3つのブランド戦略とは?

 女性向けブランド“プチレーヴ”、男性向けブランド“Pure Wish(ピュアウィッシュ)”、一般向けブランド“Halberd(ハルバード)”という3つのブランドを抱えるメーカー、Future Tech Lab(フューチャーテックラボ)。今回は、代表取締役を務める表 泰男氏を始め、中川聡也氏、KEIGO氏といった同社のキーマンに、3つのブランド戦略についてをうかがった。

■Future Tech Lab(フューチャーテックラボ)とは?

 2011年6月に設立されたメーカー。2013年8月にPSP、PS Vitaへ参入。2014年7月に女性向けブランド“プチレーヴ”よりPS Vita用ソフト『爽海バッカニアーズ!』を発売し、2015年3月には新ゲームブランド“Pure Wish(ピュアウィッシュ)”を立ち上げ、男性向けゲームソフト『Song of Memories(ソング オブ メモリーズ)(仮題)』(PS Vita)を発表した。

Future Tech Lab(フューチャーテックラボ)が展開する3つのブランド戦略とは?_03
表 泰男氏(左)
代表取締役 CEO
ITアーキテクト
エグゼクティブ・プロデューサー

中川聡也氏(中央)
取締役 CTO

KEIGO氏(右)
プロデューサー兼ディレクター

――まずはFuture Tech Labさんの取り組み全体のお話をお聞かせいただければと思います。

表 泰男氏(以下、表) 大まかに説明しますと、まずは2013年10月に女性向けゲームブランド“プチレーヴ”を立ち上げました。そのブランドからは、PS Vita用ソフト『爽海バッカニアーズ!』をリリースさせていただき、現在は第2弾プロジェクトとしてPS Vita用ソフト『Goes!』を制作しています。そして、男性向けコンテンツブランド“Pure Wish(ピュアウィッシュ)”と一般向けブランド“Halberd(ハルバード)”を立ち上げました。これらを立ち上げた理由はいくつかあるのですが、ひとつは我々“Future Tech Lab”は、もともと技術で未来を切り拓くという社是を掲げた提案型受託ビジネスを手がけていた会社……ひと言でいうと“お固い”イメージのある会社でした。ですから、ブランド名を前面に打ち出すことで、みなさまに親しまれる企業になるという狙いがありました。

――なるほど。エンターテインメントの世界には親しみやすさも大切ですからね。

 また、女性向け、男性向け、一般向けと、明確にカテゴリーを分けて事業展開をしていきたかったという理由もあります。たとえば、プチレーヴあればAGF(アニメイトガールズフェスティバル)のようなイベントに、Pure Wishであれば男性向けファンイベントに積極的に参加していく。ハルバードについては一般向けという括りなので、男女関係なく広くプレイしていただくゲームをこのブランドで提供していこうと考えています。

――ハルバードというブランドは、今回初めてお聞きする名前ですね。

中川聡也氏(以下、中川) じつはまだ公式には発表していないブランドです。今後、どのような形でみなさまにお披露目するかは検討中ですので、詳細はもう少しお待ちください。弊社の第三の柱として展開をする予定です。

――それぞれのブランド名にはどういった意味が込められているのでしょうか?

KEIGO氏(以下、KEIGO) ハルバードというブランド名は武器の名前に由来しています。斬る、引く、突く、叩くなど、さまざまな用途で使える武器であることになぞらえて、斬新、人を魅了する、強烈な特徴を持つ、そんなゲームを作ることを目指して名づけました。ひとつの目的に甘んじることなく、現状を打破したいという意味合いを持って、ブランドを立ち上げました。

 プチレーヴは、“女性に夢を与えたい”という想いからきています。そして、Pure Wishは、“純粋な願い”という意味を持つ言葉で、ユーザーさんときちんと向き合って本当に求められているゲームを作っていくという我々の想いを表しています。

――3つのブランドで内部制作を目指すのでしょうか?

中川 アドベンチャーゲームはシナリオとキャラクターデザインが重要なため、外部の方を起用することが多くなりますが、それ以外は社内での制作を目指しています。またプチレーヴは女性向けですので、女性スタッフが中心となって制作していますね。

――開発に対する本気度がうかがえますね。では、コンシューマーゲームの分野に参入することは、ずいぶん前から視野に入れていたのですか?

 ええ、そうですね。最近のゲームには、スーパーファミコンやメガドライブ当時のようなワクワク感が、あまりないと感じていたんです。その理由を考えてみると、最近は“チャレンジするモノづくり”を見かけなくなったからなんですね。確かにいまはさまざまなゲームがあり、ミリオンヒットも記録するものも存在していますが、いずれもかつてのゲームにあった「こんなゲームが出たのか!?」という驚きが欠けているように感じています。弊社が“尖った作品”を出すという目標を立てた理由は、そこにあります。これは3つのブランドすべてに言えることです。

――その心意気に賛同する人たちがFuture Tech Labに集まったということなんですね?

