プロジェクト始動2カ月経過。ラストスパートの今の状況を聞く。

 惜しまれつつ閉店した名門ゲームセンター“ゲームデイトナ志木”(以下、デイトナ志木)を復活させるために、インターネットを通じて一般から始動資金を集めるという、ユニークなゲーセン再建の試み、“ゲームデイトナ志木 復活プロジェクト”。2015年3月より、東京都板橋区のゲームニュートンと荒川区の西日暮里ゲームスポットバーサスが中心となり、前例のないこのプロジェクトが始まった。
 それから2カ月。当初アナウンスされた一般、企業からのスポンサーを募る期間である2015年5月30日が迫ってきた。この活動の間、スポンサーは本当に集まったのか? また、その後のアクションは? といった気になるアレコレをプロジェクトの代表者である松田泰明氏(ゲームニュートン代表)に聞いてみた。「みんなで作るゲーセン」をテーマに掲げる“志木デイトナ復活プロジェクト”、再建という(いったんの)ゴール地点は見えたのか?

“ゲームデイトナ志木 復活プロジェクト” ~リポート【第3回】:支援者募集はラストスパート! 代表者に聞く“いま”と“これから”~_01

「最低限のラインに到達して、再始動に向けて動き出しました」

――(取材時点で)志木デイトナ復活プロジェクト始動から、ちょうど2カ月が経過しました。今日は現在までの進捗状況やその後の経過といったことがお伺いできればと思います。

松田 本プロジェクトについて、非常にご協力、ご賛同いただけけるかたが多くて本当に感謝すると同時に驚きました。2015年4月末から、ゲームニュートン、ゲームスポットバーサスの両店の店頭や、我々が運営する格ゲー大会の会場でも支援者の受け付けを始めました。こちらでは10000円よりも少額の小口の支援も受け付けているのですが、かなりの数のかたから応援をいただきました。

――アーケードゲームファンが多いでしょうから、やはりゲームセンターや大会の会場で気軽に申し込みができるというのが良かったんでしょうかね?

松田 そうだと思います。高校生といった若い人からの支援もいただいていますしね。あと、本当にありがたいことなんですが、ふたりのかたから50万円のスポンサーに名乗りでてくださりました。ひとりは熱烈なアーケードシューティングファンの個人のかたからのご支援です。純粋なゲーム好きなかたとのことで唯一のリクエストとして「『怒首領蜂大復活 BlackLabel』を置いてほしい」とのご要望をいただきました。もちろん、万全の環境で稼働したいと思っております。

――アーケードゲームはゲームセンターで遊びたい! というゲーセン愛を感じますね。

松田 そうなんですよ。本当にありがたいことです。そしてもうひとりは『ブレードアークス from シャイニング』(現在、セガのALL NET P-ras MULTIで稼働中の対戦格闘ゲーム)を手掛けた開発会社、スタジオ最前線の近藤敏信社長です。直接ご本人から連絡をいただきまして、ぜひ支援したいとのお声を頂戴しました。じつは近藤社長は地元が志木で、志木デイトナも学生時代ホームゲーセンだったそうです。スタジオ最前線のオフィスもすぐ近所なんですよ。

――“超”のつく地元勢のアーケード関係者からの熱いオファーなんですね。

松田 近藤社長からスタジオ最前線として、地元のゲーセンである志木デイトナをバックアップしたいとのお言葉をいただきました。我々としても、その応援をいただいたぶん、新生志木デイトナでは『ブレードアークス from シャイニング』をレギュラー稼働させて、スタジオ最前線さんといっしょに盛り上げていきたいと思っています。イベントや大会を企画、開催しますのでご期待ください。

――いずれも、協力したい人がいて、協力してくれた人への恩返しがあって……と、プロジェクトのコンセプト「みんなで作るゲーセン」らしいお話ですね。

松田 ご賛同いただいたかたには本当に感謝します。

――ところで、冒頭でお話したように、プロジェクト開始から2カ月が経ちました。現在の進捗状況をお話できる範囲でもいいので、教えていただけないですか?

