我々はさまざまなゲーム要素をミックスすることを楽しんでいます
E3に先駆けてアメリカ・ロサンゼルスで開催された『Battleborn(バトルボーン)』イベント。本稿では、本作のクリエイティブ・ディレクターとGearboxSoftware バイスプレジデントのインタビューをお届けする。
Randy Varnell氏(文中はRandy)
――“ヒーロー・シューター”というジャンルを掲げていますが、その定義、ほかのシューターとの違いを教えてください。
Randy まず『Battleborn(バトルボーン)』はFPSタイトルです。そして"ヒーロー"の部分についてですが、本作で登場するすべてのキャラクターは皆"ヒーロー"という位置づけです。もちろん、それぞれのキャラクターに強い思い入れを持って制作しています。発売時点で、25人の”ヒーローキャラクター"を用意する予定です。最初にFPSと言いましたが、いわゆる典型的なFPSとは違います。銃を持っているキャラもいれば、剣を使うキャラ、弓を使うキャラ、斧を使うキャラなど、スタイルも多種多様でそれぞれが違ったスキルを持っています。本作には、アクションゲーム、ファイティングゲームの要素も含まれていて、たとえばキャラ選択画面を見てもらえばわかりますが、まるで『ストリートファイター』のキャラ選択画面のような作りになっています(笑)。
――確かにそうですね(笑)。本作はMOBAの影響を強く受けている印象がありますが、FPSとMOBAとのハイブリット作品、という位置づけなのでしょうか?
Randy MOBAもひとつの要素であると言えます。『ボーダーランズ2』を例に考えると、あのタイトルはFPSと『ディアブロ』のアクション要素を組み合わせたタイトルと言えるでしょう。我々はさまざまなゲーム要素をミックスすることを楽しんでいます。『バトルボーン』のMOBA要素については、レベル1から始まり成長していく部分であったり、キャラクターの数が多いことや、5人対5人のチームベースで戦う部分などが該当するかと思います。ただ、MOBA要素だけではなく、本作ではボスを倒しながら大きな目的に向かって進めるといったストーリー要素も含まれています。
――5つの勢力は、ゲーム中でどのように描かれるのですか?
Randy すべての勢力にはそれぞれの背景、戦う理由があり、簡単に言うと全勢力が力を合わせてヴァレルシやレンデインと戦う、というストーリーになっています。ゲーム性での勢力の違いの具体例としては、“エルドリッド”(ソーン、ボールダー、マイコーが所属)という勢力にはシールドがありませんが、ヘルス(体力)回復のアビリティがあります。一方、“ジェネリット帝国”(ラース、カルダリアスが所属)は相手に攻撃してダメージを与えると自分のヘルスが回復するアビリティがあります。このようにそれぞれの勢力によって使える能力には大きな違いがあります。
――クラスの分類はありますか?
Randy いまの時点では特定の名称を使ってのクラス分けはしていません。ただ、“オフェンス”、“ディフェンス”、“スペシャリスト/サポート”のように、キャラごとのアビリティに応じた役割というのは必然的に発生します。たとえば、マイコーは全キャラの中でもっとも優秀な“ヒーラー”ですし、モンタナはミニガンを使い、大きな体躯で敵からのダメージを吸収できるキャラです。このふたりのキャラをうまく組み合わせれば、モンタナが前面で盾となり、その陰でマイコーがダメージを回復させる、といった戦いかたができます。我々がキャラクターを開発する際には、それぞれの能力や役割に留意していて、それぞれの特長や役割をユーザーの皆さんにいかにわかりやすく伝えるのかという部分は、これからの作業となります。
――ストーリーモードの詳細を教えてください。
Randy ストーリーモードの構成としては、冒頭とエンディングのストーリーがあります。冒頭とエンディングのあいだのストーリー、ミッションについては、テレビドラマのエピソードのように、好きなモノを選んでプレイできるとお考えください。一度クリアしても、またプレイすることも可能です。そのような構成にした理由としては、キャラが25人もいるので、違ったキャラを使って同じストーリー、ミッションを何度もプレイしてほしいからです。
――エスコートミッションをプレイして感じたのが、冒頭はオフェンス、最後はディフェンスが求められていて、ひとつのミッションの中にさまざまなゲーム性が盛り込まれているということでした。そういった部分を意図して作られているのですか?
Randy そうですね。ストーリーモードでは、それぞれのミッションがどのようなタイプなのかをわかりやすいようにしたいと考えています。今回プレイしていただいたエスコートミッションは、取材用に少し簡単な設定にしましたが、本来はセンチュリー(見張り)がやられてしまった時点でゲームオーバー、とシビアな設定になっています。センチュリーがやられないようにシールドを張るなど、ディフェンスをより意識してプレイする必要があります。先ほどお話しした、どのようなタイプのミッションなのかをわかりやすくする理由は、ミッションの内容によってユーザーの選ぶキャラが変わってくるためです。今回のエスコートミッションであれば、よりディフェンシブでヒーリングを得意とするキャラを選んだほうが有利にミッションを進められますからね。逆にボスを連続して倒さなければいけないようなミッションでは、それに適した攻撃性の高いキャラを選ぶなど、ミッションに応じたキャラセレクションも楽しみのひとつとなります。
新たなジャンルを作り出したタイトルという点に注目してほしい
Steve Gibson氏(文中はSteve)
――『Battleborn(バトルボーン)』の開発はどのように始まりましたか?