 はい。そういうことになります。

中川 わかりやすく言うと、弊社のトップがある種の“中二病”なんですよ(笑)。そして、集まったメンバーみんながどこかで“中二病”。私は技術的な部分が中二病で、ゲームだけではなくVRも手がけたいといった夢をたくさん抱えています。もちろん、会社はそれだけでは成立しませんので、プロデュースは表、技術方面は私といった具合に、得意な能力を踏まえて役割をきちんと決めています。あらゆる面で弊社ならではの尖ったモノづくりを目指していきたいですね。

――技術的な面のお話に移りますと、“Ai-gent”(エージェント)も技術的におもしろいなと思って拝見いたしました。

※Future Tech Labが手掛ける、ユーザーの嗜好を理解し、代理人・パートナーとして電子機器の操作を司り、またユーザーと電子機器とのコミュニケーションを行うことができるシステム/キャラクター。

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中川 基本的なアイデアや構造などは社長とふたりで詰めたのですが、当時は創業間もないころでしたので、小規模のものでした。

――アイデアとしてとてもおもしろいですし、実際に形になっているのがすごいと想いました。

中川 Ai-gentのキャラクターは、本当に端末間を移動するのです。基本的な仕組みは間にサーバーを中継して、ある端末からある端末へと移動するというもの。ですから、キャラクターは ネットワークに接続さえしていれば日本にとっての地球の裏側であるブラジルの端末にだって行くことができます。

――このような企画のプロデュースはすべて表社長が手がけられているのでしょうか?

 Pure Wishは私が、プチレーヴは女性スタッフが、ハルバードはKEIGOが手掛けています。

――初めて御社のお話をうかがったときに感じたのは「とても真剣にモノづくりをしている」ということ。妥協することなく制作をしているという印象を受けました。

 他社さんの後を追うのもアリなのかもしれませんが、やはりそれはどうか? という思いがあるんです。『Song of Memories』では、音楽を用いて戦うというアイデアを打ち出していますが、どういった戦いになるのか、アドベンチャーゲームの中に戦闘シーンがどう入るのかは、おそらくみなさんには想像もつかないことでしょう。

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――画面写真を見ても、ふつうのアドベンチャーゲームとは違うことが伝わります。昨今のアドベンチャーゲームのシーンに新風を起こしたいという思いがあるのでしょうか?

 昔のアドベンチャーゲームはすべてのテキストをじっくり読むものだったのですが、最近のプレイヤーはセリフ以外のテキストを読まない傾向にあります。ライトノベルを読む感覚に近いんですね。でも、ゲームなので我々は感動する話や楽しい話を読んでほしいと思っています。さらにやり込み性などのゲームとしての魅力もプラスして見せられるのが理想ですね。

――週刊ファミ通に第1報が掲載されてからの反響はいかがでしたか?

 インターネット上の掲示板やTwitterを見ると、「これまでのゲームと少し違う」という声をいただいています。

――これまでのアドベンチャーゲームとの差別化がユーザーさんにも伝わっているのですね。

 ありがとうございます。そうだと思います。

――『Song of Memories』はPS Vitaでリリースされます。今後もPS Vitaに注力する方針なのでしょうか?

 タイトルのテイストに応じて、柔軟に対応プラットフォームを決める予定です。たとえば、キッズを対象にしたゲームですとやはりニンテンドー3DS、大作RPGであればプレイステーション4がベストでしょう。

――技術的な面からみても、プレイステーション4は興味があるのではないでしょうか?

中川 それはもう。十分にありますね。最近はUnityやアンリアルエンジンといった強力なゲームエンジンが、極めて好条件で使えるようになったこともあり、ゲーム作りは技術的な面でも変化が表れています。こういったものを使いながら、バラエティー豊かなゲームが作れたらいいですね。

――では、将来的にはプレイステーション4で新作をリリースすることも視野に入れているということですか?

中川 ええ、個人的にはやりたいと思っています(笑)。

――いまの時代、新風を起こすゲームがないというお話がありましたが、その硬直化は業界全般に言えることなのでしょうか?

 コンシューマーと聞くと敷居が高いという印象を持たれる開発会社は多いと思うんですよ。「参入するには潤沢な資金がないとできないのでは?」という先入観があるからでしょう。同時に、スマホならば参入しやすいイメージがありますが、実際にソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアさんとお話をしてみると、決してそうではないことがわかります。

――では、コンシューマー1作目をリリースした手応えとしては、想像よりもスムーズだったと?

 そうですね。2013年10月に“プチレーヴ”が始動して、2014年7月にはもう発売していますから(笑)。ゲーム業界ではあまりないスピード発売ですよ。

――当時の社内の雰囲気はいかがでしたか?

KEIGO ブランドを立ち上げた当初はダウンロード販売しか考えていなかったんですよ。途中で戦略を変えてパッケージ販売も行なうことにしたのですが、店頭に並ぶ姿を見たときの感動はやはりひとしおでしたね。ユーザーさんへの訴求もやはり店頭にあるのとないのとでは大きく異なりますから。

――パッケージ販売を決意したのはなぜですか?

 女性向けのタイトルですから、「ダウンロード販売は苦手意識を持たれているのでは?」という心配があったからです。事実、リサーチを行ってもこの分野のダウンロード版は動きが鈍いんです。

中川 最近では街のゲームショップでも乙女ゲームのコーナーが設けられているほどですからね。弊社のタイトルも置いてくださり、ありがたいと思っています。

――“Pure Wish”も同様の戦略なのでしょうか?

 ええ。パッケージ版とダウンロード版で展開する予定です。''

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