松田 まず、我々は第一段階の目標額を400万円と考えていました。各メディアさんで取り上げていただきご賛同者が多くいらっしゃったことで、現状は250万円のラインに到達して再始動のアクションの第一歩を取ることができるようになりました。ただ、これは本当に最低額なんです。前オーナーの高野さんに支払う旧店舗にあるゲーム機の譲渡金が250万円という金額になるからです。これ以外にも実際に新たに営業を始めるとなると店舗敷地の再契約に掛かる敷金、礼金、保証金といった地代関連、改装費も必須になりますから、まだまだ資金としては足りているとはいえない状況です。

――つまり、まだまだ資金面では足りていないものの、再始動することはほぼ確定と考えていいんですね。

松田 ええ。ここまで到達できたのは、本当にみなさんがスポンサーとして協力してくださったからにほかなりません。“Hoobar”(フーバー)さんを通じたソーシャルスポンサー募集の活動は5月30日でいったん終わりますが、それまであと少しという状況ですのでご支援をいただけますと幸いです。また5月30日以降も、新生志木デイトナ再始動まではゲームニュートン、西日暮里ゲームスポットバーサス店頭ではご支援者を受け付けておりますので、引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

――ひとまずのゴール地点は見えた状況と。

松田 そうですね。そしてもうひとつ、ご報告があります。新体制で志木デイトナを始動させるにあたって、店舗を経営するための新会社を設立します。代表は私とバーサスのオーナー荒川氏のふたりで、現在会社の登記を進めている最中です。ゲームニュートンと西日暮里ゲームスポットバーサスの両店が経営を引き継ぐとはいえ、みなさんから頂戴した支援金があって再始動が可能になる新店舗ですから経営面の自立性や透明性は不可欠です。ご支援者に対して会計報告は必要と考えていますので、できる限り経営状況は開示していきたいと思っております。

――再始動へのアクションは思った以上に早く着手しているんですね。

松田 5月30日から動き出しても、再始動までの時間がいたずらに増えてしまうだけですから。ある程度の目処が立った時点で動き出しました。また、同時にゲームセンターの経営に必要な手続きも動き出しています。また、Tシャツ、ビッグフラッグなど支援してくれた人たちへの恩返しの準備も始めています。

――最後に、本プロジェクトに関心があるかたへひと言お願いできますか?

松田 我々も少しでもアーケードゲームの世界の盛り上げに寄与できるようにがんばります。いま現在はラストスパートという段階で、Twitterや配信などで少しでも多くの人にご理解とご協賛をいただけるようアクションをしています。まったく新しい試みの「みんなで作るゲームセンター」が無事に始動した際には、ご支援いただいたかたや多くのアーケードゲームファンにご満足いただける店舗を目指していきます。埼玉県志木市はなんとなく遠いイメージがありますが、東京メトロ副都心線や有楽町線で都心や横浜方面からも一本で行ける意外と近いところなんです。できるだけ早い時期に再オープン日が確定、お知らせできるように動いていますので、ご期待ください! 

●記者の目

 “志木デイトナ復活プロジェクト”が始動して、ちょうど2カ月経過という時点での取材。松田氏のインタビューにもあったように、この活動が各地で知られるようになってスポンサーとして支援してくれる人の数は確実に増えたようだ。特に、少額での支援の受け付けも始めてからの反響は大きいとのこと。今回の取材で再始動に向けてもう動きを始めたとのことで、プロジェクトは次のフェイズに突入しつつあることがわかった。今後はオープンまでの経営的な準備をどのようにしていくのはと同時に、支援してくれたすべての人達にどのように応えていくか? 具体的なアクションに注目したいところ。要望、意見、アイデアを集めて「みんなで作るゲーセン」というテーマに沿った店作りや恩返しはどのように形にしていくのかは、本連載で引き続き追っていきたい所存だ。また、ゲーセン再始動というケースをもとに、実際(率直に)“何”に、“どれだけ”コストが掛かるのかという内幕についても追っていく予定だ。