今後日本だけで実装予定の新要素も明らかに

 ゲーム開発において、世界的に見ても高い開発力を持って知られる台湾。日本国内において、そんな台湾と密接な取り組みを見せているのがライオンズフィルムだ。同社は、台湾で人気のタイトルを日本に展開することで、大きな成功を収めているのだ。5月中旬、ファミ通.comでは、ライオンズフィルムお誘いのもと、台湾メーカー数社に合同取材をする機会を得た。ここでは、その第1弾として国内でも配信が開始されたばかりの『幻想三国志WEB』で知られるUserJoy Technologyへの取材をお届けしよう。

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 UserJoy Technologyは、おもにPCオンラインゲームなどで実績をあげてきた台湾メーカー。2007年からは日本法人も設立しており、『三国群英伝ONLINE』シリーズなどでおなじみだ。同社の代表作のひとつとして知られるのが『幻想三国誌』。おなじみ『三国志』の世界観にファンタジーテイストを加味して好評を博した同シリーズは、2003年にシリーズ1作目がパッケージ版として発売されて以降、これまで外伝も含めて5作がリリース。台湾におけるシリーズ累計販売本数が110万本を誇るという、圧倒的な知名度を誇る人気シリーズとなっている。国内では、日本ファルコムより『幻想三国誌』と『幻想三国誌II』がリリースされており、ご存じの方も多いのでは?

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▲台湾で累計110万本を販売している『幻想三国誌』シリーズ。
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▲取材に応じてくれた『幻想三国志WEB』のプロデューサー、ジョン・フワン氏。

 『幻想三国志WEB』は、これまでパッケージ版としてリリースされてきた『1』~『4』をブラウザゲーム向けに再編集したという意欲作。パッケージ版のシリーズ作をブラウザゲームとして展開するというのは、なかなかに斬新な取り組みだが、これも時代の流れと言えるのかも。『幻想三国志WEB』では、『1』~『4』の代表的なシナリオをピックアップし、さらに『幻想三国誌』を未プレイの方への配慮として、各シナリオ間をつなぐ、新規シナリオも書き起こされている。「ファンにはたまらない作品になっていると自負していますが、シリーズ作をすべて遊んでいなくても楽しめるようなシナリオになっています」とは、『幻想三国志WEB』のプロデューサーを務めるUserJoy Technologyのジョン・フワン氏。シナリオを担当するのは、『1』~『4』を手掛けたシナリオライターさんだというから、いかに『幻想三国誌』が世界観を大切にしているか、おわかりいただけるだろう。

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▲台湾の数々の賞を受賞している『幻想三国誌』シリーズ。右は台湾版『幻想三国誌WEB』のパッケージ版。

 一方で、『幻想三国志WEB』では戦闘システムも一部変更。本国台湾では2013年9月からサービスインしているが、とくに戦闘システムが好評だという。さらに、『幻想三国志WEB』から導入されて、好評を博しているのが“占星”。“占星”には、“青龍”、“朱雀”、“白虎”、“玄武”、“麒麟”の5種類が用意されており、キャラクターに装備することで特定の能力が向上されられるという。「中国文化特有の要素を取り入れることで、ユーザーの皆さんに親近感を抱いていただけるようにしました」(フワン氏)とのこと。“占星”は、ゲーム内通貨でも利用できる強化コンテンツとなっている。

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▲“占星”は、“青龍”や“朱雀”など5種類が用意。“占星盤”に設置することで、特定の能力が向上させられる。好きな能力をアップさせられるというわけだ。
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 さて、ブラウザゲームのお楽しみといえばオンラインプレイだが、本作ではボス戦やチーム戦などのマルチプレイが用意されている。ボス戦は巨大なボスに対してワールドの全員が対峙して戦うというもの。一方のチーム戦は、最大3人の仲間でステージをクリアーするというものだ。さらには、参加条件を満たしたギルドメンバー全員が参加できるギルド戦なども用意されている。幅広いマルチプレイも、本作ならではの魅力と言えるだろう。

 その人気の高さから、小説化などもされているという『幻想三国志』シリーズ。同人誌への展開も積極的に行われており、「ファンの方は作品に関して情熱を持っていただいております」(フワン氏)とのことだが、特筆すべきは女性人気の高さ。プレイヤーの男女比率は男性6:女性4とのことで、この手のタイトルにしては女性比率の高さが際立つが、それもこれもキャラクター人気のゆえ。そのイケメンぶりからとくに、オリジナルキャラクターに対する人気が高いようだ。

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▲その人気の高さから小説化もされた『幻想三国誌』(左)。男性キャラクターに対する女性人気が高く、『幻想三国誌4 外伝』では、パッケージイラストが男性キャラクターにフォーカスされるほど。

