ゲーム業界の“最低必要条件”とは!?

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_02

 2015年5月17日、ディー・エヌ・エー(DeNA)は、ゲーム業界合同就職イベント“HEAT 渋谷”を開催した。

 イベントでは、学校、専門学校、企業紹介ブースが展開され、企業説明講演が行われたほか、デザイナー学生のポートフォリオ持ち込み相談コーナーも設置。場内はゲーム業界を目指す若者たちの活気に溢れていた。

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_01
合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_03

 ここでは、ゲーム会社社長によるパネルトークの内容を、テーマごとに紹介しよう。

<パネルトーク登壇者>
・ヴァンガード 杉山智則氏
・リズ 磯野貴志氏
・ランド・ホー 塚本昌信氏
・アールフォース・エンターテインメント 横山裕一氏
・ディー・エヌ・エー シニア・プロデューサー/ゲーム人材採用担当 馬場保仁氏(モデレーター)

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_04
▲左から、磯野貴志氏、塚本昌信氏、杉山智則氏、横山裕一氏、馬場保仁氏。

■ゲーム作りは“生涯勉強が当たり前”

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_05

 はじめのトークのテーマは、“ゲーム業界において、今後必要とされる人材とは!?”となった。

磯野貴志氏(以下、磯野) ゲーム業界に求められるのは、メンタルが強い人です。中にはやはりくじけてしまう子もいるのですが、そこで復活すると、ずーっと長くやってこれますね。仕事をしていると、メンタルは勝手に鍛えられます。また、キツいことがあっても絶望はしないで、ときには同僚や上司頼るようにしてほしいです。

塚本昌信氏(以下、塚本) 人材に求められることのひとつは、健康であることです。そのためには、プライベートの時間を楽しく過ごせるようにしてほしいですね。また、昔から変わらない重要なことは、ゲームが大好きであること、情熱を持っていることです。ゲーム作りはつらいこともいっぱいあるので、そこを乗り越えられるかは、好きかどうかにかかっていると思います。僕は、ゲームが好きでない人は、ゲームを作るべきではないと思っています。

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_07

杉山智則氏(以下、杉山) 社会人として当たり前のことができる能力が、まず求められます。また、ゲーム業界は技術の変遷がほかの業界に比べるととても早い、それどころかいちばん早いと言ってもいいので「生涯勉強が当たり前」と思って入ってきてほしいです。たとえば、おまんじゅうはひとつのものを変わらずに作っていけばずっとお客さんによろこんでもらえますが、ゲームはずっと変わり続けていきます。その圧倒的なペースの早さについてきて、学ぶことが当たり前にできる方に来てほしいです。
 また、クリエイターはユーザーを満足してもらうものを作らないといけないので、ユーザーのことをよく知ってほしいです。ユーザーによろこんでもらうため、ユーザーのための情報を集めるということが、スタートになります。

横山裕一氏 僕もゲームが好きであることは、ゲーム業界の最低必要条件だと思っています。また、ユーザーのよろこんでいる顔を思い浮かべることも大切です。いままではクリエイターはユーザーの顔を想像できなかったのですが、スマートフォンゲームの普及によって、それは改善されてきています。電車の中でスマホのゲームで遊んでいるユーザーを見て、「おもしろそうだな」ということがわかるんですよね。そうした観察眼も身につけてほしいです。

 この後に、各登壇者が自身の就職活動について語る一幕も。杉山氏はこれから就職活動をする学生向けて「ゲームクリエイターになれるのかな、と疑問に思うのではなく、“なれる”と思ってください。会社に入ることではなく、最高のゲームクリエイターになることを考えるべきです」とメッセージを贈った。

■“将来的にどの技術を身につけるか”が重要

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_09

 ここからは、各社が新人の採用基準、または採用の際に重視することを語った。

横山 採用においては、ミスマッチを防ぐというのがいちばん重要です。うちでは、その方法のひとつとして「あなたは会社に大切な時間をお金で売るんですよ、自分にとっていい会社かどうかを見極めてください」って言うようにしています。
 また、「必ずここで働かせてください!」って言う子は、いったん断るようにしています。そこからしばらく間をおいて、よく考えてもらって、それでも入りたいという意志が強ければ迎え入れる、というふうにしています。

杉山 主体的な人、最低限の知識を持っている人、物事を誠実に行うことによって目的を達成できる人に来てほしいです。技術的なことに関しては、“どれだけ身につけているか”よりも、“将来的にどの技術を身につけるか”が重要になってくると思います。
 また、企業理念とのズレがないか、ということにとても重点を置いているので、面接では企業理念に共感を覚えているかどうかを聞くようにしています。

塚本 僕も会社のカラー、ビジョンというところをよく知ってほしいです。また、やはり情熱を持ってゲームを作れるか、ということはいちばんの基本になります。

磯野 面接の30分、1時間でわかることには限界がありますので、うちでは“とりあえず働いてみよう”、というスタンスでいます。また、会社でなく、“ゲーム業界”に入るという気持ちでいてほしいです。

合同就職イベント“HEAT 渋谷”社長たちが今後のゲーム業界と求められる人材を熱く語ったパネルトークをリポート_06

 さらに、各社は新人の育成についても語り合うこととなった。

塚本 私の会社では、イニスさん、ヘキサドライブさんと合同の新人研修をしています。そうすることで、大企業と変わらない人数の同期、ライバルを持つことができます。若いときから他社と競うことは重要だと考えています。

磯野 研修ではなく、リアルに仕事をすることでもっとも人材は育つと考えています。うちでは新人にマネージャーとなる者をつけて、実戦的な仕事に取り組んでもらっています。

杉山 うちでは、サポートに回る人員をひとり立てて、半年間は実戦的な仕事をしてもらっています。あくまで会社はサポートをする側であり、本人が考えて行動して、自主的に考えて行動できるようになってほしいです。
 また、新人だけでなく社員全員が参加する、“理念の実現のため”の取り組みをしています。リーダーやサブリーダーを決めて、理念が達成できていなかったらどうするか、ということを小さなことから大きなことまで考えて実行し、報告したり、全体発表を行うようにしています。そうすることで、“会社は変えることができる”ことを、社員全員が感じられるようになっています。

横山 うちでは、いろいろな改善案を3つ出してもらい、実行するという研修を2ヵ月間くらいやっています。また、新卒の社員を教育することで、中堅の社員も教育されるようになっていきます。

 馬場保仁氏は「新人は育ててもらって当たり前だと思わないでほしい、ゲーム作りは自分が意志を持って進まないといけません」と提言した。新人が自主的に行動できるようになってほしい、というのは各社で共通している想いのようだ。