各社がツールやシステムをプレゼンテーション

 2015年5月8日~10日、東京・秋葉原UDXにて東京インディーフェス(TIF) 2015が開催。TIFの見どころと言えば、何といってもおよそ100本にも及ぶ出展タイトルの数々。一方で、ラインアップに負けないくらい注力されているのが、クリエイターらが登壇してのカンファレンス。ビジネスディとなる初日の5月8日には、スポンサー各社によるワークショップが行われた。ここでは、スポンサー4社、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、ネクソン、ID@Xbox(マイクロソフト)、Cocos2dxのワークショップの内容を、まとめてお届けしよう。

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン

“Unity Ads”など、Unityの最新サービスを紹介

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 開催初日のしょっぱなに行われたのが、協賛スポンサーであるユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの日本担当ディレクターである大前広樹氏による“インディーゲーム開発者がUnityとUnityのサービスをよりうまく使うには”。Unityのサービスが充実の一途をたどっていることはご存じの通りだが、大前氏のセッションはそんなUnityの最新サービスの詳細を紹介するというものだ。具体的には“Unity Cloud Build”、“Unity Ads”、“Unity Everyplay”、“Unity Analytics”、“Unity Game Performance Report”。Unityでは4月に大規模な自社カンファレンス、Unite 2015 Tokyoを開催しており、新サービスの詳細はその基調講演の記事などを参照していただきたいところだが、大前氏のプレゼンでとくに注力されていたのが、“Unity Ads”と“Unity Game Performance Report”。

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▲ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 日本担当ディレクター 大前広樹氏。

 “Unity Ads”は、スマートフォン向けの動画広告サービス。“Unity Ads”を導入した『CROSSY ROAD』は3ヵ月で3億5000万円の収益を挙げたとの具体例をもとに、同サービスの有用性が説明された。“Unity Ads”では、ボタンを押すと全画面が表示される仕様になっているのだが、それだと「ゲームデザインを壊さなくていい」と大前氏。ユーザーは不意打ちで出される広告は不快に感じるようで、「これから広告動画を流すよ」と、事前にわかる“Unity Ads”は、ユーザーにとっても安心できるもののようだ。ちなみに、“Unity Ads”では、ユーザーがちゃんとインストールしてくれる比率が高いそうで、長続きするユーザーが多いという。どうやらゲームに対する愛着心が強い傾向があるようで、「メーカーとユーザー双方にメリットがある仕組み」と大前氏。

 一方の“Unity Game Performance Report”は、アプリのどこでバグが発生したかなどをリポートしてくれるという機能。こちらも、アプリでどこが不具合が生じたのかなどがすぐにわかるので、開発者にとってはありがたい機能と言えるだろう。

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※Unity公式サイト

ネクソン

あくまでもクオリティーにこだわり パートナーとともに良作を提供

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▲ステージにはまずKumagai氏が登場。スライドで会社の概要を紹介した。

 ワークショップは、大きく3部構成で進行。第1部は、経営企画室長のShumpei kumagai氏により、ネクソングループそのものについての簡単な会社紹介がなされた。その概要は以下のとおりだ。
 同社の代表的なタイトルは、『メイプルストーリー』、『アラド戦記』、『マビノギ』、『サドンアタック』など。パブリッシング主体の会社というイメージが強いが、じつは上記4タイトルとも、グループ内の開発会社が作った内製タイトルだ。いずれも息の長いサービスが特徴で、『マビノギ』は今年で12年目になるという。またビジネス面では、PC主体と思われがちだが、近年はモバイルも伸びていて、最新データではPC8割・モバイル2割というバランス。地域別の売上では、日本・中国・韓国をメインに、世界中で収益を得ており、グローバルな展開を進めている。
 グループの戦略は、パブリッシングでも内製でも基本的にいっしょで、コンセプトは、“徹底的にゲームの品質にこだわること”だ。そのベースにあるのは、ユーザーに長く楽しんでもらえるゲームを提供したいという考えだという。
 「なお2015年以降は、これまでにないくらいの新作ラインナップが控えています。ぜひ注目してください!」(Kumagai氏)。

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▲代表作はいずれも、長くユーザーに愛されているタイトルだ。
▲最近ではモバイルの割合も伸びつつある。
▲会社の創業は1994年。歴史の節々でヒット作を生み出してきた。
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▲インディーへの支援例などを紹介した、Park氏。

 第2部では、ゲーム開発の資金調達やM&Aについて、ネクソングループとしてこれまでどういう関わり方をしてきたのかを、運用本部長KyungHwan Park氏が説明。“パートナーシップを組む企業を選定するポイント”、“インディーデベロッパーへの支援について”、“過去のM&A、投資、資金調達の事例”など、いくつかのテーマが語られた。
 インディーへの支援の例として、スライドで紹介されたのは、ネクソンの韓国法人が実施している取り組み“NPC”(Nexon & Partners center)だ。おもな支援内容は、オフィス入居の家賃をサポート、財務や資金調達などのアドバイス、ネクソングループのパブリッシングなど事業機会の提供。このNPC設立の背景には、ゲーム産業全体に関してなんらかの貢献をしたいという方針もあるという。
「ゲームの開発力やビジョンも明確にあるけれど、会社としては力が足りないベンチャーに力を貸したい。何がいちばん不足しているかを考えて、オフィススペースではないかと思いました。ネクソンもいまでこそ成長しましたが、立ち上げのころはオフィスを持つことにさえ苦労しましたから」(kyungHwan氏)。
 こうした取り組みは、いまは韓国だけで、残念ながら日本での実施はまだなされていない。しかしネクソンとしては、世界中のすぐれたインディーデベロッパーと協力して、ゲーム業界を盛り上げていきたいとのことだ。

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▲NPCでベンチャー企業に提供したオフィスの例。
▲過去にM&Aを行った企業なども紹介された。
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▲Kim氏は、モバイル事業の展開を詳しく説明。

 最後となる第3部では、モバイル部長のBongSuk kim氏が、日本で行っているモバイルゲームのパブリッシングの事例をいくつか紹介した。まず担当するモバイルゲームの案件については、海外ソフトのパブリッシングと、日本の有名IPを使った共同開発の、ふたつに大きく分かれるという。kim氏は前者の例として、『ソウルスラッシュサガ』を挙げたうえで、「ほかにも複数のタイトルを準備中です。ローカライズをしっかりして、成功すべく展開していきたいと思っています」と語った。
 後者の具体例として紹介されたのは、『けものフレンズ』と『クレヨンしんちゃん 夢みる! カスカベ大合戦』。『けものフレンズ』は吉崎観音氏がキャラクターデザインを担当した作品で、ケロロ小隊の面々が女性キャラとして登場する。『クレヨンしんちゃん 夢みる! カスカベ大合戦』では、毎年4月の劇場版公開に合わせてタイアップを意識したそうで、放映アニメの提供もしているとのことだ。
 こうしたパブリッシング、また共同開発でも、「大事なのはやっぱりクオリティー」だとKim氏は言う。最後は来場者へのメッセージとして、「ネクソンはまだまだPCのイメージが強いと思いますし、モバイルの大型ヒットも少ないのですが、ぜひお集まりの皆さまとパートナーを組んで、世界でヒットを狙えるような作品を作っていけたらと思っています」とコメント。ワークショップを締めくくった。

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▲『ソウルスラッシュサガ』では、『フェアリーテイル』とのタイアップも展開。
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▲『ケロロ軍曹』のメンバーが登場する『けものフレンズ』。
▲『夢みる! カスカベ大合戦』は、しんちゃんワールド全開の最新作だ。

※ネクソン公式サイト