 台湾版が2013年9月配信に対して、日本語版の正式配信は2015年4月16日。というわけで、提供されるコンテンツには若干差があり、いま日本語版で楽しめるのは台湾版の30%くらいとのこと。「まだ日本語版では実装されていなくて、台湾で人気に高いものは?」との日本メディアからの質問には、ふたつのコンテンツをピックアップしてくれた。ひとつめが“天若の塔”。こちらは、プレイヤーがシングルプレイで自分を強化していくというコンテンツ。“塔”という名前から予想される通り、ガシガシ塔に登って己を強化していくようだ。もうひとつが“勢力戦”で、ユーザーどうしがふたつある勢力のどちらかに所属して、敵対する勢力のユーザーと戦うという内容のオンラインモード。台湾ではイベント人気が高いので、大人気だそうだ。どちらの勢力を選択するかはプレイヤーの自由に任されているので、「どちらか一方に勢力が集中する可能性があるのでは?」との疑問もプレス陣から飛び出したが、そちらに対しては「自分で選択できるようにすると、勢力の偏りがでるとの懸念はつきまといます。自動的に割り振りできるようにする方法も考えましたが、自分で選択できるようにしたほうが帰属感が出るので、そうしました」とフワン氏。さらに、所属勢力に対して個人の貢献による報酬を個別に設定するなどの措置をとることで、バランスを取っているという。“ユーザーファースト”という、『幻想三国志WEB』を象徴する方針と言えるだろう。

 以下に、ライオンズフィルムから送られてきた、“天若の塔”と“勢力戦”の画面写真をお届けする。よく見ると、日本語!?ということで、日本での実装に向けて、着々と準備は進んでいるようだ。これは楽しみ!

■天若の塔画面写真

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▲敵を倒すことで、プレイヤーが力をつけていく“天若の塔”。

■勢力戦画面写真

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▲“青”と“赤”に分かれて戦う“勢力戦”。1日1度決まった時間に開催される。チーム戦ということで盛り上がりそう。“天若の塔”ともども、日本語版でのいち早い実装を期待したい。

 さて、本語化にあたってのカルチャライズにも力を入れているという『幻想三国志WEB』。「台湾のゲームユーザーはせっかちだが、日本人はじっくり楽しむ傾向がある」という、いわば民族性に配慮してのゲームバランスの調整がその最たるもの。さらに、今後の実装予定として、“ペーパードール(PD)”が、日本語版だけに実装される予定であることも明らかにされた。PDは、「外見にこだわる傾向がある」(フワン氏)という日本人の嗜好にあわせて企画されたもので、プレイヤーはゲーム中に引き連れて楽しむことができる。PD実装の具体的な時期などは明らかにされなかったが、日本のユーザーにとっては楽しみな新要素だ。

 最後にフワン氏から、日本人のユーザーに向けて以下のコメントが寄せられた。「『幻想三国志』は台湾ではユーザーさんどうしのコミュニケーションが頻繁に行われておりまして、本作が縁で、仲がよくなったり、恋人や夫婦になる方もけっこういらっしゃいます。インターネットを通して開発チームに“私たち結婚しました!”と報告してくれるケースも多いです。それに対して台湾のチームも特別のプレゼントをゲーム内で差し上げたりするんです。開発チームとユーザーさんのコミュニケーションも親密に行なっているんですね。日本においても可能な限り、こういった親密交流を行なっていきたいと考えています」

 さらに、フワン氏の口からは、日本の記者団へのサービスとして、『幻想三国志WEB』で今後実装を検討している新機能を教えてくれた。ひとつめが“ギルド機能の強化”。こちらでは、たとえば、メンバーでいっしょにギルドを育てるといったような機能を考えているという。もうひとつが、仲間を集めるのが楽しくなる“パッシブスキル”の強化。“パッシブスキル”とは、ノンプレイヤーキャラクターに装備可能な、いわば応援機能。パーティーに連れて行くことで、さまざまな恩恵が受けられることになる。“パッシブスキル”を充実させることで、仲間の個性化が図られ、仲間を増やす楽しみを増やしたいのだという。

 さらに進化していく『幻想三国志WEB』の世界。今後はモバイル版のリリースなども視野に入っているとのことで、ますます広がるであろう『幻想三国志WEB』の世界に期待したい。

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▲オフィスを少しだけ撮影させていただきました。
▲『幻想三国志WEB』プロデューサーのジョン・フワン氏(右)とゲームデザイナーのハンソン・カオ氏(左)。
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▲最後に『幻想三国志WEB』のスタッフの方に集まっていただいて記念撮影。