Steve “いつから始まったか”と答えるのは難しいですね。どの時点を持って開発が始まった、とは正確には言えないですから、“何年も前から”という答えになってしまいます。
――本作に限らずの話ですが、GearboxSofwareはどのようにゲーム開発が始まるのですか?
Steve たとえば『Brothers in Arms』はGearboxSoftwareのデザイナーの何人かが「リアルタイムストラテジーとシューターを掛け合わせたタイトルを作りたい」と言い始めたのがきっかけで、そこから広がりました。GearboxSofwareは、これまで違ったジャンルをミックスした新しいゲームを作ることを念頭に実績を積み重ねてきており、本作も同じような考えのもと、制作をしています。
――『Battleborn(バトルボーン)』はシューターとMOBAを組み合わせたゲーム、となるのでしょうか?
Steve いいえ。正確にはMOBAはあくまでマルチプレイヤーというくくりのうちのひとつの要素です。本作にはファイティングゲームの要素もありますし、『ボーダーランズ』の要素もありますし、『Brother in Arms』の要素も混じっていると言えます。MOBAという要素でいえば、本作のマルチプレイヤーには複数のモードがあり、その中のIncursion ModeはMOBAの要素が強く入っています。
――予約特典や発売後のDLCの予定はありますか?
Steve 現時点で予約特典は予定していません。発売後のDLCについてもいまのところは何も決定していません。25人目以降のキャラクターについても未定です。
――使っているエンジンについてお聞かせください。
Steve Unreal4とUnreal3を組み合わせたエンジンを使っています。同じエンジンを『ボーダーランズ』でも使っていました。
――『ボーダーランズ』からの進化はどういった部分でしょうか?
Steve 新世代機向けゲームですので、ポリゴン、シェイダー、アニメーションの表現力、あらゆる点で進化しています。『ボーダーランズ』に比べて各キャラのダイアログ(会話)のボリュームも7倍になっています。25人のキャラがいて、ひとりのキャラがほかの24人のキャラと会話を交わすわけですから相当な会話量になることが想定されます。ちなみに、キャラ数が25で勢力が5つですので、各勢力に5人ずつ振り分ける予定です。
――3Dエフェクトがいままで以上にリッチになっている一方で、マズルフラッシュや爆発などはすべてカートゥン風の2Dエフェクトで処理されていますが、この意図は?
Steve 本作には多くのキャラや多彩な場面が登場しますので、3Dだけではなく2Dの表現も使うことによって、ユーザーにより理解、視認してもらいやすくするためですね。
――『Battleborn(バトルボーン)』は『ボーダーランズ』のスタイルに似ていると言われますが……。
Steve その通りです。音楽にしても、キャラどうしの話しかたにしても似ていると思います。違いとしては、『ボーダーランズ』は映画のオマージュや現実の世界とつながりがあるようなコンテンツを含んでいましたが、『Battleborn(バトルボーン)』はその世界で完結していて、実際の世界と関連するようなコンテンツは絡ませていません。
――マルチプレイヤーモード(インカーション/デバステーション/メルトダウン)とストーリーモードは大きく内容が違いますが、異なる開発チームで制作しているのでしょうか?
Steve いや、これだけ多くのキャラがいて、キャラたちがすべてのモードに絡んでくるので、チーム別に開発しているわけではありません。マルチプレイヤーモードを含む、どのモードでプレイしても自分のprofileレベルは引き継がれますので、0からではなくレベルアップした自分のprofileレベルでキャラを使えます。
――キャラクターのインターフェースがそれぞれ違うのもいいですよね。
Steve そうですね。実際、各キャラのプレイ画面のインターフェースにはかなり力をいれて開発しています。
――どのような層に遊んでほしいですか?
Steve シューティングゲーム好き、マルチプレイヤー好き、重厚なストーリー性のあるゲームが好きなユーザーなど、幅広い層に遊んでもらいたいです。そして本作は、過去のタイトルと同様にGearboxSoftwareが新たなジャンルを作り出したタイトルという点も注目してほしいですね。
――本作は『ボーダーランズ』の積み重ねがあったからこそ開発できたのでしょうか? 『ボーダーランズ』で達成できたこと、本作で目指すことを教えてください。
Steve ストーリーテリングとキャラクターの部分は『ボーダーランズ』の影響を受けています。ストーリーの構成で『ボーダーランズ』と大きく違っているのは、冒頭とエンディングミッションは全員共通ですが、途中は好きなように進めることができる部分。使用するキャラを好きに変えられますし、プレイするミッションの順番もユーザーが好きな順番でプレイできる。これは『ボーダーランズ』ではできなかったことです。途中まで使っていたキャラとは別のキャラを使って最後までプレイできますので、ゲーム性の幅が『ボーダーランズ』と比べて広がっているのが特長です。プログレションについては、『ボーダーランズ』の“bad ass rank”をより進化させているので楽しみにしてください。