キャラデザで多忙を極める野村氏、自身のディレクションタイトル『KH』シリーズの動きは!?

 自身がディレクターを務める『キングダム ハーツ』(以下、『KH』)シリーズの開発と並行し、新作『ランページ ランド ランカーズ』、アーケード版『ディシディア ファイナルファンタジー』(以下、『ディシディアFF』)のキャラクターデザインを手掛け、さらにオリジナルデザインの『バットマン』のPLAY ARTS(スクウェア・エニックスのフィギュアブランド)化なども進めるスクウェア・エニックスの野村哲也氏。同氏の注目の動向を訊いた!

※本インタビューは、週刊ファミ通2015年4月30日号に掲載したものに加筆・編集を行ったものです。

『ディシディアFF』の新たな展開を期待して

野村哲也氏に訊く『ディシディアFF』&『ランページ ランド ランカーズ』インタビュー_05

――野村さんは、PSP版『ディシディアFF』ではクリエイティブプロデューサーを務めていらっしゃいました。今回、『ディシディア FF』がアーケード参入となりましたが、それにあたってはどのような思いが?

野村 そもそもは、『キングダム ハーツ』シリーズの対戦アクションとして考えていた企画を形にしたのが『ディシディアFF』でした。PSP版2作で“全部やった感”があったので完結という形を取り、つぎにまた『ディシディアFF』をやるとするなら、まったく新しい展開で、と思っていたんです。今回、プロデューサーの間(一朗氏)からアーケード版の話があり、それなら新しい展開を迎えられるだろうとオーケーを出しました。

――アーケード版について、野村さんはおもにビジュアル面の監修をしつつ、さまざまなアドバイスをされているとうかがいました。

野村 そうですね。内容面は初期段階の打ち合わせで話をしたくらいで、あとは基本的にディレクターの鯨岡(武生氏)に任せています。『FF』という面でチェックが必要な、キャラクターなどのビジュアルについては見ているという感じです。上がってきたモデルに対し、絵作りに関するアドバイスをしつつ、一部レタッチもしています。ビジュアルは、現在お披露目しているものより、今後クオリティーアップしていってもらう予定です。

――とくに、どういったポイントを監修されているのでしょうか。

野村 制作を担当されているTeam NINJAさんの色がありますから、モデラーの方のやりたいことは尊重しつつ、いかに『FF』に寄せていくかという……とくに“目”の部分、でしょうか。最近は、外の会社さんとお仕事をさせていただくことも多いのですが、目は各社さんで作りかたがぜんぜん違います。

――そこに個性があるのですね。そうして作り込まれたキャラクターが激しいアクションをしても、60fpsでヌルヌル動くのには驚きました。

野村 Team NINJAさんのおかげですね。今回は3対3なわけですが、キャラクターが対人想定で同時に動き、派手なエフェクトがいくつも重なったり、召喚獣が派手に暴れたり、ステージの様子が変わる演出が入っても、アクションに支障がないようフレームレートの安定に重点を置いています。

――キャラクターについては、初のナンバリング外からの参戦となるラムザの登場が意外でした。野村さんがイラストを描かれていますが?

野村 開発からオーダーを受けて描かせていただきました。とはいえ、ラムザはとても根強い人気のあるキャラクターで、デザインをされた吉田(明彦)さんの絵の印象が強いですから、描き始めるまではとても悩みましたね。

――吉田さんの絵では鼻筋をしっかり描かれることがないですよね。一方、野村さんのラムザはそこを描いているという。でも、違和感がなくてびっくりしました。

野村 よかったです。やはりその点も悩んだのですが、ほかのキャラクターとの統一もあるので、鼻は描かせていただくことにしました。当然、筆致の細かな違いはあるものの、なるべく吉田さんのテイスト、イメージを崩さないようにというのは心掛けました。

――そのほかの追加キャラクターも、すでに描かれているのですか?

野村 いくつか候補のオーダーは来ています。ただ、ラムザに続いて派生作品のキャラクターのオーダーが多いので、つぎはナンバリングの中で、まだ『ディシディアFF』に登場していないキャラクターを選定したほうがいいのではないかと、再検討してもらっていたりもします。個人的には、古いナンバリングからミンウを推していますが、つぎは何が来るかを予想するのもこのタイトルの楽しみかたでしょうから、想像を膨らませていてください(笑)。

――もしミンウが登場するなら、アルテマがどう解釈されるのか気になります(笑)。新キャラクターとしては、コスモスとカオスに代わる神様もいるとか。そちらも、野村さんが?

野村 はい。まだ詳細は秘密ですが、コスモスとカオスのイメージとはまったく違う神になります。ちなみに、召喚獣は前作までとは異なり、実際に召喚して、一定時間ともに戦う存在になります。そのため、新たにデザインし直していて、こちらはフェラーリ(スクウェア・エニックス所属のアーティスト、ロベルト・フェラーリ氏)や竹谷(造形作家として著名な竹谷隆之氏)さんにお願いしています。

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野村哲也氏に訊く『ディシディアFF』&『ランページ ランド ランカーズ』インタビュー_06