発見だった。
 詳細な発売時期や対応プラットフォームなどは不明だが、開発はColdwoodで、EAはパブリッシングを担当するという。過去のEAタイトルでは『Shank』(開発はKlei Entertainment)などの小規模インディー以上パッケージ未満のダウンロードタイトル路線を思わせる関係だ。

 さてUnravelとは、編み物などの糸がほどけたりほつれることを指す動詞。物語は、とある老婆の編み物から赤い毛糸の人形が歩き出すところから始まる。そう、本作は彼の背中から伸びている毛糸を活かした物理アニメーション&アクションが特徴の、プラットフォームアクション/パズルアドベンチャーゲームなのだ。

 毛糸で出来たキャラクターのプラットフォームアクションゲームと言えば『毛糸のカービィ』を思いつく人も多いと思うが、ゲームデザインやグラフィックの方向性はかなり異なる。
 ゲームとして近いのはむしろ『Limbo』などで、足場を作ったり物理を使ったパズルを解くことで先に進んでいくのが目的。毛糸は命綱にもなるし、糸を張って作った道に物を転がしたり、糸の道の上に置いたものをパチンコ(スリングショット)のように上に弾いて飛ばすといった活用法もあって、なかなか頭を使う。

お婆さんの毛糸玉から転がり落ちた人形の冒険。パズルプラットフォームアクション『Unravel』は今年のEA最高の掘り出し物かもしれない【E3 2015】_02

 そしてグラフィックもミニチュアが現実世界で動き回っているかのような、リアル寄りのテイスト。物語の作りもユニークで、直接的に何かを語ることはあまりなく、マップ内や背景に置かれたオブジェクトや、時たま背景に見える幻影を通じて、老婆の周辺で過去に何が起こっていたかをプレイヤーにそれとなく推測させるという間接的なストーリーテリングを採用している。
 それこそ『Limbo』や、THQが海外で昔出した怪作『Deadly Creatures』(虫が主人公で、背景として周囲で欲深い人間たちのストーリーが展開されるトリッキーさ)のようなひねり方なのだが、スウェーデン北部の田舎をイメージした背景やセンスいい音楽と相まって、じんわりと抽象的にストーリーの断片が伝わってくるのがいい感じ。

 Coldwood Interactiveはユーロ圏で展開されるウィンタースポーツ系のタイトルを中心に手掛けてきたデベロッパーだが、このアーティスティックなセンスの良さは、血なまぐさいタイトルばかり手掛けてきた同郷スウェーデンのStarbreeze Studiosから『ブラザーズ 2人の息子の物語』が出てきた時のことを思い起こさせる(ただしブラザーズ~は、映画監督のJosef Fares氏が同スタジオに持ち込んだ企画を製品化したもの)。果たして本作も成功することができるのか、今から完成が楽しみなタイトルだ。

お婆さんの毛糸玉から転がり落ちた人形の冒険。パズルプラットフォームアクション『Unravel』は今年のEA最高の掘り出し物かもしれない【E3 2015】_01
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